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心静かに本性を養えば

  • 2017年09月14日(木) 12時00分


◆人馬一体のファインニードルとデムーロ騎手

 直線スペースがなくなって伸び切れずに終わっていた北九州記念を教訓に、セントウルSでは二の脚を使ってインコースの好位の3番手でそのまま流れに乗って行ったファインニードルの勝利。逃げ馬の外に進路ができたのは、相性のいい阪神だったこともあるだろう。デムーロ騎手との人馬の心は一致して乱れることはなく、静かな水面を見ているようなものだった。波立っていては、空の星や月を映し出せない。人馬が静かな水面の如く乱れず一体であったところに勝利を映し出す力があったので、4歳の秋だからこそ、さらなる成長をと期待できる。あとは、どう英気を養っていくかだ。

 グランシルクをテン乗りで重賞初制覇に導いた田辺裕信騎手の京成杯AHも見事だった。そのレースの読みにはいつも感心させられているが、ハナに行く馬も追いかける馬もわかっていたから、展開はある程度予想したとおりだったと語っていた。これならば心乱れることなく、これまた静かな水面の如くであったろう。終盤は確実に末脚を駆使するのにあと一歩で勝ちをのがしていた善戦マンを、田辺騎手がどう乗りこなすかの期待は大きかった。中団待機から3角をまわってから早目に動き、最後まで他馬とは違う脚を見せていた。イーブンペースでも巧く折り合いがついたのはこの馬の成長の証しだ。

 ファインニードルはアドマイヤムーン、グランシルクはステイゴールドの産駒、どちらも成長力のある血すじを受け継いでいる。

 紫苑Sは、ゴール前はハナ、ハナの大接戦で3頭がなだれ込んだが、ここは勝ったディアドラの力が一枚上だった。これは岩田康誠騎手の言ったとおりだ。中山の内回りの二千米を、後方から大外を回って追い込みを決めたのだから、これは明らかに今後の可能性を暗示していた。馬体は確実にひと回り大きくなっていて、堂々としたパドックでの周回を見ていて頼もしく見えた。

 秋競馬の開幕週の3重賞が、いずれも一番人気が勝ったことで、心静かに本性を養っているものは、真理を共感することができるという、古人のことばが頭に浮んだ。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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