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世界一豪華な競馬開催、ドバイワールドCナイトの3競走展望

  • 2017年03月22日(水) 12時00分


◆死角らしい死角が見つからないアロゲイト

 総賞金3000万ドル、日本円にして約34億5千万という世界一豪華な競馬開催「ドバイワールドCナイト」の施行が、今週土曜日に迫っている。昨年秋から解禁になった海外レースを対象とした馬券発売が、プログラムの後半3競走で実施されるので、その展望をお届けしたいと思う。

 まずは現地時刻19時30分、日本時刻24時30分に発走する、芝1800mのG1ドバイターフから。

 この後のシーマクラシックも同様なのだが、強敵となる欧州勢に「休み明け」という不確定要素があることが、馬券を難しくしている。というのも、このレースの過去10年の勝ち馬で前走との間隔が一番長かったのは、暮れの香港マイル以来だった12年のシティスケイプで、前年の秋以来という勝ち馬は1頭もいないのである。

 そうなると食指が動くのは、早めにドバイ入りして2月16日にメイダンで行われたG3ドバイミレニアムS(芝2000m)に出走し、きっちりと勝ちあがったザラク(牡4、父ドゥバウィ)になろうか。「あの」ザルカヴァの4番仔にして初の勝ち馬となった上に、G1仏ダービーでこれも「あの」アルマンゾルの2着になっている実力馬である。シーマクラシック、あるいはドバイワールドCも、次走の候補として俎上にあったようだが、主戦のC・スミヨンが「距離的にここが良い」と進言してドバイターフに向かうことになったと聞いている。鞍上の腕も込みで、軸馬はこれかと思う。

 欧州関係者に話を聞くと、リブチェスター(牡4、父イフラージ)の今季に期待する声が非常に多い。今季は10F路線への転出も視野に入れているようで、そういう意味でもここは試金石となる一戦だ。

 昨年のG1アーリントンミリオン(芝10F)を含めてG1・2勝のモンディアリスト(牡7、父ガリレオ)、G1ベルモントダービー(芝10F)勝ち馬ドーヴィル(牡4、父ガリレオ)、G1インターナショナルS(芝10F88y)がポストポンドの3着、G1ウッドバインマイル(芝8F)がテッピンの3着と、チャンピオン級を相手に好走しているムタカイエフ(セン6、父シーザスターズ)と、敵の陣容は明らかに昨年よりも分厚い。

 ということは、連覇を目指すリアルスティール(牡5、父ディープインパクト)は、昨年以上のパフォーマンスを見せないと、勝利は覚束ないことになる。その一方で、昨年のこのレースが同馬にとってマックスの競馬であったかというと、そうではなく、まだ見せていないギアがあると筆者は見ている。前走は不甲斐ない競馬だったが、これもアラビアンナイトという非日常で、奥底に眠る真の能力が発露することを期待したい。
(編集部注:リアルスティールは、出走取消が発表されました)

 続いて、現地時刻20時5分、日本時刻25時5分に発走する、芝2410mのG1ドバイシーマクラシック。

 7頭という手頃な頭数になったゆえ、各馬の能力が存分に発揮される競馬となりそうだが、ここもドバイターフ同様、能力上位馬の中に、ここがシーズンの始動戦となる馬がいて、これから秋まで長いシーズンが待ち受けている中、どこまできっちりと仕上がって出てくるかが、大きなポイントとなる。

 中でも、昨季もG1キングジョージ、G1BCターフと、英米の基幹G1で勝利しているハイランドリール(牡5、父ガリレオ)は、例年春先は調子が上がらないタイプだ。3歳時は、初戦となったG1仏二千ギニーで1番人気を裏切り6着に敗退。昨年も始動戦のここが4着で、続くG1香港クイーンエリザベス2世Cが8着と、春が夏に変わる季節にならないと調子が上がって来ない馬なのである。

 それだけに、馬券の軸としては、昨年同様に前哨戦のG2ドバイシティオヴゴールドを叩いたポストポンド(牡6、父ドゥバウィ)を信頼したくなるわけだ。前走の負けは、直線で進路が狭くなったことが敗因で、むしろ、あれだけ分厚く敷かれたゴドルフィン包囲網をよくぞかいくぐって2着に来たものだと感心する内容だった。

 能力的に見て、ポストポンドを撃破する可能性があるのが、管理するJ・ゴスデン師が今季非常に大きな期待を寄せているジャックホブス(牡5、父ホーリング)である。伯楽が、G1愛ダービーを獲った3歳時から、「古馬になったらもっと良くなる」と繰り返していただけに、配当次第ではこの馬の単勝も勝っておきたい気がする。牝馬の好走例も少なくないレースだけに、セヴンスヘヴン(牝4、父ガリレオ)もノーマークにはしたくない。

 かつて、日本では「シルヴァーコレクター」と揶揄されたステイゴールドが、世界チャンピオンのファンタスティックライトを撃破したのが、01年のこのレースだった。G1・2着が3度もあるのに重賞未勝利のサウンズオブアース(牡6、父ネオユニヴァース)が、独特の雰囲気に包まれるアラビアンナイトで覚醒する場面を期待したい。

 最後に、現地時刻20時45分、日本時刻25時45分の発走となる、ダート2000mのG1ドバイワールドC。

 ここは衆目の一致する通り、アロゲイト(牡4、父アンブライドルズソング)の力が1枚も2枚も抜けている。レイティングを比較してもそれは明らかで、アロゲイトが134を持つのに対し、2番手に並ぶ2頭が118と、16ポンドもの開きがあり、単純計算すれば、アロゲイトが2番手以下を9馬身以上引き離して勝つことになるのである。西海岸から東海岸への遠征にも全く動じず、初コースも難なく克服してきた馬で、重箱の隅を突いても死角らしい死角が見つからないのが実情だ。どうせなら記録的なぶっちぎりを演じ、シガー(135)を超えるレイティングを叩き出すところを見てみたいものである。

 ドバイワールドCには、「リピーターが強い」という傾向があるだけに、昨年の2・3・4着馬であるムブタヒジ(牡5、父ドゥバウィ)、ホッパーチュニティ(牡6、父エニーギヴンサタデー)、スペシャルファイター(牡6、父テオフィロ)らが、今年も2番手グループを形成することになりそうだ。

 先ほど触れたレイティングは非常に興味深く、レイティング118で2番手に並ぶ2頭のうち1頭はアウォーディー(牡7、父ジャングルポケット)で、レイティング117で4番手に並ぶ3頭のうち1頭がアポロケンタッキー(牡5、父ラングフュール)。そして、レイティング116で7番手に位置しているのがゴールドドリーム(牡4、父ゴールドアリュール)なのである。ブックメーカーのオッズを見ると、日本調教馬は軒並み34倍以上のオッズで下位人気に甘んじているが、レイティング的には、上位に顔を出しているのである。世界の名だたる公式ハンディキャッパーたちの目に、それほど大きな狂いのあるはずもなく、日本調教馬が馬券の一角に食い込む場面もあるように思う。

 そして、忘れてはならないのが、世界をあっと言わせるポテンシャルを秘めるラニ(牡4、父タピット)である。何かのきっかけでスイッチが入って、「マジ本気モード」に突入することを期待したい。

 なおレースの模様は、グリーンチャンネルで生中継(23時30分から26時30分)されるので、ぜひ生で御覧いただきたいと思う。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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