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愛馬と歩む第二の人生 乗馬に魅了された夫婦とティンカーベルの物語(1)

  • 2017年10月10日(火) 18時00分
第二のストーリー

▲晩年を愛媛県大三島で過ごしたティンカーベル(画像提供:渡部久美子さん)


愛馬ティンカーベルのために退職を決断


 瀬戸内の海に浮かぶ島の1つに、1頭の芦毛のサラブレッドが暮らしていた。セン馬のティンカーベル、通称ティンク。島の人からも愛されたその馬が、24歳で天に召されたのは、今年の8月16日のことだった。

 ティンクが晩年を過ごしたのは、瀬戸内海西部の芸予諸島の中の1つである大三島だ。芸予諸島は広島県と愛媛県にまたがっており、大三島は愛媛県今治市に属している。同県の中では最も大きい島で、本州や四国から大三島に渡るには、瀬戸内しまなみ海道を使うのが便利で早い。島内には全国に一万社ほどの分社を持つ、日本総鎮守と呼ばれる大山祇(おおやまづみ)神社があり、国の天然記念物にも指定された樹齢約2600年の大楠があることでも知られている。

 ティンクのオーナーは渡部尚人さん、久美子さん夫妻。勤めていた会社を早期退職した尚人さんは、農業を学び、大三島に移住。乗馬クラブに預託していた愛馬ティンクを、自宅に迎え入れた。

 今治市に生まれた尚人さんは、馬には縁がないまま長年過ごしてきた。

「神戸大学時代、教養学部〜工学部に向かう途中に馬術部の厩舎の横を通ったのですが、何か匂うな…くらいしか思わなかったですね」

 神戸大学工学部を卒業した尚人さんは、パナソニック関連の会社に就職。久美子さんと結婚したのは1989年だったが、入社してわりとすぐに大阪に派遣されて単身赴任も経験している。夫妻が馬に出会ったのは、旅先だった。

「1999年か2000年くらいやと思うんですけどね。旅行が好きであちこち巡っていたのですが、競馬って一度見に行ってみる? みたいな感じで島根県の益田競馬場に行って、目の前を馬が走ったのを見て格好いいなと思って、1年後くらいに北海道のノーザンホースパークに行って体験乗馬をしてみました。

 その後は蒜山や大山、あとはまた北海道などいろいろな場所で外乗するようになってハマッてしまいました。近場に乗馬クラブはないかなと探してみたら

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北海道旭川市出身。少女マンガ「ロリィの青春」で乗馬に憧れ、テンポイント骨折のニュースを偶然目にして競馬の世界に引き込まれる。大学卒業後、流転の末に1998年優駿エッセイ賞で次席に入賞。これを機にライター業に転身。以来スポーツ紙、競馬雑誌、クラブ法人会報誌等で執筆。netkeiba.comでは、美浦トレセンニュース等を担当。念願叶って以前から関心があった引退馬の余生について、当コラムで連載中。

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