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1角で小さく叫び、4角で立ち上がって叫びたい。

  • 2017年11月30日(木) 12時00分


「今までで一番いいレースができました。スタートが遅い馬なのであの位置からになりましたが、意外とペースが流れてしまいました。1回ペースが落ち着いて欲しかったですね。ただ、思った通りの競馬ができて満足してます」(週刊競馬ブックより)

ジャパンカップ5着のムーアのレース後コメントだ。
実に満足そうだ。

JC5着の獲得賞金は3000万円。これは今年アイダホが走ったレースで、おそらく一番高い獲得賞金だ。

今年6戦していて、それまでの最高獲得賞金はおそらくキングジョージ3着の推定2300万円だった。

前走・カナディアンインターナショナルS・G1 4着・推定1000万円くらい
2走前・凱旋門賞・G1 8着(ちなみに5着で1900万円前後)
3走前・ソードダンサーS・G1 6着(1着で約3300万円くらい)
4走前・キングジョージ6世&クイーンエリザベスS・G1 3着・推定2300万円くらい
5走前・ハードウィックS・G2 1着・約1900万円
6走前・コロネーションC・G1 6着・(1着3500万円くらい)

経費のかからないジャパンカップで3000万円の獲得はたいそう満足度の高いレースだろう。

でも、馬券を買っていた自分には満足度の低いレースだった。去年のリアルスティールとまでは言わないけれど、そこそこ前につけてくれると思っていたからだ。確かにリアルスティールとアイダホでは東京競馬場実績がぜんぜん違う。それはわかっている。

でも、その週のムーアは、芝で先行して4勝をあげていた。スタートからしごいて前を取りに行って勝つレースもあった。今の東京競馬場で勝ち負けするのには先行するのが一番と見切っていたかのような操縦ぶりだった。だからジャパンカップでもそういう競馬をして、粘らせると思っていた。たとえ「スタートが遅い」アイダホでもだ。

しかし今年は14-14-14-13のポジション。「1回ペースが落ち着いて欲しかった」と言うくらいだから、ムーアなりの秘策があったのかもしれないけれど、後方から進んで少しでも着が拾えればいい。そんな競馬だった。

にしても、超名手が着狙いの競馬をするととてつもない。ムーアはこれでJC7回目の掲示板だ(この10年で7回。もちろんトップ)。ムーアがアイダホにどれほどの適性を感じていたのかは定かではないけど、アイダホの5着でオブライエン師がもう少し前向きになると面白いな。だから来年、オブライエン厩舎がアイダホ以外で参戦して来たら、また一考してみたくなった(アイダホだったらいらないような気がする)。と言うわけで「もう2度と海外の馬は買わないぞ!」と誓うのは来年まで延期することにした。ワハー。

そのムーアが3連覇を賭けて、ステイヤーズSでアルバートに騎乗する。

アルバートは6歳だけど、このレースはトウカイトリックが4歳で2着して、9歳で3着して、10歳で1着して、11歳で3着するようなレースだ。6歳で勝てないレースではない。ましてやムーアが騎乗する。ふつうに考えたら3連覇達成だ。

トウカイトリックのように4歳で2着して、6歳、8歳で2着した9歳のファタモルガーナがいたら怖いと思っていたけど、もう引退してしまった。イキの良さが怖い3歳、4歳も今年はいない。6歳時に2着したカムフィー8歳がいるけど、最近の成績が悪すぎて、とても1着できるとは思えない。

となると、高齢の8歳シルクドリーマー、7歳フェイムゲームあたりが相手になるか? 高齢馬にもやさしいユニバーサルなG2だから十分あり得る。

#1 ステイヤーズS・注目馬

ムーアと5歳グランアルマダ 

登録メンバーで一番若い5歳のグランアルマダの逃げに注目してみる。
グランアルマダは道中1・2番手を追走した時は意外にしぶとく、健闘する。道中逃げたり、番手から4角先頭だった時はいつも馬券圏内だ(3回該当)。

ステイヤーズSは道中、出入りの激しくなることがけっこうあるけど、今年は差し系の馬が多く、アルバートという主軸がいて、他の人気馬の鞍上も外国人騎手だからムーア・マークで、淡々と進む可能性もある。鞍上・石橋脩も2走前の逃げ切りを期待されての依頼に思える。ムーアが番手につけなければ、そこそこ楽しめそうだ。

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チャンピオンズCもムーアに期待していいのか
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ムーアが騎乗するのはゴールドドリーム。
でも先週のアイダホ同様に少し買うのを躊躇させる(自分は買いましたが)。

なぜだろう?

