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【フィナーレ】最後の大忘年会!(2)『自身の成長に一役買ってくれた馬 ―国分兄弟編』

  • 2017年12月13日(水) 18時01分
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▲今週は国分兄弟(左・恭介騎手、右・優作騎手)の「自身の成長に一役買ってくれた馬」をお届けします


6年間の連載に終止符を打つこととなった『キシュトーーク!』。フィナーレ企画「最後の大忘年会」、今回のテーマは「ジョッキーとしての成長に一役買ってくれた馬」です。国分優作騎手、恭介騎手兄弟が、思い出の馬をピックアップ。“ジョッキー”という仕事の喜びと苦しみの両方を、命をかけて伝えてくれた一頭とは。(取材・文:不破由妃子)

※高倉騎手は都合により欠席のため、個別取材を行いました。その様子は後日掲載させていただきます。



(前回のつづき)

こんな馬に乗せてくれる先生の気持ちを、受け止めなくちゃいけない


──この6年間で、人も馬もたくさんの出会いがあったかと思いますが、なかでも自分に転機をもたらした馬、たくさんのことを学ばせてくれた馬など、ジョッキーとしての成長に一役買ってくれた馬について、思い出を語ってください。

恭介 どの馬からも勉強させてもらっていますが、僕にとって転機になった馬というとテイエムオーロラとアグネスワルツですね。

川須 テイエムオーロラで2年目に重賞(府中牝馬S)を勝ったんですものね。

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▲▼恭介騎手の初重賞勝利となった府中牝馬S(撮影:下野雄規)


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恭介 うん。本当は騎手デビューの日に乗る予定だったんだけど、ケガで乗れなかったんだよね(調教中のケガにより、同期より1週間遅れてのデビュー)。

松山 そうだったんや。その馬で重賞を勝つなんて、縁を感じるよね。

恭介 そうだね。それに、2歳馬がデビューするときって追い切り映像が流れるでしょ? オーロラの場合、その撮影の日にも俺が乗ってた。最初はそこまで印象に残る馬ではなかったんだけど、4歳の3月の骨折明けから乗せてもらって3連勝して、その流れで府中牝馬Sを勝って。

優作 恭介が重賞を勝ったときは衝撃だったなぁ。まだ俺が美浦に所属している頃で、俺もその日、東京で乗ってたんだよね。当時、東京ではまだ勝ったことがなかったから、「お前は東京で勝ったことがないのに、弟は重賞を勝ったぞ」ってめっちゃ言われたもん(苦笑)。

恭介 オーロラって、未勝利、500万は芝1200mで勝ったんだよね。それが芝1800mとか2000mの重賞で勝ち負けするまでになってさ。こういう成長を見せる馬もいるんだなぁって、すごく勉強になった。でも、最後はレース中(2010年・愛知杯)に亡くなってしまって…。

松山 そうだったね…。

恭介 責任をすごく感じたし、もう喪失感しかなかったね。自分が入りたくて入った世界だけど、そんなふうに大好きな馬を死なせてしまう職業って一体なんなんだ…って、当時はすごく悩んだし、しばらく精神的にしんどかった。で、そこから救ってくれたのがアグネスワルツで。

松山 オーロラで重賞を勝つ以前に、恭介が初めて特別(2009年11月29日・白菊賞)を勝った馬だよね?

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▲苦しみのどん底から救ってくれたアグネスワルツ(白菊賞優勝時、(C)netkeiba.com)


恭介 そうそう。デビュー戦から乗せてもらった馬でね。初戦はダートだったんだけど、「絶対に芝がいいと思います」って言ったら2戦目で芝を使ってくれて、そこをレコードで勝ったんだよね。その後、特別を勝ったあとに骨折してしまって4月に復帰したんだけど、次はGIを目指すからということで乗り替わりになって…。そこからしばらくは乗ってなかったんだけど、5歳の4月からまた乗せてもらうようになってね。そこからは重賞もたくさん乗せてもらったなぁ。

川須 たしか重賞でも2着がありましたよね。

恭介 うん、マーメイドS(2013年)ね。馬主さんの理解があってのことだけど、一度手が離れてまた戻ってきて、何度も重賞で一緒に戦わせてもらって…。ワルツとは本当に長い付き合いをさせてもらった。何よりオーロラで失った自信を取り戻すことができたし、こういう縁もあるんだなぁって。

──レースで乗っていないときも、馬主さんはずっと恭介ジョッキーのことを見ていてくださったんでしょうね。

恭介 かもしれません。「恭介だったら乗せていい」と言ってくださったみたいで。うれしかったですね。僕にとって、ワルツとの出会いと戦いは、転機というより財産だと思ってます。

優作 騎手冥利に尽きるよね。そういう意味では、僕はトウショウカズンかな。領家厩舎の馬で、先生が「勝つまで乗っていいよ」って言ってくださって。実際、トウショウカズンで初めて特別を勝たせてもらったんだよね。

──500万から1600万まで3連勝したんですよね。

優作 はい。なんかこう…、そこまで任せていただける経験がなかったので、こんな大事な馬を僕なんかに預けてくださる先生もいるんだなって。ありがたかったと同時に、ある意味、僕にとっては衝撃的でしたね。

恭介 転機といえば、ワンアンドオンリーもだろ?

優作 そうだね。新馬から萩Sまで4戦乗ったけど、東スポ杯から乗り替わりになってしまって…。いやぁ、悔しかったな。具合がいいって聞いていたし、重賞でも十分チャンスがあると思っていたから。もうその悔しさをバネにするしかなかったよね。

松山 あと、優作でいうとティーハーフとか。

川須 サドンストームも!

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▲彦根S優勝時のティーハーフ、この直後に函館SSで自身2度目の重賞制覇 (C)netkeiba.com


優作 その2頭に関しては、西浦先生との出会いがすべてだよね。サドンストームは新馬戦(2着)から乗せてもらって、そのあとずっと乗れなかったんだけど、重賞で互角に戦える馬になったところでまた戻ってきて。それがすごくうれしかったし、ありがたかった。ティーハーフは最初からユタカさんで、重賞やGIでもいい勝負をしていた馬で。そんな有力馬を任せてもらえて、素直に自信になったよ。だから、馬というより、西浦先生という人とのつながりのほうが大きいかな。今もそうだけど、先生の気持ちが本当にありがたかったから。

川須 人とのつながりがあって、初めて馬との出会いがあるんですもんね。なんかわかります。

優作 うん。こんなにいい馬に乗せてくれる先生の気持ちを、ちゃんと受け止めなくちゃいけない。その期待に応えなくちゃって、常に思ってるんだけどね。

(次回へつづく)

元祖「キシュトーーク」のレギュラー陣、国分恭介、国分優作、松山弘平、川須栄彦、高倉稜を中心に、栗東・美浦・地方からも幅広く、これからの競馬界を担うU25の若手ジョッキーたちが登場します!

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