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騎手のミス?馬の癖? オーストラリアの裁決事情

  • 2017年11月23日(木) 18時01分


日本なら開催するレベルの雨でも中止に


 netkeibaをご覧のみなさん、こんにちは。小崎綾也です。

 ここ最近は日差しが強く暑くなってきました。9月、10月と全然雨が降らなかった影響か、11月は時々天候が崩れる日もあります。日本も今年の秋は競馬開催日に天候が崩れる日が多いみたいですね。

 さて、僕の騎乗のお話です。先々週は2鞍に騎乗し、そのうちの1つは初めての競馬場でした。僕が住んでいるローズヒルから車で2時間半〜3時間かかるところにあるBathurst競馬場で、田舎にあるということもあり、閑静な競馬場です。小さいスタンドが1つだけと規模は小さい競馬場ですが、コース自体は一周1600mで直線380m、また向正面から1400mのスタートができるぐらいスケールがあります。

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 ただ芝の状態はもうひとつ。使われたことによる悪化ではなく、手入れが行き届いていない感じの荒れ方です。メトロポリタンの大きな競馬場(Rosehill、 Randwickなど)は普段からしっかりと管理されているので、開催で使われていてもいい状態を保っています。Bathurst競馬場など、芝の生育や状態が良くない競馬場で乗ると、あらためて日本の馬場管理の素晴らしさを感じます。

 僕がBathurst競馬場で騎乗した馬はBombitoという馬で、オーナーはなんと、クリス・ウォーラー厩舎で一緒に働いているスタッフ! オーストラリアは日本とは異なり、いろいろな人たちが馬を所有することができ、今回のようなパターンのほか、オーストラリアでポピュラーな共有馬主などの形態があります。

 オーストラリアは日本のようにオーナーになるのが難しくないようで、オーナーである厩舎スタッフもまだ20代。僕からすると、普段は仲のいい普通の友達です(笑)。 友達の馬にレースで騎乗するというのは僕にはない経験なので、すごく楽しみにしていました。車でオーナーとその友達と一緒に競馬場に向かい、いざレースへ。

 レースは1勝馬と未勝利馬混合の1800m。短距離からの距離延長戦でした。作戦は逃げでいこうという話になり、僕もいいイメージを持って競馬に臨めました。

 が、結果は逃げて7着。勝ち時計は1分51秒7で、コース形態や芝の状態が違うため、日本と単純に比較はできませんが、時計だけをみるとかなり遅いですよね。感覚的な話になりますが、今回の逃げは、オーストラリアの馬の持ち味を活かし切れずに終わってしまったように感じています。ペースやラップが速かったわけではなく、脚のタメ方、使いどころ、馬とのコンタクトなどなど、僕の対応に課題が残りました。予定では次走も乗せていただけることになっています。自分で意識的に変えてみたいところがあるので、どこまで変えていけるか楽しみです。

 2戦目はNewcastle競馬場での騎乗でした。1400mで外目の枠からスタート。理想は中団のイン、そして3頭目を周ってレースをしないというのも重要な点でした。レースはスタートで立ち遅れてしまい、後方のインから。これまでなら中途半端に出していって、中団3頭目を周ってくるレースをしてしまったかもしれませんが、今回は我慢することができました。結果的に6着だったのでこの判断が正解とは言えませんが、これまでの自分とは違った判断ができるようになりました。

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 内容は変わったとはいっても、先々週の2戦でまた結果を出すことはできず…。ここまで26戦、自分の中で改善点は見えてきたのですが、肝心の勝つところまでいけていません。

 オーストラリアに来てレースに乗ることができてからというもの、次の騎乗機会が本当に楽しみで、「1鞍」「1勝」の重みを改めて感じています。自分のなかで少しずつ見えてきたものを、確実にレースに取り入れていきたいです。

 そして先週末の土曜日は1鞍の騎乗予定があり、楽しみにしていたのですが、雨で開催が中止に。その日は確かに雨予報だったのですが、まさか中止になるとは思いませんでした。僕が騎乗する予定だった競馬場以外にも中止になっている競馬場があり、降水量は15mm毎時と確かに強い雨だったようですが、この程度であれば、日本の場合は開催しますよね。楽しみにしていたので残念ですが、これも人馬の安全を考慮したこちらのルールなので仕方ないです。

 開催中止ということで、その日は開催が行われているRosehillの競馬を観に行くことにしました。Rosehillは土曜日に競馬が行われているのですが、僕は普段、土曜日は裏開催で騎乗していることが多いので、これまでRosehillの競馬観戦に行く機会があまりありませんでした。Rosehillもドレスコードのお客さんが多く、とても華やかです。また、お酒を飲みながら楽しく観戦している方がとにかく多いです(笑)。 どうやら馬券を買うことだけが目的ではないようですね。華やかな競馬場で上位ジョッキーたちのレースを観て、僕もここで勝ちたくなりました。

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 ちなみに、競馬観戦に必要なレーシングプログラムはこちらにもあり、これにもまた日本とは違った興味深さがあります(日本のように無料ではなく有料です)。

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 Stewards Reportというもので、日本でいう裁決委員からの報告書です。これには出走馬の前走のレース短評や癖、不利を受けたことなど、その馬の目立った点や注意すべき点が書かれています。オーストラリアの裁決委員は、その馬がどのような馬か(能力、レースぶり、癖)をよく把握していると感じます。レースだけでなく、バリアトライアルもすべてチェックしているのもひとつの要因のようです。ジョッキーのミスが大きいのか、馬の癖に大きな原因があるのかの判断も明確だと感じます。馬の癖があるときは、それを加味して判断されることが多いようですが、そのぶんジョッキーが意図的に違反したり、ミスをしたときには厳しい裁定が下されます。僕は当初と比べると違反は少ないので、今後も十分意識して乗っていきたいです。

 土曜日の競馬後、毎週日曜日は休日です。普段はコーヒーを飲みながら(オーストラリアのコーヒーは美味しい!)、日本の競馬を観てリラックス…といった過ごし方が多いのですが、先日の日曜日は、来週末に競馬を控えた馬がいるため、その馬の調教があり、調教後はスタッフのお宅にお邪魔して朝ご飯をご馳走になりました。オーストラリアでポピュラーなVEGEMITE、NUTELLAもあったので、トーストにつけて食べたのですが……VEGEMITEは口に合わなかったです(苦笑)。

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 私生活は充実しているので、もっと騎乗内容を充実させて、何とか勝ちに繋げたいです。日本の競馬ファンのみなさん、引き続き応援よろしくお願いします!

1995年5月13日、滋賀県生まれ。父・小崎憲はJRAの調教師。同期は松若風馬、石川裕紀人ら。2014年に栗東・村山明厩舎所属でデビュー(現在はフリー)。同年2月、調教中の怪我で同期よりデビューが1か月遅れたが、騎乗初日に父の管理馬で初勝利を挙げ、1年目は38勝を挙げる活躍を見せた。デビュー4年目の2017年、長期海外武者修行を決意。

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