ムーアにせっかく来てもらってるのだから、G1では出来るだけチャンスのある馬をあてがいたいけど、ときどき上手く用意できなかった? と感じてしまうこともある。

そしてそのエアポケットは、チャンピオンズCのときに生じがちな気がしないでもない。

以下はここ3年のムーア騎乗の馬。エアポケット感がちょっとある。

14年 クリノスターオー・4歳 7人気8着
15年 グレープブランデー・7歳 10人気8着
16年 ノンコノユメ・4歳 4人気6着

クリノスターオーは非社台系で、社台グループは用意できなかった。
グレープブランデーは社台F系だけど、7歳で全盛期はすぎていた。
ノンコノユメは社台F生産馬だけど、セン馬2戦目で体調が整っていなかった。

だから今年騎乗するゴールドドリームにもついついエアーな風をポケットしちゃいそうだけど、今年は今までよりはチャンスがあるような気もしている。

ゴールドドリームは、趣味・出遅れというくらい、出遅れ・出負けが多く、12戦して8回出遅れ・出負けしている。実際、去年のチャンピオンズCでも、出遅れて、12着に負けた。


ただ、その後、巻き返して、フェブラリーSを勝つのだから弱い馬ではない。馬齢も4歳で、まだまだ成長が見込める。体調も去年のノンコノユメより良さそうに思える。であるからか、出遅れなければ、チャンスはあるのではないか? と思えてしまうのだ。

去年 チャンピオンズC 出遅れ(約1馬身)
6-6-5-5 12着

出遅れたのに1角の位置が6番手ということは、出遅れを挽回しようと手綱をしごいたということだ。15頭立てだったから、スタートから1角までの位置取りは15→6となる。このレースは2F目が10.7秒で、1000Mが60.6秒だった。先行した馬には厳しいレースで、ゴールドドリームは前半無理したのが原因で、お釣りがなくなったと言える。

チャンピオンズCの過去3回の1000M通過タイムと着順。60秒台だと差し馬が優勢なのがわかる。

14年 62.3  1着ホッコータルマエ  2-2-2-2
       2着ナムラビクター   5-6-4-4
       3着ローマンレジェンド 5-3-2-2
15年 60.2  1着サンビスタ     6-6-8-6
       2着ノンコノユメ    14-14-15-15
       3着サウンドトゥルー  15-15-16-16
16年 60.6  1着サウンドトゥルー  14-14-14-13
       2着アウォーディー   6-7-6-5
       3着アスカノロマン   2-3-3-2

ゴールドドリームはもともと出遅れ癖がある馬だけど、今年のフェブラリーSはちょっとの出負けだったのに対して、5着に負けた前走の南部杯は豪快に3馬身近く出遅れた。

そのフェブラリーSでは1着、南部杯では5着だった。

フェブラリーS  出負け(約半馬身) 9-9-8 1着 
→出負けしたものの、比較的スムーズに9番手につけられて、1着した。内枠も幸いしたか。

南部杯     出遅れ(約3馬身) 10-8  5着 
→16頭立てで3角10番手。つまり向正面で16番手から10番手に取り付けたということだ。実際レースビデオを見るとわかるが、残り4F(800M)から動いていた。勝ったコパノリッキーは先行して、残り500Mくらいから動き出した。ゴールドドリームがかなり長めにスパートしたことがわかる。それでも上がり1位だった。ゴールドドリームの強さの一旦は垣間見える内容ではあった。

