抽選突破して2歳女王になる ソシアルクラブ/吉田竜作マル秘週報
◆この血統に関わった人たちの思いが詰まっている
ビワハイジは1995年に阪神3歳牝馬S(阪神JFの前身)を勝ち、引退後は母としてアドマイヤジャパン、アドマイヤオーラ、ブエナビスタ、ジョワドヴィーヴルらを送り出した。
その中でも最も活躍したブエナビスタはGI6勝の華々しい記録に目がいきがちだが…。当時の担当記者としては、キュウ舎スタッフにいろいろと苦労がついて回ったことをよく覚えている。その原因となっていたのが「前さばきの硬さ」だった。
人間の親子関係と同じ…と言うべきか、サラブレッドも「悪いところばかりが似る」ものらしい。ブエナビスタの初子コロナシオンも、母同様に前さばきに硬さがあるらしく、「前脚が出なくて、勝手に転んだこともあった」(藤原助手)とか。母同様にキャリアを重ねていくうちに、そうした面も「マシになってきた」のだという。
ブエナビスタの2番子にあたるのが、阪神JFに出走予定のソシアルクラブ。今、振り返ると、まだデビューからはるか前のPOG取材時に、池添学調教師からは「お姉ちゃんのようなことはないと思います。硬さもだいぶマシですから」と、すでにこの血統の課題を十分にケアする発言が出ていたのに驚かされる。
それでも用心するに越したことはない。未勝利戦勝ち上がりからの直行で阪神JF(2008年)を制した母ブエナビスタを診察した平獣医は「反動があって(阪神JF出走に踏み切るのは)ギリギリの判断だったんじゃないかな」と、かつて口にしていたくらいだ。
そういったものを踏まえた上での決断だったのだろう。娘ソシアルクラブは新馬戦を勝ち上がった後にすぐ、ノーザンファームしがらきへ放牧。当時から「抽選確率がどうなるかはわかりませんが、この後はぶっつけで阪神JFに登録します」と池添学調教師はすでに覚悟を決めていた。
良血ソシアルクラブの阪神JF挑戦――。言葉にするのは簡単だが、そこまでの過程には、この血統に関わった人たちのいろんな思いが詰まっているのだ。
もちろん、ゲート入りするには、1勝馬同士の抽選(現時点で12頭中8頭が出走可能)を突破しなければならない。しかし、記者は抽選についてはあまり心配していない。何せ母ブエナビスタは「17分の6」、そして母の半妹ジョワドヴィーヴルも「15分の6」という狭き門をクリアして、いずれも2歳女王に輝いているからだ。
神様は不公平ではない。悪いところが似るなら、こうした“強運”もまた似るに違いない。