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スティープルチェイス3マイル路線の最高峰、ゴールドC展望

  • 2017年03月08日(水) 12時00分


◆大本命馬が突如姿を消して混戦に

 先週に引き続き、欧州障害シーズンの総決算となる「チェルトナムフェスティヴァル」の展望を行いたい。

 開催3日目(3月16日)のメイン競走として行われる、ハードル3マイル路線の最高峰、G1ステイヤーズハードル(芝23F213y、障害数12)。05年から昨年までワールドハードルの名称で開催されていたが、今年から従来の名称に戻ることになった。

 各社2〜2.25倍のオッズで1番人気に推すのがユーノウホワットアイミーンハリー(セン9、父サーハリールイス)だ。13/14年シーズンからハードルを跳び始めたが、最初の2シーズンは11戦未勝利に終わっている。ところが、ヘレン・ネレメス厩舎からハリー・フライ厩舎に転厩して迎えた15/16年シーズン初戦でようやくハードル初勝利を挙げると、一転して馬が変わったかのように連勝街道を歩み始め、そのシーズンは5戦し、G1ザスパノーヴィスハードル(芝23F213y)を含む5連勝。そして今季もここまで3戦し、G1ロングウォークハードル(芝24F97y)を含む3連勝をマークしている。

 しかも、この8連勝中、4戦はチェルトナムを舞台としたレースで、すなわち、コース適性も抜群とあって、本番が近づくにつれてオッズが下がり、1本被りの状態になってきている。

 ブックメーカー各社が5〜8倍のオッズで2番人気に推すのが、牝馬のヴルームヴルームマグ(牝8、父ヴォワドゥノール)である。

 仏国でナショナルハントフラットを3戦1勝、ハードルを走って3戦1勝の成績を残した後、愛国の名門W・マリンズ厩舎に転厩したヴルームヴルームマグ。転厩初年度の14/15年シーズンは、スティープルチェイスを5戦し、3重賞を含む5連勝。15/16年シーズン初戦となったクロンメルのG3メアズチェイス(芝20F)を制して、前年からの連勝を6に伸ばすと、一転してハードル路線に矛先を向け、チェルトナムのG1メアズハードル(芝19F200y)を制した段階で連勝記録は9に延伸。更にシーズン最終戦となったG1パンチェスタウンチャンピオンハードル(芝16F)では、牡馬を撃破して快勝し、連勝を10に伸ばして昨シーズンを終えた。

 今季初戦となった牡馬混合のG1ハットンズグレイスハードル(芝20F)で、3歳年下の牝馬アップルズジェイド(父サドラーズメイカー)の短頭差2着に敗れて連勝が止まったが、その後、G1愛クリスマスハードル(芝24F)では再び牡馬を撃破してのG1制覇を達成。前走ドンカスターのG2メアズハードル(芝16F128y)も勝っての参戦となっている。スティープルチェイス時代も含めて、障害を15戦して落馬が一度もないという、安定性が魅力の1頭だ。

 以下、3マイルでの勝利はないものの、2マイルから2.5マイルの距離で7つのG1を制しているニコルスキャニオン(セン7、父オーゾライズド)、14年のG1チャンピオンハードル(芝16F87y)を含むG1・8勝馬で、屈腱炎による1年9か月に及んだ休養から復帰後2戦1勝のジェツキ(セン9、父ミラン)、15年のこのレースの勝ち馬で、前走チェルトナムのG2クリーヴハードル(芝23F213y)2着のコールハーデン(セン8、父ウェスターナー)、1月26日にゴウランパークで行われたG2ガルモイハードル(芝24F)で3度目の重賞制覇を果たしての参戦となるシェーンズヒル(セン8、父キングズシアター)、G1チャンピオンハードルではなくこちらに回ってきた場合のヤンワース(セン7、父ノーズダンサー)の5頭が、6〜10倍のオッズで3番手グループを形成している。

 最後に、開催4日目(3月17日)のメイン競走として行われる、スティープルチェイス3マイル路線の最高峰、G1ゴールドC(芝26F70y、障害数22)。

 実はこの路線には、1月28日のG2コッツウォルドチェイス(芝25F56y)で1年9カ月ぶりの敗戦を喫したものの、昨季から今季にかけて、G1ワールドハードル、G1キングジョージ6世チェイス(芝24F)を含む9連勝をマークしていたシッスルクラック(セン9、父ケイフタラ)という確固たる軸馬がいたのだが、本番を24日後に控えた2月21日に屈腱炎を発症して戦線を離脱。各社が2.5〜2.75倍のオッズを掲げていた大本命馬が、突如として姿を消すことになった。

 G2コッツウォルドチェイスは、勝ったメニークラウズ(セン10)が入線直後に大量の肺出血を発症して急死。僅差の2着だったシッスルクラックが屈腱炎発症と、上位2頭がいずれも無事には済まなかったあたり、両馬が演じた壮絶な一騎打ちがいかに激しいものであったかを物語っている。

 各社3.5〜4.33倍のオッズで1番人気を争っているのが、キューカード(セン11、父キングズシアター)とネイティヴリヴァー(セン7、父インディアンリヴァー)の2頭である

 11〜12年シーズンからスティープルチェイスを跳び始め、6シーズン目を迎えているベテランがキューカードである。この間、ヘイドックのG1ベットフェアチェイス(芝24F24y)を13年、15年、16年と3度制覇。15年にはサンダウンのG1キングジョージ6世チェイス(芝24F)を制覇するなど、スティープルチェイス3マイル路線の主軸として駆けつづけている。今季も好調で、前走のG1アスコットチェイス(芝23F8y)を15馬身差で制して通算9つ目のG1制覇を達成と、年齢的衰えを全く感じさせないパフォーマンスを見せている。

 一方、スティープルチェイスを跳び始めたのは昨季からという、新興勢力がネイティヴリヴァーだ。昨季は7戦して3勝。シーズン最終戦となったエイントリーのG1ミッドメイノーヴィスチェイス(芝24F210y)でG1初制覇を果たしている。今季の同馬は、初戦のG2ウェストヨークシャーハードル(芝24F26y)こそ2着に敗れたものの、その後は、ニューバリーのG3ヘネシーGC(芝25F214y)、チェプストウのG3ウェルシュグランドナショナル(芝29F110y)、そして、2月11日にニューバリーで行われたG2デンマンチェイス(芝23F86y)をいずれも白星で通過。いよいよ本格化かと見られている。

 この2頭に続くのが、各社が5〜5.5倍のオッズを掲げているジャカダム(セン8、父サンデサン)だ。15年・16年と、このレース2年連続で2着となっている馬で、今季はここまで2戦1勝。初戦となったパンチェスタウンのG1ジョンダーカンメモリアルパンチェスタウンチェイス(芝20F)を制して、前年に続くこのレース連覇を達成した後、前走レパーズタウンのG1レクサスチェイス(芝24F)は3着だった。

 そのG1レクセスチェイスで2度目のG1制覇を果たしたアウトランダー(セン9、父ストウアウェイ)、2月12日にレパーズタウンで行われたG1愛ゴールドC(芝24F60y)で同じく2度目のG1制覇を果たしたサイジングジョン(セン7、父ミッドナイトレジェンド)の2頭が、9〜11倍のオッズで4番手評価を争っている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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