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ドイツの名牝系から誕生したフランケル産駒モトカ

  • 2017年08月23日(水) 12時00分
アベンチュリン(牡 栗東・中内田充正 父ステイゴールド、母メジロサンドラ)
 「ステイゴールド×メジロマックイーン」の組み合わせといえば、オルフェーヴル(三冠、年度代表馬)、ゴールドシップ(GIを6勝)、ドリームジャーニー(GIを3勝)などを出しているニックス。これらを真似して作られた同配合の馬からはまだこれといった大物は出ていないが、現3歳のウインガナドル(17年ラジオNIKKEI賞-GIII・2着)のようにこれから伸びるであろう素質馬も散見できる。本馬は2勝を挙げたメジロミドウの全弟。母メジロサンドラは「メジロマックイーン×Sadler's Wells」というステイヤー血統で、現役時代は中長距離で活躍し、日経新春杯(GII)3着、カブトヤマ記念(GIII)3着などの成績を残した。スタミナ方向に寄った血なので、スピード面が懸念されるところだが、馬のデキが良ければ2000m以上の芝中長距離で活躍できそうだ。「ステイゴールド×メジロマックイーン」の持ち味はそこにあるので期待したい。

オメガラヴィサン(牡 栗東・安田隆行 父ロードカナロア、母オメガグレイス)
 2代母エリンバードは伊1000ギニー(G2)を勝ち、オペラ賞(仏G2)では1位入線したものの5着に降着となった。母オメガグレイスはオークス馬エリンコートの4分の3姉で、現役時代は芝・ダート兼用で準OPまで出世した。繁殖牝馬としてもまずまずの成績で、オメガブレイン(父キングカメハメハ/4勝)、オメガエンブレム(父ウォーエンブレム/3勝)、オメガラヴィータ(父ジャングルポケット/2勝)などを産んでいる。本馬の父はロードカナロアなのでオメガブレインの4分の3弟。「ロードカナロア×サンデーサイレンス」の組み合わせはトゥザフロンティアなど3頭がデビューして[1-2-0-2]という成績。父ロードカナロアを含めてスプリンターを育てる手腕には定評のある安田隆行厩舎ではあるが、本馬は血統的にはスプリンターではなくマイル前後のほうが持ち味を発揮できそうだ。

プロミストリープ(牝 美浦・和田正一郎 父ヘニーヒューズ、母プロミストスパーク)
 母プロミストスパークは5勝を挙げて準OPまで出世した。2代母は「ジェイドロバリー×ノーザンテースト×Promised Land」という北米血統なので、芝よりもダート適性が高く、5勝のうち4勝はダートで挙げたものだった。これにヘニーヒューズを交配して誕生したのが本馬。母の父フジキセキに含まれるIn Realityは父と相性がいいと思われるので好ましい。これまで「ヘニーヒューズ×フジキセキ」は3頭がデビューして[1-1-2-1]と上々の成績を挙げている。2歳の短距離戦はスピードがモノをいうので芝でも通用するが、本質的にはダート向きで、1400m前後がベストだろう。

メイドインヘヴン(牡 栗東・松永幹夫 父ハーツクライ、母レッドルンバ)
 父ハーツクライはいくつかの成功する配合パターンを持っているが、母方にFabulous Dancerが入るものもそのひとつで、JRAで出走した10頭中8頭が勝ち上がり、そのなかにはギュスターヴクライ(12年阪神大賞典-GII)、カポーティスター(13年日経新春杯-GII)という2頭の重賞勝ち馬も含まれる。4分の3きょうだいにトラキアンコード(父マンハッタンカフェ/1勝)、ファミーユボヌール(父マンハッタンカフェ/1勝)がいるが、配合的には本馬のほうが上ではないかと思われるので期待したい。芝向きの中距離タイプ。

モトカ(牝 栗東・吉村圭司 父Frankel、母Sasuela)
 母Sasuelaは競走馬としては平凡ながら、Samum(00年独ダービー-G1)、Schiaparelli(06年独ダービー-G1)、Salve Regina(02年独オークス-G1)の半きょうだいで、なおかつSea the Moon(14年独ダービー-G1)の伯母にあたる良血。2代母SacarinaがThong=Ridan 5×2という全きょうだいクロスを持っており、これが活力の源泉ではないかと考えられる。本馬の父はFrankel。英愛首位種牡馬8回の大種牡馬Galileoの最高傑作で、現役時代はイギリスのマイル路線を中心に走って14戦全勝(G1は10勝)の成績を残した。ワールドサラブレッドランキングでは史上最高の「140」というレーティングを獲得している。16年から走り始めた初年度産駒は好調で、ヨーロッパでは現時点で10頭の重賞勝ち馬を出している。日本でもソウルスターリングがオークス(GI)と阪神ジュベナイルフィリーズ(GI)を、ミスエルテがファンタジーS(GIII)を制した。本馬はSadler's Wells 3×4というクロスを持っている。重たさは感じられるものの、一方で前述のThong=Ridan 5×2を継続している。芝1800m以上で本領を発揮しそうだ。道悪は上手いはず。

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68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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