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天・地・人の三位一体の戦いが出来たアドマイヤリード

  • 2017年05月18日(木) 12時00分


◆人馬一体の戦う姿を見る思いだった

 手だてを講じ、力を蓄えながら待つ。ヴィクトリアマイルを勝ったアドマイヤリードにそんな思いを持った。小柄な牝馬で気性が乱れたりする難しさをかかえ、桜花賞、オークスでは力を出すところまではいっていなかったのだが、ひと夏越してからは一変していた。オークスで404キロだった馬体重が、秋からは420キロ台に増え、一千万条件から再スタートしてからは、持ち前の切れ味を発揮できるようになっていた。体がしっかりしてきて精神面の充実もみられ、前走の阪神牝馬ステークスでは、大外枠からのレースながら、0.3秒差の2着まで脚を伸ばしていた。

 好リードでGI馬に導いたルメール騎手の存在も大きかった。「どうリラックスさせて前半を走らせるかがテーマだった」と須貝調教師は言っていたが、ややスローに流れる中でもしっかり折り合いをつけ、「瞬発力はすごいが、使える脚が短いから」と、直線の際どい攻防の最中でも、一瞬の脚の使いどころをじっと待っていた。これだけの自信があったということで、人馬一体の戦う姿を見る思いだった。それに小柄なアドマイヤリードは道悪でも大丈夫。前走時にその確信を得ていたから、「今日はいっぱい自信があった」の言葉が発せられていた。

 孟子に「天の時は地の利に如(し)かず、地の利は人の和に如かず」とあるが、正に、天・地・人の三位一体の戦いが出来たということだった。物事には、よい時もあれば悪いときもある。無理をせず、じっと辛抱しながら上向くのを待つのだが、ただ待つのではなく、手だてを講じ力を蓄えながら待つところに価値がある。天の時はこうして訪ずれるが、さらにその時、地の利が味方をしてくれるかが大きい。幸運な時には、それもちゃんと用意されてくる。そして究極は、それらを受け止める人の和があるかどうかになる。物事がうまくいくときには、その全てが機能するのだが、それを予見するのが困難だ。どれかに注目するのにも、天の時があるのだろう。そこにたどり着くには、どんな手だてを講じ、どう力を蓄えていけばいいのか。アドマイヤリードを参考に、今回ばかりはつくづく考えさせられてしまった。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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