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【親子対談】「最高レベルの環境、同じ騎手として羨ましい」坂井英光騎手×坂井瑠星騎手×矢作芳人調教師(後編)

  • 2017年12月15日(金) 18時01分
スペシャル対談

▲(左から)坂井瑠星騎手、坂井英光騎手の初の親子対談


地方競馬の関係者と中央競馬の関係者によるスペシャル対談。第1弾は坂井英光騎手(大井)・坂井瑠星騎手(JRA)親子と、瑠星騎手の師匠で実父が大井の元調教師という矢作芳人調教師(JRA)が登場。先月16日にオーストラリアへの長期遠征に旅立った瑠星騎手。送り出す父の思い、期待を込めた師匠の思い、ふたりの父の思いを背負う瑠星騎手の覚悟とは。(取材・文:赤見千尋)


地方と中央、ウィンウィンの関係であって欲しい


――瑠星騎手がデビューして1年半以上が経過しました。ここまでの評価というのはいかがですか?

矢作 騎手としてはもちろんまだまだですよ。でも真面目だよな。とにかく競馬に対して真面目なので、そういう点は評価している。センスもあると思っているし。

瑠星 ありがとうございます。

英光 最初の頃はかなり心配な面があったけど、今は応援しているいちファンのような目線で見ているかな。もちろん同じ商売だから、技術的なことだったり、あそこは上手く乗れたな、下手に乗ったなということは思うけど、気持ちとしてはファンと同じだと思ってます。

――デビューしてからすぐにケガもしましたが、ご自身でも経験があるだけに心配ではないですか?

英光 もちろん落馬した時はヒヤッとしますけど、この商売をしていると骨折ならまだ良かったなと思えるので。意識がないとか、そういうのが一番怖いですから。JRAさんからもすぐ連絡が来て、何分置きかっていうくらいに、「今こういう状況です」って言う風に教えてくれるんですよ。

矢作 へぇ、そうなんだ。

英光 だからそこら辺はね、骨が折れたのは仕方ないなという気持ちでした。僕よりも、先生の立場は難しいんじゃないかと思います。今の時代は師弟関係というのもあんまりないですから。

矢作 それは本人の気持ち次第でしょう。僕は悪く言えばウェットで、昔風の考え方だけど、本来師弟というのはそういうものだと思っている。ドライっていうのは責任を持たないっていう逃げ道だと思うから。自分としてはそんなに変わったことをしているつもりはないし、僕は僕のやり方でやっているだけ。それが今の感覚で言えば古いんだと思う。

スペシャル対談

▲矢作「僕は悪く言えばウェットで、昔風の考え方だけど、本来師弟というのはそういうものだと」


英光 めちゃくちゃ感謝してます。

瑠星 本当にありがたい環境だと自覚してます。それに、オーストラリアへの長期遠征(11月16日出発)にも行かせてもらえることになって、他の人が経験できないことをやらせていただいてます。

矢作 海外にはデビューする時から「行かせるぞ」と言っていて、本人も「行きたい」という話だったから。僕も世界の競馬プラス地方競馬も知っていて、そういう中でJRAのジョッキーは世界一恵まれた環境じゃないかなと。厳しい環境に身を置かないと、今の自分のありがたさがわからないと思う。なんで地方出身、外国人ジョッキーにこれだけやられるかっていうのはそこの差だと思っているから、そこを瑠星に経験して欲しい。

瑠星 今はいよいよ行けるなという楽しみと、不安と半々です。

矢作 でも英語が下手なんだよね。ずいぶん早くから用意周到に計画して英語を習わせているのに、全然上手くならないから(笑)。昨日も怒ったんだけど、今日の打ち合わせのことも僕が英語でしゃべっても全然理解してない。

瑠星 半分くらいはわかりました…。

英光 実はコイツがジョッキーを目指し始めた時に英語を習わせようと思ったんですよ。でも一回行ったら、これじゃ上達しないなって感じで。その時は毎日乗馬もやっていたし、中途半端になるからって止めたんです。

矢作 海外で乗るためにはそこが肝なんで、英語が話せるかどうかっていうのは大事なことだから。

瑠星 難しいですけど、できないとやっていけないのでがんばります!

矢作 瑠星には世界に通用するジョッキーになって欲しいと常々言っていて、今回の遠征もそうだけど、向こうでオファーが多すぎて、香港、あるいは欧米にステップアップして、帰ってこないくらいのレベルを考えていて。ただ単に、半年勉強に行って来ますという感じで送り出すつもりはないから。

瑠星 もちろんそうなりたいですし、ならないといけないなと思っています。

スペシャル対談

▲瑠星「“世界に通用するジョッキーに”そうなりたいですし、ならないといけない」


英光 親としては、海外遠征に関して不安はまったくないですね。そこはコイツの人生だから、失敗しようが成功しようがどちらにしろいい経験になる。そんな経験をさせてもらえることがもう感謝しかないですし、ジョッキーとして最高レベルの環境ですから正直羨ましいです。

矢作 これからのスポーツは、世界で戦ってどれだけ結果を出せるかという、それでこそ評価される時代だから。JRAに限らず、地方も海外もすべてに通用するジョッキーになって欲しい。

――では最後に、現在中央と地方の連携が進んでいますが、その辺りはどう感じていらっしゃいますか?

矢作 僕は地方競馬にいたからこそ、地方も中央も良さと悪さがわかる。今こういうシステムである以上、お互いがウィンウィンの関係であって欲しいですね。今売り上げ的にはそういう方向に向いていると思います。特に今年は28日に中央があって翌日が東京大賞典なので、我々JRAの人間も一緒になって盛り上げたいですね。その手助けが何か少しでもできればと思っています。

英光 今大井でもJRAの馬券を売っているし、お互いに協力して盛り上げていきたいですね。力を合わせてやっていけたら嬉しいです。

スペシャル対談

▲英光「お互いに協力して盛り上げていきたいし、力を合わせてやっていけたら嬉しい」


矢作 大井競馬場でいえば、都心からこれだけ近くて、アクセスもよくて、ナイターもやってるという、世界的に見てもなかなかこんな競馬場はない。たまにプライベートで来て遊ぶんですけど、頭数も揃っていて面白いですよね。

英光 先生がパドックにいる時のオーラがはんぱないですよ(笑)。

矢作 あ、気づいてる(笑)? 今年、大井の馬券が調子いいんだよね。昔とは客層が変わってお客さんの人数も増えたし、場内にいるとファンの方々が社交場として楽しんでいる姿が見られるんです。会社の若い子たちを連れて、一杯飲みながら馬券を楽しんでいる方を見ると、「俺も仲間に入れてよ」と思いますね(笑)。年末年始はぜひ競馬場で楽しんでいただけたら嬉しいです。

(文中敬称略、了)

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