スマートフォン版へ

近代屈指の名牝ソングバードが大一番を前に引退

  • 2017年09月06日(水) 12時00分


◆今後は11月6日のマーケットに上場される模様

 2歳時だった15年、3歳時だった16年と、2年続けて牝馬チャンピオンの座についた北米の名牝ソングバード(牝4、父メダグリアドロー)が、シーズン終盤の大一番を前にして、現役を退くことになった。先週木曜日に関係者が明らかにしたものだ。

 G2ボニーミスS(d9F、現在のガルフストリームオークス)勝ち馬アイヴァナヴィナロットの6番仔として生まれたソングバードは、14年8月にニューヨーク州サラトガで行われたファシグティプトン・サラトガ1歳市場に上場され、フォックスヒルファームのリック・ポーター氏に40万ドル(当時のレートで約4080万円)で購買されている。西海岸のジェリー・ホレンドルファー厩舎に入った同馬は、2歳7月にデビューすると、抜群のスピードを武器に、瞬く間にスターダムに伸し上がった。ダッシュよくハナを奪うと、3コーナーすぎから後続を引き離しはじめ、全てのレースで手綱をとったマイク・スミスの手がほとんど動くことなく、余裕の逃げ切り勝ちを果たすという、まさしく「並んでいたのはゲートの中だけ」というレース振りで、連勝街道を突き進んだのである。

 2歳10月にG1BCジュヴェナイルフィリーズ(d8.5F)を5.3/4馬身差で制したのが4連勝目で、年度表彰のエクリプス賞では、261票中260票を獲得して、2歳牝馬チャンピオンに選出された。また、エクスペリメンタル・フリーハンデでも、牝馬首位の基準値123ポンドを2つ上回る、125ポンドを獲得。1935年にスタートしたエクスペリメンタル・フリーハンデ史上、これを上回る数字を獲得した2歳牝馬は、1946年に126を与えられたファーストフライトただ1頭しかおらず、1997年に125を与えられたカウンテスダイアナと横並びで歴代2位という、衝撃的ともいえる高評価を得たのだった。

 牡馬も含めて世代最強というのが、当時の一般的な見方で、メディアやファンの間からはケンタッキーダービー参戦を期待する声が盛んに沸き起こったが、馬主のリック・ポーター氏は「将来的には牡馬と走ることになるだろうが、3歳春の段階で戦わせるのは、馬が可哀そう」として、当面は牝馬戦線に専念する道を選択。3歳4月のG1サンタアニタオークス(d8.5F)を制したところで、無敗の連勝は7まで伸びたが、その後、熱発を発症して目標としていたG1ケンタッキーオークス(d9F)を回避することになった。しかし、2か月ほどで戦列に戻ると、再び連勝街道を歩みはじめ、3歳9月にG1コティリヨンS(d8.5F)を制した時点で、連勝記録は11まで伸びたのだった。この間、何度も書くようだが、すべてのレースで鞍上のマイク・スミスは手綱を緩めてゴールしており、それでいて、2着馬につけた平均着差は5.1/2馬身だったから、その速さと強さは図抜けていたと言えよう。

 ところが、そのソングバードの連勝が止まることになったのが、昨年秋のG1BCディスタフ(d9F)だった。ソングバードより3世代年上で、2歳時、3歳時、5歳時と、3度にわたって牝馬チャンピオンの座に就いていたビホールダーと、馬体を併せての一騎打ちになった末、鼻差及ばずに生涯初の敗戦を喫したのである。それは、北米競馬史に残る名勝負と言われ、敗者ソングバードも、勝者ビホールダーと同等の称賛を受けたのだった。

 4歳となった今季も現役に留まった同馬の、シーズン緒戦となったのが、6月10日にベルモントパークで行われたG1オクデンフィップスS(d8.5F)で、ここをソングバードは白星で通過。ただし、2着馬につけた着差はわずか1馬身で、当時は、久々であったこと、舞台となったベルモントパークの路面は、拠点としている西海岸の競馬場よりも砂が深く、力の要る馬場に戸惑ったのが、苦戦の要因と分析された。

 ひと叩きされて、変わるだろうと見られていた次走のG1デラウェアH(d10F)も、再び1馬身差の勝利に終わると、ファンの間からは「ソングバード、去年と違うよね?」という声が聞こえはじめた。G1を連勝して、パフォーマンスが落ちたと言われるのも、ソングバードならではの事態だったが、ファンの懸念が明確な形で具現化したのが、8月26日にサラトガで行われたG1パーソナルエンスンS(d9F)だった。いつものように逃げたソングバードだったが、ゴール前で、2つのG1を含む重賞5勝馬フォーエヴァーアンブライドルドの末脚に捕まってしまい、首差の2着に敗れてしまったのである。引退が発表されたのは、その5日後のことだった。

 声明によると、G1パーソナルエンスンSの後、両トモ脚の歩様が悪くなり、ケンタッキーのルード&リドル診療所で詳しい検査を受けたところ、両後肢の繋靭帯が肥大していることが発覚。更に、骨や関節が衝突することで起きる骨挫傷の症状も見られ、現役を続けるのはリスクが高いとの判断に至り、引退の決断が下ることになったものだ。そして、今後のソングバードだが、11月6日にケンタッキーで行われるファシグティプトン・ノヴェンバーセールに上場されることになる模様だ。

 近年屈指の名牝ソングバードが、マーケットに出てくるのである。いったいどんな値段がつくことになるのか、世界が注目することになりそうだ。

このコラムの通知を受け取りますか?

お気に入り

このコラムの通知を受け取りますか?

お気に入り

すでにお気に入りに登録しています。

登録済

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング