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JRAの「生産牧場賞」「繁殖牝馬所有者賞」の交付基準発表

  • 2017年12月20日(水) 18時00分
全国馬名簿



「下に厚く上に薄い傾向」に現場の反応は…


 このほどJRAの来年度の生産牧場賞、繁殖牝馬所有者賞の交付基準が発表された。生産者賞関連は総額で45億7600万円。前年より6200万円、率にして1.4%の増額である。

 まず、生産牧場賞について。これは当該馬を生産した国内の生産者に交付され、G1競走の1着で100万円、2着で40万円、以下、3着25万円、4着15万円、5着10万円。この2着以下の交付割合はレース賞金に準じており、以下、どの項目も同じ扱いとなる。

 続いてG1以外の重賞競走。G2、G3の区別はなく、一律同じ金額で、1着65万円、2着45万円、3着16万円、4着10万円、5着7万円となっている。

 重賞競走以外の特別競走もまた、500万下からオープン特別まで一律の基準で、1着45万円、2着18万円、3着11万円、4着7万円、5着5万円。5着まで交付されるのは、特別競走以上に限定されており、一般競走は次の通り、1着〜3着までの交付だ。

 まず1勝以上の平場戦での生産牧場賞。1着38万円、2着15万円、3着10万円。さらに新馬戦、未勝利戦では、1着34万円、2着14万円、3着10万円である。

 ここまでは昨年と同額のまま据え置かれており、変更はない。

 次に生産牧場賞とは別に交付される繁殖牝馬所有者賞について。これは、当該馬が生まれた時に繁殖牝馬(母馬)を所有していた生産者もしくは馬主(中央競馬にて馬主資格を有することが条件)に交付されるもので、G1競走で、1着130万円、2着52万円、3着33万円、4着20万円、5着13万円と、生産牧場賞よりはいくぶん交付額が多い。

 G1以外の重賞競走では、1着80万円、2着32万円、3着20万円、4着12万円、5着8万円である。

 また重賞競走以外の特別競走については、1着45万円、2着18万円、3着11万円、4着7万円、5着5万円と、ここで生産牧場賞と同じ交付金額に並ぶ。

 なお、5着まで交付されるのが特別競走以上に限られているのは、生産牧場賞と同様で、一般競走においては3着までしか交付されない。1勝以上の平場戦で1着40万円、2着16万円、3着10万円。この1着と2着部分が微増になった。

 また、新馬、未勝利戦においても、1着36万円が微増になり、2着14万円、3着9万円は変化がない。

 以上、ざっと紹介してきたが、相対的には、下に厚く、上に薄い傾向が強い。未勝利戦をようやく勝った馬と、日本ダービーや天皇賞馬、JC優勝馬などでは、実力や知名度、人気度において雲泥の差があるはずだが、上記の交付基準では、それほど格差がない。未勝利戦でも生産牧場賞と繁殖牝馬所有者賞を合わせると70万円が交付されるが、一方、日本ダービーを制しても、230万円(100万円+130万円)。この差はわずか3倍強である。

 とはいえ、4兆円を売っていた時代からすでに20年も経ち、それ以後、JRAの馬券売り上げは年々下降線を辿ってきた。2011年には2兆2935億円まで減少したが、その後2012年よりやや盛り返し、それ以降は年々前年実績を上回ってきている。

 しかし、生産牧場賞や繁殖牝馬所有者賞は、概ねJRAの馬券売り上げ推移によって交付金額が決定されるので、現状では多くを望めないのかも知れない。

 牧場によっては「重賞競走以上の交付金額があまりにも少ない」と不満を漏らす向きもある。特に有力馬を生産している牧場ほどそうした意見が根強くある。

 だが、日高の圧倒的多数を占める中小牧場にとっては「下に厚い現行の交付基準は、むしろありがたい」と概ね肯定的だ。「G1なんてほとんど画餅に等しいのだから、いくら交付されようがほとんど関係ない。だいいち出走にこぎ着けることすら難しいので、むしろ、新馬や未勝利戦、1勝以上の平場条件戦の交付基準を充実してもらった方がより現実的だ」と口にする。限られた予算をどう配分するかについては様々な意見があるだろうが、現状では、生産を下支えする中小牧場に配慮した交付基準になっているとは言えるだろう。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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