ちなみに、
3走前のドバイWCも2馬身くらい出遅れた。

ドバイWC  出遅れ(約2馬身) 10-10-5-10 14着
→14頭立てで1角10番手。2馬身くらい出遅れたけど、内枠が幸いしたのか、手綱をしごきつつ10番手を確保。向う正面で内から外に持ち出しつつ、3角5番手まで上がる。そこで力尽きたのか、やる気を失ったのか、ズルズルと後退し、4角で10番手まで下がる。そして大惨敗。ちょっと強引な競馬だった。

2走前の帝王賞はスムーズにスタートを切ったが、いいところなく4人気で7着に負けた。
このレースはドバイ組が揃って人気を裏切るレースで、ドバイ組の1人気アウォーディー3着、2人気アポロケンタッキー5着だった。

前走の南部杯のゴールドドリームは出遅れて5着に負けたものの、馬に走る気はあった(ように見えた)。ドバイ→帝王賞からの立て直しが成功したとしたら、体調は悪くないはず。

全12戦中8戦で出遅れ・出負けしていて、勝負には向かない馬だけど、それでもG1・G3を1勝ずつしているのだから、ちゃんと走れば強い馬とも言える。ムーアが騎乗して、ちゃんと走らせることができれば、チャンスは生まれるのではないか。

この馬は距離不安ではなく、スタート不安、コーナー嫌い(コーナーは2つまで!)ではないかと思っている。その二つの問題をムーアで解消できれば、ダークホースになれるのではないか。

予想13人気!
ムーア騎乗とわかっていて、この人気のなさ!
先週のアイダホ(10人気)より人気がないよ! ヒャッホー!
この人気なら買える!

枠は内がいいな。
ちゃんとスタートして、1角に最内6番手で入る。あとは4角まで動かない。これが理想だな。最内6番手は前半速くなっても、遅くなっても、持ちこたえられるギリギリの位置ではなかろうか。

にしても予想13人気はそそられる!
自分は2年前のサンビスタの馬券を取った。Mデムーロ騎乗で、12人気だった。
うむ、チャンピオンズCではこういうことがときどき起こる。そう思えれば難なく買える。

蓋を開けてみたら、4、5人気。そういうのはカンベンして欲しいな。

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チャンピオンズC・注目馬
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やや外枠のテイエムジンソク
内枠のゴールドドリーム

1〜3人気の馬達が激突し合って、1頭が勝ち負けし、2頭が3着以下に敗れる。これが東京のジャパンカップダートから脈々と伝わるこの時期の中央ダートG1の伝統。

だから4人気以下でいい馬を見つけたら、1〜3人気に流せばそれでいい。

予想では
1人気をサウンドトゥルーとテイエムジンソクが争っている。3人気をアウォーディーとケイティブレイブが争っている。

差しのサウンドトゥルー、逃げ・番手のテイエムジンソク。
これだけで激突感満載だ。

だからゴールドドリームから買うなら、1〜3人気、もしくは1〜4人気を絡めればいい。

でも自分はテイエムジンソクに期待している。4角から直線に向く時にアクセルを踏み込めれば、ここでも勝てるのではないか? 
G1は初挑戦だけど、圧倒的スピードの持続で勝ち進んで来た馬にはG1のペースは苦にならないのではないか? 

エルムSではその場所での踏み込みが甘かった気がする。2着に負けたことで、みやこSではより深く踏み込んだように思えた。

みやこSの4角から直線に向くときのテイエムジンソクにはうっとりしてしまった。
あのうっとりをここでも見せて欲しい。感じさせて欲しい。

うっとりできたら、すぐさまスタンディングオベーションでブラボー!と喝采を贈るつもりだ。そこからゴールまでは運だ。着順などどうでもいい! いや、馬券圏外は嫌だな。3着以内には入って欲しいな。運は運だけど、そういう走りができてるということは余力があるということだ。拍手を贈りながら、1着か2着か3着か確認だ。

整理すると、こうなる。

スタートをゴールドドリームとムーアが決めて、最内の6番手で1角に入れたら、小さくブラボーと叫び、
4角から直線に向く時にテイエムジンソクとフルキチ騎手にうっとりさせてもらえたら、立ち上がってブラボーと叫ぶ。

そういうチャンピオンズCになるといいな。テイエムジンソクは6枠くらいがいいな。

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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