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海外に新天地を求める日本の馬たち

  • 2018年02月01日(木) 12時00分


 ここでクイズ。次に挙げる馬たちに共通していることは何か。

 シーキングザパール
 フサイチゼノン
 フェスティバル

 2頭目まで見て「森厩舎!」と言いそうになった人も、3頭目で「ん!?」と思ったか、正解にたどり着いたのではないか。

 もう少しヒントを。

 ユートピア
 キングストレイル
 ポップロック
 シャドウゲイト

 そう、正解は「現役時代に海外に移籍した日本調教馬」である。

 ここに記した馬たちの移籍先はアメリカ、UAE、アイルランドだったが、ここ数年は、オーストラリアへの移籍が目立つ。

 つい先日も、昨年3月オーストラリアに移籍したブレイブスマッシュ(牡5歳、父トーセンファントム)が、1月26日のG2オーストラリアステークスで復帰するという記事が、当サイトのニュースに掲載されていた。結果は6頭中5着だった。

 ブレイブスマッシュは、美浦・小笠倫弘厩舎に所属していた2015年にサウジアラビアロイヤルカップを勝つなど、日本で13戦2勝。16年のファルコンステークスで2着、17年のオーシャンステークスで4着になるなど、短距離路線で力を見せたが、NHKマイルカップ8着、ダービー18着という数字が示すように、一流と言える成績は残せなかった。

 ところが、オーストラリアに渡ると、2戦目の準重賞で移籍後初勝利を挙げ、移籍4戦目、芝レースとして世界最高賞金のジエベレスト(10月14日、ランドウィック芝1200m)で3着と健闘。3着でも賞金は80万豪ドル(約7000万円)もあったので、この一戦だけで、日本の13戦で獲得した7496万円に近い賞金を稼いでしまった。

 先週のオーストラリアステークスはそれ以来の実戦だったわけだが、まだ若いし、現地で5戦しかしていないので、今後、もうひと花もふた花も咲かせる可能性がある。

 日本からオーストラリアに移籍して活躍する道を切り拓いたのは、ブレイブスマッシュと同じD.ウィアー厩舎にいるトーセンスターダム(牡7歳、父ディープインパクト)だった。

 栗東・池江泰寿厩舎に所属していたトーセンスターダムは、3歳だった2014年、きさらぎ賞、チャレンジカップと重賞を2勝。翌15年春、オーストラリアに遠征し、GIランヴェットステークスで2着に好走。つづくクイーンエリザベスステークスは5着に敗れるも、同国競馬への適性の高さを見せた。

 16年もオーストラリアに遠征し、クイーンエリザベスステークスに出走する予定だったが、調教中に鼻出血を発症したため回避。オーストラリアン・ブラッドストックが権利の半分を購入し、そのまま同国に移籍した。

 移籍初戦は4着だったが、2戦目、2017年2月25日のGIフューチュリティステークスではハナ差の2着となり、7戦目、GIトゥーラックハンデキャップ(10月14日、コーフィールド芝1600m)でオーストラリア初勝利を挙げる。これが同馬にとってGI初制覇であった。さらに、11月11日のエミレーツステークス(フレミントン芝2000m)でGI2勝目を挙げ、新天地で素質を完全に開花させた。

 ブレイブスマッシュとともに、同じ島川隆哉オーナーが所有し、美浦・田村康仁厩舎に所属していたハレルヤボーイ(牡5歳、父トーセンファントム)もオーストラリアに移籍し、2017年9月に11着、10月に4着という成績を残している。

 昨夏、オーストラリアに移籍したアドマイヤデウスは、現地で調教中に故障。複数回の手術を含む治療がつづけられたが、世を去った。

 2015年のラジオNIKKEI賞、2016年の大阪杯などを勝ったアンビシャス(牡6歳、父ディープインパクト)も、2017年9月23日付でJRAの競走馬登録を抹消し、オーストラリアへ移籍した。まだ同国でレースに出ていないが、現地メディアによると、アンソニー・フリードマン厩舎所属となっている。

 また、2015年の京都新聞杯を勝ち、ダービーで2着となったサトノラーゼン(牡6歳、父ディープインパクト)も2017年12月に競走馬登録を抹消。オーストラリアに移籍すると報じられた。

 さらに、JRAで14戦1勝のサクレメジャーが2016年、重賞を2勝したスマートオリオンが2017年にマカオへ移籍するなど、現役馬が海外に新天地を求める動きは活発だ。

 日本の馬が、種牡馬、繁殖牝馬として海を渡るケースは珍しくないが、受け入れる側としては、自分の国で競走馬としての適性を確かめてから引退させたほうが、種付料を高く設定しやすいなどのメリットがあるのかもしれない。それに加え、自国で走ってビッグレースを勝てば、賞金も入るし、宣伝効果も大きくなるしと、一石二鳥にも三鳥にもなる。

 マカオは別として、オーストラリアに移籍した馬たちは、種牡馬としての可能性を見込まれていることは間違いない。

 ブレイブスマッシュの母の父はトウカイテイオーだ。将来、テイオーの血を宿した馬が、オーストラリア代表として日本のGIに出走してくるかもしれないのか。

 夢はひろがる。

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作家。1964年札幌生まれ。Number、優駿、うまレターほかに寄稿。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など多数。netkeiba初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリーシリーズ第6弾『ブリーダーズ・ロマン』。プロフィールイラストはよしだみほ画伯。バナーのポートレート撮影は桂伸也カメラマン。

関連サイト:島田明宏Web事務所

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