◆スターリーステージをめぐって、どんな駆け引きが行われるか
先日、秋の競馬番組がJRAから発表された。この発表を待ちわびていたのがスターリーステージ(牝=父ディープインパクト、母スターアイル)を擁する音無調教師ではなかったか。
例年、4回阪神開幕週に行われているマイル戦に照準を定め、デビュープランを立ててはいたが、実際にそのレースが組み込まれていなくては何も始まらない。無事に開幕初日の9月9日に芝外1600メートルの新馬戦が正式に組まれたことで目標がハッキリとした。
「毎週、牧場には見に行っているし、どんどん良くなっている。今が成長真っ盛りといった感じだね。距離も持ちそうだけど、牝馬だと桜花賞まではマイルをこなせればいいわけだから。しばらくはマイラーとして育てたい。2度使って暮れのGI(阪神JF)に行くのが理想だね」と音無調教師。今後は9日にノーザンファームしがらきから栗東入りして、目標のレースに向けて調整ピッチを上げていく。
なんでもH社のY記者には「早くに(阪神)開幕のマイル戦に使うと書いておいてくれ。強いのが避けてくれるかもしれん」と口にしたそうだが、このあたりの駆け引きもなかなか面白い。同じノーザンファームの生産馬の場合は“使い分け”するケースも少なくない一方で、思わぬ形で有力馬が激突することも少なからずあるからだ。
いわゆる「伝説の新馬戦」として知られる2008年10月26日の京都芝外1800メートル新馬戦はその典型例。ここにはアンライバルド(翌年の皐月賞馬)、リーチザクラウン(翌年のダービー2着馬)といった有力馬が早々に出走を決めていたが、「最初から“相手が強い”と、避けてどうする」と強気にエントリーを決めたのがブエナビスタを管理していた松田博元調教師だった。吉田勝己氏からは「ウチの走りそうなのが出るよ」と暗に回避を促すような申し出もあったそうだが、それを断っての出走は結果、3着に敗れた。
仮にブエナビスタが現実的な選択をしていれば、また違う歴史があったのかもしれない。ただ、この強気の参戦が“牡馬相手にも逃げない”ブエナビスタ像を植えつけたし、何よりレース自体が“伝説”として歴史に名を残すことになったのだから、個人的にはこれ以上の選択肢はなかったように思う。
スターリーステージをめぐっては、どんな駆け引きが行われ、どんなメンバーが顔を揃えることになるのか。今から楽しみでならない。
今回は話が少々先に飛び過ぎたが、もちろん今週も見逃せない新馬戦がある。土曜(12日)新潟芝外1800メートルには名牝ウオッカの4番子タニノフランケル(牡=父Frankel・角居)が登場予定。先週のウッドでは5ハロン68.0-11.8秒と軽快に脚を伸ばした。「この血統で今までで一番いいと思う。またがってもいいし、見た目もいい。切れるというよりはスピードで押し切るようなタイプかな。初戦から勝ち負けになるのでは」とは岸本助手だ。
タニノフランケルも早くからこのレースへの参戦を表明していたが、迎え撃つ関東馬にも強敵が名を連ねそうな情勢。果たして後年に“伝説”と称されるレースとなるのか? 真夏の熱い一戦も見逃せない。