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第49回ばんえい記念

  • 2017年03月22日(水) 18時00分


さながら同窓会のような雰囲気さえ漂う

 帯広競馬場で、毎年3月下旬に行なわれるのが「ばんえい記念」である。重量1トンを曳く年度末の大一番として知られ、今年で49回目を迎える伝統の一戦だ。今年は3月20日(月)に実施され、季節外れの暖かさにも恵まれて、帯広競馬場には早くから多くのファンが訪れた。

 毎年、この日だけは欠かさず現地で観戦するという人も多い。全国各地から熱心なばんえいファンが一同に会し、ここかしこで旧交を温める光景が見られる。さながら同窓会のような雰囲気さえ漂う。場内も相当混雑しており、1階も2階もぎっしりと人々が充満している。よく晴れていたことも手伝って、エキサイトゾーンにもファンがぎっしりと並び、レース毎にゴール方向に向かってファンが集団で馬について歩くのも、ばんえい記念の日ならではの光景だ。

帯広競馬場スタンド内1階の混雑

帯広競馬場スタンド内1階の混雑

 第1レースの時から、場内に歓声が響いていた。このところ帯広地方はずっと晴れの日が続いており、馬場はいつになく乾き切っている。パサパサの砂が、西風に吹きあげられて、レースの度に砂塵が左から右に流れて行く。

 しかし、レースの合間でも何とか外で過ごせる程度の気温で、本当に助かった。ばんえい記念は、第9レース、午後5時15分の発走である。全11レースが組まれており、ばんえい記念が終わった後にもさらに2レースある。スタンド2階にある中央競馬の発売所(J-PLACE)を目的に来場したファンにも、ばんえい競馬の後半3レースの馬券を買って頂くために、薄暮開催としてメインレースの発走時間を後ろにずらしている。

 西に傾いた日が徐々に赤味を帯びてきた午後4時半過ぎ。ばんえい記念に出走する9頭がパドックに姿を現した。昨年の覇者フジダイビクトリーが1枠1番。実力馬ニュータカラコマが3枠3番。このレースで引退を決めている一昨年の優勝馬キタノタイショウが6枠6番。昨年から今年にかけて大レースを制覇してきたオレノココロが8枠8番。人気はオレノココロ、フジダイビクトリー、ニュータカラコマという順である。

 馬場水分は0.6%。例年よりもずっと少ない数字で、かなり乾燥が進んでいることが分かる。やがて出走各馬に騎手が騎乗し、発走地点まで進んで行く。スタンドにだんだんと観客が集まってくる。陸上自衛隊第5音楽隊が隊列を組んで行進してきて、スタンド中央部の正面に並ぶ。ばんえい記念のファンファーレは毎年、新旧2種類の曲が生演奏される。スタンドを揺るがすような音量でファンファーレが鳴り響き、定刻通りに、第49回ばんえい記念がスタートした。

ばんえい記念レース直前のスタンド風景

ばんえい記念レース直前のスタンド風景

 ゴール前でカメラを構えながら、じっと待つ。遠くに各馬が第1障害を越えるのが見える。やがて、第2障害の前まで近づいてきて、そこで一息入れる。馬場水分が少ないので、いつもの年よりも時間がかかっている。十分に呼吸を整え、まずニュータカラコマ(藤野俊一騎手)が先に第2障害を越え、フジダイビクトリー、コウシュハウンカイ、カイシンゲキと内枠4頭が第2障害から坂を次々に下ってくる。1番人気オレノココロは、第2障害の上りで2度ヒザをつき、5番手で坂を越えた。

ばんえい記念1〜4枠各馬が先に坂を下る

ばんえい記念1〜4枠各馬が先に坂を下る

 しかし、先行する4頭の脚色を冷静に見ながら、オレノココロの鈴木恵介騎手は「これなら交わせるだろう」と判断したらしい。一気に第2障害を下りてきたオレノココロは、1トンの荷物をものともせず、グングン前に進み、難なく4頭をまとめて交わして、そのまま先頭でゴールに到達した。何度も立ち止まり、息を整えては少しずつ前に進む4頭の脇を、一昨年の覇者キタノタイショウ(大河原和雄騎手)が追い抜き、オレノココロから24秒遅れて2着でゴールイン。古豪の貫禄を見せた。

ばんえい記念覇者オレノココロ

ばんえい記念覇者オレノココロ

ばんえい記念2着キタノタイショウ

ばんえい記念2着キタノタイショウ

 以下、3着がニュータカラコマ、4着に昨年の優勝馬フジダイビクトリーという着順であった。オレノココロの勝ちタイムは4分7秒6。圧勝であった。

 オレノココロは父ウンカイ、母富士姫。牡7歳。馬体重は1170キロと出走メンバー中最重量である。鈴木恵介騎手が騎乗。槻舘重人調教師の管理馬で、馬主は大森勝廣氏。生産者は十勝管内河東郡士幌町の六車實子氏。これで成績が105戦32勝となった。

 馬主の大森勝廣氏と調教師の槻舘重人氏はばんえい記念初勝利、また鈴木恵介騎手は、2012年ニシキダイジンに続き2度目の優勝であった。

ばんえい記念口取り

ばんえい記念口取り

 なお、この日の帯広競馬場には昨年より324人多い4767人が入場し、ばんえい記念単独の売り上げは5808万1400円で、昨年より1516万円余の増加となり、帯広市単独開催になってからのレコードを記録した。

ばんえい記念後の記者会見

ばんえい記念後の記者会見

 他の地方競馬と同様に、ばんえい競馬も、昨春以来売り上げ好調に推移しており、概ね前年比10%の伸びを記録している。今週末の25日〜27日で平成28年度の開催は全日程を終え、29年度は来る4月21日(金)よりスタートする。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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