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地方馬がGI/JpnIで活躍する時代が来る!?

  • 2018年01月23日(火) 18時00分


◆フリオーソの引退以降、久しぶりに地方馬が目立つ年に

 先週のことになるが、地方競馬の年度表彰である『NARグランプリ2017』の表彰馬・表彰者が発表された。

 年度代表馬は、JpnIを勝ったヒガシウィルウィン(ジャパンダートダービー)かララベル(JBCレディスクラシック)かという争いで、ヒガシウィルウィンとなった。個人的には、東京ダービーとの南関東二冠制覇に加えて、古馬と対戦したJpnIIの浦和記念で2着という成績でヒガシウィルウィンかと思い、そのとおりにはなったのだが、選定委員12名で7対5という接戦だった。やはり地方で行われるJpnIの中でもJBCは別格で、その歴史の中でも史上2頭目の勝ち馬となったララベルはそれなりの評価がされて当然のことと思う。

 近年は地方馬がGI/JpnIを勝つこと自体が難しくなっており、しかしGI/JpnIを勝ったからといって2頭ともが年度代表馬ということはありえず、どちらか一方は年度代表馬になれないということでは、選ばれなかったほうの関係者はちょっとかわいそう、ということは表彰馬が発表される前から思っていた。

 地方馬がGI/JpnIを勝ったのは、2013年にハッピースプリントが全日本2歳優駿を勝って以来4年ぶりのこと。3歳以上のGI/JpnI勝ちとなると、2011年のかしわ記念を制したフリオーソ以来、じつに6年ぶりのことだった。

 そして1年のうちに複数の地方馬がGI/JpnIを勝ったのはいつ以来のことだろう、と思い調べてみたところ、これは2010年以来7年ぶり。その年、GI/JpnI馬になっても年度代表馬になれなかったのはジャパンダートダービーを制したマグニフィカで、年度代表馬はフリオーソだった。フリオーソの2010年のGI/JpnIタイトルは帝王賞のみだが、川崎記念、かしわ記念、東京大賞典で2着があり、ほかにJpnIIの日本テレビ盃での勝利があり、1年を通じて連対を外したのはダイオライト記念(JpnII・5着)だけという、圧倒的な成績だった。

 とはいうものの、実はそれ以前はGI/JpnIを勝ちながら年度代表馬になれなかった馬は意外にも多かった。

 2007年、JBCスプリントを勝ったフジノウェーブも、やはり年度代表馬にはなっていない。この年はフリオーソがジャパンダートダービーを勝って、3歳ながら古馬と対戦したJBCクラシック、東京大賞典でともに2着という成績があった。

 2006年はフリオーソが全日本2歳優駿を制していたが、年度代表馬はアジュディミツオー。川崎記念、かしわ記念、帝王賞とGI・3勝は圧倒的な活躍だった。

 そしてGI勝ち馬がいたにもかかわらず、GII勝ちまでの馬が年度代表馬になったという、ちょっと不思議にも思えるのが2004年。GIを勝ったのは3歳ながら東京大賞典を制したアジュディミツオー。対してGI勝ちがなくて年度代表馬になったのはコスモバルク。地方の北海道所属ながら中央への挑戦を続け、弥生賞、セントライト記念でGIIを2勝。GIは、皐月賞、ジャパンCで2着があった。コスモバルクには、まず認定厩舎(いわゆる外厩)制度を利用した初年度の活躍馬という目新しさがあり、何よりこの年、日本の競馬全体を盛り上げたのが、地方に所属するコスモバルクだったという貢献度が評価された。

 そうした強い地方馬が複数いて盛り上がっていた時代があったかと思えば、フリオーソが引退して以降、地方馬にはGI/JpnIでなかなか出番がなく厳しい時代が続いてきた。しかし昨年は久しぶりに地方馬の活躍が目立つ年になった。ヒガシウィルウィンとララベルと、2頭がJpnIの勝ち馬になったというだけではない。4歳以上牡馬および短距離馬の部門では、ブルドッグボス、キタサンミカヅキ、トウケイタイガーと、3頭がグレード勝ち馬となり、その部門の最優秀馬は高い次元での選定となった。

 その3頭は、いずれも中央からの移籍馬だ。そうしたグレードを勝てるクラスの馬が地方に移籍してきたということは、馬券の売り上げが好調で、主催者によってはかなり賞金が上がっているところもあり、地方でも十分に稼げるという目算があってのことかもしれない。

 馬券の売り上げが回復し、賞金もアップとなれば、さらに素質の高い馬が地方に入ってくる可能性も大いに考えられる。それは中央からの移籍というだけでなく、ララベルのように地方デビュー馬にも高素質馬が増えてくるかもしれない。そうなれば今後は、2017年以上に地方馬の活躍ということも期待できそうだ。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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