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【新記録マーク】藤田菜七子騎手(1)『JRA女性ジョッキーの年間最多勝利を20年ぶりに更新』

  • 2017年11月15日(水) 18時01分
キシュトーーク

今回はJRA女性ジョッキーの年間最多勝利を更新した藤田菜七子騎手の登場です


10月21日の新潟メインレースで12勝目をマークし、JRA女性ジョッキーの年間最多勝利を更新した藤田菜七子騎手。実に20年ぶりの記録更新となりました。この記録は菜七子騎手にとってどういう意味を持つのでしょうか? 同期への意識、初の騎乗停止についてなど、デビュー2年目を迎えた菜七子騎手が、自身の“今”を語ります。(取材・文/森カオル)

同期にも後輩にも先輩にも負けたくない


──10月21日、新潟11Rの飛翼特別(ベルモントラハイナ)で12勝目をマークし、JRA女性ジョッキーの年間最多勝利を20年ぶりに更新されました(11月12日・福島2Rで13勝目!)。改めまして、おめでとうございます。

菜七子 ありがとうございます!

──ゴール前は、行き場を探しながらのギリギリの攻防でしたね。

菜七子 ずっと脚はあったので、あとはどこから抜け出すか…という感じだったんですけど、外に進路が見えたので持っていったら締められてしまって、内に切り替えたらまた狭くなってしまって。

──でも、最後は一瞬の隙を見逃さずに。

菜七子 はい。そこは狭いところでも突っ込んでいける馬だからこそですね。馬が頑張ってくれたおかげだと思っています。

──菜七子騎手の冷静さも光りました。

菜七子 いえ…、内心「どうしよう…」と思って、けっこう焦ってました(苦笑)。本当に抜け出せてよかったです。

──菜七子騎手にとっては、12勝という数字も単なる通過点かと思いますが、やはり当面の目標として12勝という数字は意識されていたんですか?

菜七子 私自身はそれほど意識していたわけではないんですが、やはり周りの方に「記録更新だね」と言っていただくことが多くて。ただ、たくさんの方に乗せていただいて、その結果としての数字だと思うので、改めて多くの方に支えられて今の私があるんだということを感じることができました。これまで取りこぼしたレースもたくさんありますが、そういった意味では少し自信につながったかなって。でも、正直まだまだです。同期のなかでは一番勝っていないし…。

──確かに32期生(美浦:菊沢一樹騎手/17勝、木幡巧也騎手/17勝、栗東:荻野極騎手/39勝、坂井瑠星騎手/36勝、森裕太朗騎手/20勝 ※いずれも11月12日終了時点、JRAのみ)は、東西で活躍が目立ちますよね。

菜七子 そうなんです、みんなすごいんです。後輩でも私より勝っている子がいますからね。もちろん、女性騎手の最多勝利記録を更新できたのはすごくうれしいことではあるんですけど、やっぱり同期にも後輩にも先輩にも負けたくないという思いがありますから。

キシュトーーク

「やっぱり同期にも後輩にも先輩にも負けたくないという思いがあります」(写真は11月12日福島2R、(C)netkeiba.com)


──“女性最多”とか“女性初”という表現に対し、逆に奮い立つところもあるのでは?

菜七子 そうですね。女性であること以前に、“一人のジョッキーとして注目してもらえるように”という気持ちはいつもあります。だから、“女性ジョッキー”として注目されることに対しては、うれしい半面、悔しいなと思うことも。悔しいと思うなら、もっともっと勝たなくちゃって思います。とはいえ、さっきと話していることが矛盾してしまうんですが、誰かの数字と比べてどうこうというのは意味がないとも思うんです。やっぱり、自分なりにひとつひとつ大切に乗って、ひとつひとつ勝ち星を積み重ねていくことが大事だなと。そうはいっても、(同期に負けていることが)すごく悔しいことには変わりないんですけどね(笑)。

──はっきりと数字が出てしまう世界だけに、そのあたりはどうしても葛藤が生じますよね。記録更新のニュースが出た翌週には、初めての騎乗停止がありました(10月29日・新潟6R)。今回の騎乗停止については、どう受け止めてらっしゃいますか?

菜七子 勝てる力のある馬だったので、ちょっと焦りが出てしまいました。

──1番人気でしたものね。

菜七子 はい。人気していたこともそうですが、前走でいいレースをしていた馬だったので(前走は杉原騎手騎乗で、タイム差なしの2着)。「どうしても勝ちたい!」という気持ちが焦りにつながってしまって、その結果、たくさんの方にご迷惑を掛けてしまいました。

──積極的に位置を取りにいったシーンでしたね。

菜七子 そうですね。どうしても位置を取りたくて、ちょっと強引な進路取りをしてしまって…。後ろから声が掛かったので自分でも気づいたんですが、レース後にパトロールを見て、改めて「あ、内側にこんなにいたんだ…」と思って。すごく危険な騎乗だったと思います。本当にもう反省しかありません。

──騎乗停止期間中は、菜七子ジョッキーにとってどんな時間になりましたか?

菜七子 基本的にはずっと美浦で調教に乗せてもらっていたんですけど、競馬を外から客観的に見ることができたのは、自分にとってよかったのかなと。根本先生からも、「きちんと反省をして、次につなげていけばいいよ」と言っていただいて。

──もちろん、危険な騎乗はないに越したことはありませんが、人間、失敗してみなければ気付けないこともありますからね。

菜七子 自分の焦りが原因だということはわかっているので、今後は絶対に同じ過ちを繰り返さないようにと思っています。
キシュトーーク

今後は絶対に同じ過ちを繰り返さないようにと思っています


(次回へつづく)

元祖「キシュトーーク」のレギュラー陣、国分恭介、国分優作、松山弘平、川須栄彦、高倉稜を中心に、栗東・美浦・地方からも幅広く、これからの競馬界を担うU25の若手ジョッキーたちが登場します!

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