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ダート短距離路線の主役に、ニシケンモノノフ/北海道SC・門別

  • 2017年06月09日(金) 18時00分

撮影:田中哲実




それにしても1分9秒4というコースレコードには驚いた


 予想で「近走戦っている相手関係から、ニシケンモノノフの能力が上位と見る」と書いたが、それは想像以上のものだった。

 ニシケンモノノフは2歳時を別とすれば、重賞を中心に使われるようになった(賞金的に「使えるようになった」と言うべきかもしれない)のは昨年後半から。その中でも、14番人気という低評価ながら5着に好走したフェブラリーSで一線級の相手に揉まれたことで、6歳にしての進化があったと思われる。そのフェブラリーSは、前半3Fが34秒0というペースを2番手で追走し、直線を向いて先頭。残り200mを切るまであわやと思わせた。しかもそれが、経験も少なく、必ずしも得意とはいえないマイルの舞台。続く黒船賞での5着は、フェブラリーSの反動があったようだ。そこから3カ月の間隔を置いて、今回は函館での調整。専門紙の調教師コメントでは「まだあの頃(フェブラリーS)に比べると一歩手前かなと」と掲載されていたが、それでもこの強さだ。

 昨年前半あたりまでは先行勢のうしろ、4、5番手からレースを進めることが多かったのが、少し気合を入れるだけで先行できるようになったのも充実の証。今回もスタートこそ互角だったが、すぐに先頭に立った。前半3Fが33秒8という、門別競馬場ではあまり見ることのないハイペースでの逃げ。そしてまったく勢いが鈍ることなく上り3Fが35秒6。結果、2着のショコラブランに4馬身という、短距離戦としては決定的な着差。

 ところどころ水の浮く馬場で、この日は2歳アタックチャレンジの1000m戦で1分を切るタイムが出るなど、たしかに馬場自体が速かったが、それにしても1分9秒4というコースレコードには驚いた。

 ニシケンモノノフにとっては、さまざまに条件が揃っていたということもあった。ダート1200mは、今回も含めて8戦して5勝2着2回。良・稍重が25戦6勝2着5回で連対率44.0%に対して、重・不良は10戦5勝2着2回で連対率70.0%という成績だ。

 ダノンレジェンド引退後のダートスプリント路線は主役不在となっていたが、今後はニシケンモノノフを巡る争いとなっていきそうだ。しかも今年のJBCの舞台は大井競馬場で、スプリントが1200メートルで争われるとなればなおさらだ。

 前回、小回りコースに戸惑って能力を発揮できなかったショコラブランだが、今回は外枠からの発走もあってスムーズに運べた。最後も35秒9で上がって1分10秒2。JpnIIIのレベルなら勝ってもおかしくない内容。今回は勝った馬が強すぎた。

 スノードラゴンがこのレースに出走するときは、不思議と水の浮く不良馬場。ちなみにスノードラゴン不在の2015年は晴れの良馬場だった。GI勝ちの別定59kgを背負っているゆえ、スタートダッシュでついていけないのは仕方ないが、それにしても上り3Fがメンバー中最速の35秒3。9歳にして、ということでは恐れ入るばかり。コーナーを4つ回る地方の小回りコースは昨年のかきつばた記念で一度だけ経験しているが、勝ったノボバカラに1秒6も離される5着。ダートでもコーナーが2つだけの1200mならまだまだ活躍が見込めそうだ。ただGI勝ちゆえ、JpnIIIでは斤量が悩ましい。前述のとおり、今年はJBCスプリントが大井1200mという舞台。スプリンターズSからJBCスプリントという選択はアリではないだろうか。

 さすがに中央4頭が上位独占となって、5着は10番人気のトウカイビジョンで、6着に中央オープンから転入したメイショウノーベル。地元の実績馬、アウヤンテプイ、コールサインゼロは、それほど無理することなくニシケンモノノフの直後を追走したが、これは明らかにオーバーペースで、さすがに直線では脚をなくした。とはいえ、単なる着狙いではなく、勝負にいっている姿勢はおおいに褒められる。トウカイビジョンは後方2番手から、メイショウノーベルは好位のうしろを追走。脚を溜めていた馬が、地元馬では台頭した。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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