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サマーセール終了

  • 2017年08月30日(水) 18時00分
静内農高生徒たちと「北翔(ほくと)」

静内農高生徒たちと「北翔(ほくと)」



これは完全にバブル時代の再来ではなかろうか


 8月21日(月)より始まったサマーセールは、25日(金)夕刻に、無事全日程を終了した。すでに各報道で取り上げられている通り、今年のサマーセールは「売れに売れまくった」セールであった。

 初日が晴れ、2日目が雨となり、その後は3日目にまた晴天に戻って4日目に再び雨、そして最終日が晴れるという、交互に晴れと雨を繰り返す天候となったが、市場の成績にはまったく影響しなかった。唯一、最終日こそ、いくぶん数字が落ちたものの、例年の売れ行きと比較すればそれでも上々の成績であり、大盛況のうちに幕を閉じたと言って差し支えない。

 3日目には、250頭(牡139頭、牝111頭)が上場され、203頭(牡115頭、牝88頭)が落札、総額11億2784万円を売り上げた。売却率は81.20%、平均価格は555万円(牡679万7426円、牝393万3409円)であった。

 この日の最高価格馬は757番「インコンパスの28」(父ジャスタウェイ、牡鹿毛)の2268万円(税抜き2100万円)。浦河・(有)日の出牧場生産で、落札者は永井啓弐氏。飼養管理者は(有)様似木村牧場。

3日目最高価格馬の757番「インコンパスの28」

3日目最高価格馬の757番「インコンパスの28」

 前日の2日目には売却率が75.81%になり、初日と比較するとやや下落していたが、3日目のこの日にはまた80%の大台を回復した。

 3日目には、恒例の道立静内農高の生産馬が登場した。父バゴ、母ゴートゥザノースの牡栗毛「北翔(ホクト)」である。「よろしくお願いしまーす」という声とともに入場してくると、どんどん声がかかり、520万円(取引価格は561万6千円)まで競り上がって、JRA日本中央競馬会が落札した。これでこの兄弟(姉妹)は、3頭連続でJRA育成馬となり、来春のブリーズアップセールを目指すことになる。

道立静内農高の生産馬である「北翔(ホクト)」

道立静内農高の生産馬である「北翔(ホクト)」

「北翔(ホクト)」の落札場面

「北翔(ホクト)」の落札場面

 また3日目には、新しく女性アナウンサーが鑑定台に登場し、上場馬の紹介や、セリ後の落札者と落札価格の告知などを行なった。門別競馬場のパドック解説アシスタントを務める小木曽なつ美さんという。歯切れの良い口調と聞きやすい声質の人で、カタカナ表記ばかりの馬名にも苦戦することなく、ひじょうにスムーズにアナウンスする姿が印象的であった。

女性アナウンサーが鑑定台に登場

女性アナウンサーが鑑定台に登場

 4日目には、また雨にたたられたが、セリの勢いは衰えることなく、この日も終日、活発な競り合いが展開した。229頭(牡112頭、牝117頭)が上場され、191頭(牡95頭、牝96頭)が落札。総額10億1477万円を売り上げて、売却率は83.41%と今年の最高を記録した。平均価格は531万2921円(牡665万7347円、牝398万2500円)。この日の最高価格馬は、886番「ノルブリンカの2016」(父ディープブリランテ、牡鹿毛)の2160万円(税抜き2000万円)。生産は山岸康氏、落札者は藤原正一氏、飼養管理者は(有)目名共同トレーニングセンター。

4日目最高価格馬の886番「ノルブリンカの2016」

4日目最高価格馬の886番「ノルブリンカの2016」

 高い売却率にも如実に表れているように、購買登録番号も日を追うごとにどんどん数字が大きくなり、この日は900番台にまで膨れ上がった。初日、2日目あたりで予定頭数を買いそろえた購買者が帰るのと入れ替わるように、3日目あたりから新たにセリに参加する購買者もいて、4日目のこの日までは、とにかく売れている印象が強かった。なお、最終日を待たずして、この日の中盤で昨年の数字を大きく上回る46億円余の総売り上げとなった。

 5日目。いよいよ最終日になると、冒頭で記したように、初日〜4日目までと比較するといくぶん数字は落ちた。それでも、231頭(牡124頭、牝107頭)の上場馬のうち、163頭(牡96頭、牝67頭)が落札され、売却率は70.56%と7割をキープし、総額は8億5903万円、平均価格も527万135円(牡630万3375円、牝378万9672円)とまずまずの成績であった。

 最終日の最高価格馬は、1305番「キタノオーロラ28」(父ヘニーヒューズ、牡栗毛)の2700万円(税抜き2500万円)。木村牧場(有)の生産馬で、五十嵐秀氏が落札した。

最終日の最高価格馬の1305番「キタノオーロラ28」

最終日の最高価格馬の1305番「キタノオーロラ28」

 最終的には、1209頭(牡649頭、牝560頭)が上場され、950頭(牡532頭、牝148頭)が落札された。売却率は78.58%と前年比15.04%の上昇。また総額54億6199万2000円の売り上げは、前年より14億4763万円余の増加で、同セール史上最高の記録である。平均価格は574万9465円(牡698万6301円、牝417万5311円)とこちらも前年から76万2682円の増加であった。

 この結果について日高軽種馬農協・木村貢組合長は「驚異的な数字が並び、驚いています。セレクションセールの好成績からもある程度売り上げ総額は伸びるだろうとは思っていましたが、売却率がここまで上がるとは思っていませんでした」と振り返り「各競馬場の賞金増額や市場取引馬への優遇対策などによって、馬主がセリで馬を買い求めようという流れになってきているのはここ数年ずっと感じておりました。購買者の皆さんが馬を楽しそうに見て歩いておられる姿が印象的でしたね」と続けた。

 最終日にはついに購買登録番号が1000番台にまで達し、これ以上ないほどの盛り上がりとなったサマーセールだが、この好調が今後どこまで続くか、ひじょうに興味深いところだ。上場馬を厳選して開催されたセレクションセールの売却率が81.42%、そして、今回のサマーセールは、その選抜に漏れた馬も含め、平均的なレベルの馬が数多く上場されていながら、78%もの売却率を達成したのはまさしく驚異的である。これは完全にバブル時代の再来ではなかろうか。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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