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いよいよ登場 POGで大人気「エリート候補生」ヘンリーバローズ/吉田竜作マル秘週報

  • 2017年07月12日(水) 18時00分


◆簡単に言えば『生まれも育ちも文句なしの一頭』

 記者は団塊ジュニア世代ド真ん中の生まれ。この世代は人口ピラミッドで2番目に高い山を構成しており、受験も、就職も競争率が激しく、自らの希望通りの進路を進めた人は本当に少なかった。その上、受けてきた学校教育といえば「平等、公平」という理想を説かれつつも、体罰はもちろん、理不尽?なことも何でもあり。中途半端に“いい子”を演じなければならなかった分、腹の中には汚れた思いがたまっていった気がする(あくまで個人の感想です)。

 そんな鬱屈した学生生活のさなかに登場したのがタマモクロスであり、オグリキャップであり、メジロマックイーンだった。これら「芦毛のスターホース」は、その生い立ちが必ずしもエリートではなかったがゆえに、彼らに夢を投影し、よどんだ気持ちを浄化できたのかもしれない(しつこいようですが、あくまで個人の感想です)。

 そんな学生生活を送ってきた記者にとって、松田博元調教師の以下の言葉は衝撃的だった。

「競馬の世界に平等なんてあるかい。スタートラインは同じに見えても、牧場、血統、価格…生まれた時から差はあるんだからな」

 残酷なようだが、競馬も、現実世界も、今やこの感覚が当たり前。そういった傾向が強まるにつれ、かつてのようなスターホースが出にくくなったように感じるし、閉塞感漂う今の日本の社会情勢に近いものがあるような…。

「ウチにもいい馬は入ってくるんですが、“ウチのいい”ってのは、たいてい1000万円くらいなんですよね。最初は確かにいい感じなんだけど、結局は値段なりというか、それくらいで止まってしまう」とは某キュウ舎の調教助手の弁。つい最近、こんなエピソードがあったそうだ。

「この前、ゲート練習に行った時、角居キュウ舎の馬と一緒に(ゲートを)出ることになって。ウチのもいい感じに出て、スピードに乗って行けたと思うんですよね。で、向正面の出口が近づいてきたので“もういいかな”と思ってたら、向こうの人が“ここからもう少し行ってもいいですかね?”って。そこからグーンと加速していって、あっという間に(姿が)小さくなりました。あれはショックでしたね。“あそこからまだ伸びるんかい!!”って。やっぱり角居キュウ舎の馬って、こういうのばっかりなのかな」

 その馬こそが、日曜(16日)の中京芝2000メートル新馬戦に出走予定のヘンリーバローズ(牡=父ディープインパクト、母シルヴァースカヤ)。後日、投票所で前川助手に、この某キュウ舎の助手の驚きを伝えると、「1週前の追い切りでも、そんな感じで走ってましたよ」と涼しい顔だった。POGでも人気を集めたように、簡単に言えば「生まれも育ちも文句なしの一頭」。このエリート候補生がどのように成長し、クラシックロードを歩んでいくのか。楽しみにしている人も多いことだろう。

 ただ、誤解されないよう伝えておきたいのは、角居キュウ舎も恵まれたポジションでスタートしたわけではないことだ。開業当初の馬質は決して高くはなかったが、そんな中でも、一つひとつ実績を積み上げることで、壁を乗り越え、信頼を勝ち取り、現在の地位を築き上げたのだ。

 そう、指をくわえて「時代が悪い」と嘆いても何も変わらない。それは競馬も現実の世界も同じことだ。苦労して今の地位にのし上がった角居キュウ舎。これを負かすというモチベーションが新しい時代をつくる原動力にもなる。そうした「新しい力」が生まれることを期待せずにはいられない。

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関東・舘林勲、大阪・松浪大樹の本紙予想のほか、記者による好評コラム(「一撃・山河浩、馬匠・渡辺薫など)、そして競馬評論家・井崎脩五郎、爆笑問題の田中裕二、IK血統研など超豪華執筆陣の記事も読みごたえたっぷり。馬券作戦に役立つ情報が満載です。

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