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左回りのマイル戦で女王復権、ホワイトフーガ/マリーンC・船橋

  • 2017年04月13日(木) 18時00分

撮影:高橋 正和




2着以下との斤量3kg差を考えれば、圧倒的に能力が違う


 ダート牝馬路線の新鋭ワンミリオンスの連勝に待ったをかけたのは、JBCレディスクラシック連覇の女王ホワイトフーガだった。とはいえ2頭が競り合うという場面はなく、明暗の別れる結果となった。

 牡馬の一線級が相手だった前走フェブラリーSはともかく、TCK女王盃で3頭の追い比べとなって3着に敗れていたホワイトフーガにとって、今回、好転した条件がいくつかあった。まずは人気を分け合ったワンミリオンスとは、3kg差あった斤量差が1kgになったこと。前日の雨で湿った馬場になったのは、ノド鳴りの症状があるホワイトフーガには好都合。そして、これについてはあとで詳しく触れるが、左回りの1600m戦という舞台。

 ホワイトフーガはスタートで躓いたような感じで前のめりになったが、重い斤量を背負った馬にはたまにあること。逃げたのはララベルで、2番手にリンダリンダ、そしてホワイトフーガは3番手の外目につけた。

 ララベルが逃げたペースは、スタートから6F目まできれいに12秒台のラップが並ぶ平均ペース。2コーナーを回るあたりでホワイトフーガの蛯名騎手は抑えるのに苦労していた様子だった。道中で行きたがるところがあるホワイトフーガにとっては、ララベルが引っ張ったペースが、我慢できるギリギリのところだったのだろう。これが道中で息の入る1800メートル戦なら消耗していたかもしれない。

 4コーナーでは前3頭が横一線となり、残り200メートルを切ってホワイトフーガが突き抜けた。2着のララベル、3着のリンダリンダとの3kg差を考えれば、圧倒的な能力の違いだった。

 ホワイトフーガは、これで地方の左回りでは5戦4勝。5着完敗だった昨年のさきたま杯は、スタートで大きく躓いての出遅れと、敗因ははっきりしている。3歳時は能力差で2100mの関東オークスを大差圧勝し、さらにJBCレディスクラシック、4歳になってのTCK女王盃と大井の1800m戦を連勝した。しかし昨年4歳夏以降の勝ち星は1600mに限られている。

 昨年、今年と、エンプレス杯は使わず、相手がはるかに強いフェブラリーSを使ったのは、距離的な不安からだろう。レース後、蛯名騎手が、「1800mでは折り合い面で不安があり、1600mのほうがいい。1600mよりも1400mのほうがいいかもしれない」と話していたことからもそれがわかる。どうやら次走は昨年同様、牡馬相手のさきたま杯となるようだ。牝馬同士のJpnIIIだと斤量を背負わされるが、JpnIIのさきたま杯なら56kgで出走できるということもあるだろう。

 そしてホワイトフーガの今年最大の目標はJBCレディスクラシック3連覇とのことだが、今年の舞台は、そういうわけで必ずしも得意とは言えない大井の1800m。前哨戦のレディスプレリュードもそうだが、仮にレディスプレリュードをあっさり勝つようなことがあっても、ペースや展開次第という面はあるので、本番では疑ってかかったほうがいいかもしれない、ということは覚えておきたい。

 中央の実績馬を相手に、荒山勝徳厩舎の2頭が2、3着に入った。

 パドックで、ララベルの「+25kg」の表示を見たときにはちょっと驚いた。567kgは、牝馬としてはかなりデカい。しかも、4カ月前の前走クイーン賞での542kgがデビュー以来の最高体重で、そこからさらに25kgも増えたのだ。疑ってかかって当然だろう。とはいえ、レース後の贔屓目ではなく、パドックでの印象として、25kgも増えたようには見えなかったのも事実。明けて5歳でもまだまだ充実してきているということなのだろうか。休養から戻ってきたときには570kg台もあったというから、それを考えれば、前走比で25kg増でも絞って出てきたということなのだろう。

 前走、同じ船橋のクイーン賞10着惨敗ということでも人気を落としただろうが、思えばダートグレード初挑戦だったレディスプレリュードでの4着は、勝ったタマノブリュネットから0秒4差。そもそもダートグレードで上位争いできるだけの実力はあった。

 そして、TCK女王盃、エンプレス杯と連続2着だったリンダリンダが今回は3着。結果的に先行3頭での決着となったのは、通常ならスピードに乗って11秒台になることもめずらしくない2F目のラップが12秒2というもので、先行争いにはならず、見た目以上に先行勢のペースは楽だった。さらに、前日は水が浮くほどの不良馬場で逃げ残りが多く、この日は重に回復していたとはいえ、前残りの傾向は続いていた。

 ダートグレード3連勝が期待され、1番人気に支持されたワンミリオンスは見せ場なく6着。スタート後からおっつけ通しでなんとか先行勢についていった感じで、道中も鞍上の手が動きっぱなし。4コーナー手前ではすでにムチが入って、先行勢との差を詰めることができなかった。初めて背負う57kgということもあっただろうが、それ以上に能力を発揮できないなんらかの要因があったと思われる。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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