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重賞ウィナーを母に持つロードカナロア産駒の好配合馬クルークヴァール

  • 2017年10月04日(水) 12時00分
イシュトヴァーン(牡 栗東・石坂正 父ルーラーシップ、母ドナウブルー)
 母ドナウブルーは京都牝馬S(GIII)、関屋記念(GIII)の勝ち馬で、ヴィクトリアマイル(GI)2着、マイルチャンピオンシップ(GI)3着などGIでも上位争いをする優れたマイラーだった。その全妹に年度代表馬に二度選出され、顕彰馬にもなったジェンティルドンナ(12、13年ジャパンC-GI、14年ドバイシーマクラシック-G1、14年有馬記念-GI、牝馬三冠)がいる。「ルーラーシップ×ディープインパクト」は出走7頭中5頭が勝ち上がり、出世頭のキセキは神戸新聞杯(GII)2着、毎日杯(GIII)3着などの成績を挙げている。ルーラーシップ産駒は大柄でやや鋭さに欠けるところがあるので、小柄で鋭い切れ味を武器とするディープインパクトの血は合うのだろう。ニックスといえる関係だ。本馬は540〜550kg台の巨漢で、430kg台で競馬をすることが多かった母ドナウブルーにはまったく似ていない。身体を大きく出す父の影響を強く受けたことが走りにどう出るか。鋭さを保っているようなら大物コースだろう。

ヴェルテアシャフト(牡 栗東・池江泰寿 父ディープインパクト、母ヒルダズパッション)
 ジークカイザー(3勝)の全弟、Yoshida(父ハーツクライ/ナショナルミュージアムオブレーシングホールオブフェイムS-米G2・2着、サラナックS-米G3・2着)の4分の3弟。アメリカ生まれの母ヒルダズパッションはバレリーナS(米G1・ダ7f)など5重賞を制し、ガルフストリームパークのダート7ハロンのトラックレコード(1分20秒45)を樹立した。母が持つ Nureyev≒Sadler's Wells 4×3は決して素軽くはないが、現役時代に抜群のスピードを誇った名牝だけに、これらがスピードを支える重厚さとして機能するようなら期待十分。芝でもダートでもやれる馬だろう。

グランソード(牡 栗東・高野友和 父ハーツクライ、母ドリームオブジェニー)
 フラワーC(GIII)を勝ったファンディーナ(父ディープインパクト)、皐月賞(GI)で7着となったナムラシングン(父ヴィクトワールピサ)の半弟。母ドリームオブジェニーは不出走ながら仏2歳牝馬チャンピオンに輝いたCoup de Genieの孫にあたる。Coup de Genieは名種牡馬Machiavellianの全妹で、その子に仏2歳牝馬チャンピオンのDenebola、アメリカで3つの重賞を制したSnake Mountainがいる。ドリームオブジェニーの母GliaはSnake Mountainの全妹。血統的に筋が通っている。母の父Pivotalは現役時代にナンソープS(英G1・芝5f)を制し、種牡馬としても自身に似たスピードタイプを送り出して成功を収めた。母の父としてはさらに素晴らしく、英愛ブルードメアサイアーランキングでは毎年上位を争う存在となっている。母方に入るSeattle Slewは父ハーツクライと相性抜群。晩成タイプかもしれないが芝中距離で兄姉に迫る活躍を期待したい。

クルークヴァール(牡 栗東・浅見秀一 父ロードカナロア、母クィーンズバーン)
 母クィーンズバーンは現役時代に阪神牝馬S(GII)を勝ったスピード馬だった。2代母シンコウエンジェルは繁殖牝馬として優れた能力の持ち主で、クィーンズバーンのほかにワイルドソルジャー(04年名古屋グランプリ-GII)、ダノンカモン(14年名古屋大賞典-JpnIII)、ルベーゼドランジェ(15年オーバルスプリント-JpnIII・2着)を出している。勢いの感じられる牝系だけにクィーンズバーンも繁殖牝馬として成功する可能性は高い。本馬の父は初年度産駒が大活躍しているロードカナロア。母クィーンズバーンの配合はBuckpasserがキーポイントになっているが(2代母に血統的に近いBlue Eyed Momo、Jesterが入るため)、ロードカナロアはBuckpasserを継続し、全体の構成も素晴らしいので高い素質を感じる。芝向きのマイラー。

フィニフティ(牝 栗東・藤原英昭 父ディープインパクト、母ココシュニック)
 全兄に富士S(GIII)を勝ち、天皇賞・秋(GI)、大阪杯(GI)、クイーンエリザベス二世C(香GI)などで2着となったステファノスがおり、「ディープインパクト×クロフネ」はシャイニングレイ(14年ホープフルS-GII、17年CBC賞-GIII)、ポルトドートウィユ(15年京都新聞杯-GII・2着)、カワキタエンカ(17年ローズS-GII・2着)など、20頭中16頭が勝ち上がっている。母ココシュニックは3勝馬で、2代母ゴールドティアラは南部杯(GI)などダート重賞を5勝した名牝。母方はパワフルな血が重ねられているが、こうした血統構成の繁殖牝馬から芝向きの一流馬を作ってしまうところがディープインパクトの真骨頂。順調に仕上がれば重賞でもやれそうだ。

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68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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