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血統を背景にカデナが有力候補に躍り出た/弥生賞

  • 2017年03月06日(月) 18時00分


◆「今回の相手だから」の物足りなさも残る、上がりだけのレース

 ここまで京都2歳S制覇を含み【2-2-0-0】のカデナ(父ディープインパクト)が、落馬負傷から復帰したばかりの福永祐一とのコンビで、鮮やかなトライアル快勝を決めた。

 もともとサンデーサイレンス系種牡馬と、種牡馬フレンチデピュティの相性はいいが、「父ディープインパクト、母父フレンチデピュティの馬」による弥生賞制覇は、2013年カミノタサハラ、2016年マカヒキ、そして今年2017年のカデナ。自身は2005年の弥生賞の勝ち馬ディープインパクトが、現3歳までに送り出したのは、まだ7世代だが、フレンチデピュティの牝馬との組み合わせでもう「3頭」もの弥生賞馬を送ったことになった。これは偶然ではなく、この時期に急速に力をつける産駒が多いのがディープインパクト産駒。そのベースになるのが、同じく切れ味発揮に貢献するフレンチデピュティ牝馬。春のクラシックシーズンぴったりなのである。

 フレンチデピュティの牝馬とサンデーサイレンス系種牡馬の組み合わせで大成功しているのは、2015年のジャパンCを制したショウナンパンドラ、今春のフェブラリーSを勝ったゴールドドリーム、2013年のNHKマイルCの勝ち馬マイネルホウオウ、2015年のCBC賞のウリウリ、前出カミノタサハラの全兄でレパードSの勝ち馬ボレアス…など。フレンチデピュティはブルードメアサイアーとしてJRAのG1馬を4頭送っているが、うち3頭がディープインパクト産駒である。

 今年のカデナの弥生賞は、レース全体のペースが超スローに近く、前後半の1000m「63秒2-60秒0=2分03秒2。かつ、前半1000m通過63秒2のあともなかなかペースは上がらず「12秒7-12秒3…」。1200m通過はなんと1分15秒9。1400m通過は1分28秒2だった。

 3コーナー過ぎからの3ハロン「11秒9-11秒4-11秒7」=35秒0だけに集約された上がりだけのレースである。しかし、後半3ハロン最高は、カデナと、5着サトノマックスの「34秒6」にとどまり、8着に沈んだグローブシアター(父キングカメハメハ)まで0秒4差。

 芝コンディションも、流れ「59秒5-60秒4」=1分59秒9(レース上がり35秒1)も異なるとはいえ、はるかにきびしい流れの昨年、直線の強襲を決めた昨年の勝ち馬マカヒキ(同配合)の上がりは、今年より前半1000mで約4秒も速い流れを追走しながら、「33秒6」だった。傑出馬不在に加え、エース級のレイデオロ(ホープフルS)、ブレスジャーニー(東京スポーツ杯)などが順調にトライアルに出走の態勢が整わないなか、カデナが有力候補に躍り出たのはたしかだが、今回の相手だから、の物足りなさも残った。

 快勝に大きく展望の広がった福永祐一騎手を筆頭に、「この段階で快勝したのだから、ますます楽しみになった。皐月賞→日本ダービーでも…」と期待すると同時に、言外に、このあとさらに進化してくれるならば…のトーンが感じられた。

 2番人気のダイワキャグニー(父キングカメハメハ)は、スタートで出負け気味。先行抜け出しタイプであり、スローも見えていたからすぐに気合を入れて挽回に成功したが、レース前から気負いが見られたこの新星、かかってしまった。最初からコーナーでバランスを崩すような若さも露呈し、直線に向くとまったく抵抗できず9着に失速。期待の2戦2勝馬は、心配されていた死角がみんな出てしまった。「左右のバランスが違うような面があり、コーナーで加速しにくい-北村宏司騎手」とのコメントからも、コーナーの多い中山向きではないのだろう。鋭い馬体の持ち主だが、まだまだこれからの馬。急ぐことなく立て直して成長を待ちたい。

 3番人気のコマノインパルス(父バゴ)も、直線の坂で切れ負けして6着。着差は勝ったカデナから0秒4とはいえ、まったくの完敗だった。1000m通過63秒2の地点から外を回って進出しかけたが(少しかかり気味)、本番の皐月賞を考えればいかにスローでもあそこで先頭に立つ手はない。我慢して直線に向いたが、切れ味(爆発力)勝負はもっとも歓迎ではない平均ペース型とあって、外からきたカデナに並ぶまもなく突き放されてしまった。「力の差を感じた」と田辺裕信騎手はがっかりだった。出足が良くないので、本番でも途中から失速覚悟のロングスパートにでも出るしかないが、このあと新星が出現しないようだと、人気急落を味方に思い切った手に出ることはできる。

 スローがみえていたなか、当然のように主導権をにぎったのは横山典弘騎手のマイスタイル(父ハーツクライ)。だれがみても最初から超スロー。2着に粘ったこの馬の前後半バランスは前述の「63秒2-60秒0」に後半0秒1を加えて、2分03秒3。上がりは「35秒1-11秒8」止まりである。

 ダンビュライト(父ルーラーシップ)も、ベストアプローチ(父ニューアプローチ)も、サトノマックス(父ディープインパクト)も、厳しいようだがこのマイスタイルを交わせないようでは、さすがに現時点で皐月賞は無理筋。このあと急上昇もあれば、馬場悪化などの条件変化もありえる。とくに2戦目のサトノマックスあたりは、もう少し時間があれば…と思えるが、皐月賞は1ヶ月後の4月16日である。無理な日程は避け、目標を日本ダービーに切り替えることになるだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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