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【京都記念】GI馬4頭を完封「今の佑介は“買いたいな”と思わせてくれる」

  • 2018年02月15日(木) 18時01分
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▲11日に1日4勝を挙げる活躍を見せた藤岡佑介騎手 (c)netkeiba.com


今週はクリンチャー×藤岡佑介騎手が勝利した京都記念に注目。今回は哲三氏の佑介騎手に対する “ある思い”から、本人とのエピソードを踏まえ、少し違ったテイストでお届けします。さらに敗戦を喫しながらも目に留まったという川田騎手の“カッコイイ技術”も紹介! (構成:赤見千尋)

佑介とは僕が現役だった頃からよく話をしました


 今週注目したのは京都記念です。4番人気のクリンチャーが直線真ん中から力強く伸びて勝利!このコラムで何度も取り上げている(藤岡)佑介の騎乗も素晴らしかったです。

 レースの中でファインプレーだなと感じるところは随所にあったし、僕が「上手いな」「それだと勝ちやすいな」という箇所が大まかに2点ありました。ただ、せっかくここまで努力して築き上げて来たので、佑介がGIを勝つまでは詳しくご説明するのは控えようと思います。このコラムは嬉しいことに、たくさんのジョッキーたちが読んでくれているので、僕が細かく解説したことでその部分を突かれてもイヤですし。

 佑介がGIを勝った時、喜びのコメントと共にお伝えできれば嬉しいなと思っています。なので、今週はいつもとは少し違ったテイストでお届けします。

 佑介とは僕が現役だった頃からよく話をしましたし、以前の対談でも「アーネストリーの宝塚記念のような競馬を理想としている」と言ってくれて、乗り方的に目指すところが近いなと感じていました。

 僕が教えたというわけではないけれど、「アーネストリーが理想ならばこういう感じだよ」という話はしていて、その中でポイントポイントをしっかり自分の物にしているんじゃないかと思います。

 ただし、先週も言いましたが、ここまで来るのには長い年月が掛かりました。僕自身もアーネストリーで結果を出せたからと言って、その時に完璧だったわけではなくて、実は怪我をするちょっと前くらいに、自分の乗り方の中で「これだ!」という発見をしたんです。

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▲哲三氏とのコンビで11年宝塚記念を制したアーネストリー (c)netkeiba.com


 佑介もいろいろ考え込む時期があって、環境を変えるためにフランスへ行ったり、試行錯誤をしていました。それが今は理想の形になりつつあって、僕が考えている発見を今の佑介はできているかなと。佑介が「こういう走りをして欲しい」ということを馬にしっかり伝える方法ができていると思います。

 もちろん馬乗りは人それぞれで、僕の理想とは違う理想があって当然です。抑えながら終いで切れる脚を使うことを追求したいジョッキーもいるでしょうし、また別の考え方もあります。ただその中で、僕の理想はアーネストリーのような乗り方、競馬を作ることであり、佑介もそれを理想として追求していきたいと言っていて、今近づいてきているんじゃないかなと。あとはGIを勝つという結果だけですね。

 中距離戦を勝つ上で一番大事にしていたことがあって、レースの組み立て方で勝ちやすい、前に行きやすい方法というのがあるんですけど、そういう部分を随分手の内に入れて、財産として活かしているなと感じます。

 例えばレースを見ていて、「ここに居たら勝ちやすいよな」というところにちゃんといるんです。思った通りにならないことの方が多い競馬の中で、京都の中距離に関しては、ほぼほぼパーフェクトでそこに居る。

 まず、その「勝ちやすいポジションに居る」ということが重要で、さらに細かい部分を大事にしながらレースを組み立てている。まだ佑介にとっての理想の形が完成したわけではないと思うけれど、今の佑介は「買いたいな」と思わせてくれる信頼感があります。

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▲「今の佑介は“買いたいな”と思わせてくれる信頼感がある」 (c)netkeiba.com


 実際、レースを見ていて楽しいんですよね。「今回はどういう乗り方をするのかな」ってワクワクさせてくれる。前にも話しましたが、レース自体の興奮はもちろん、その前後でいろいろと想像を掻き立ててくれるジョッキーの方が面白いので。

 ここまで佑介のことを誉めて来ましたが、まだGIを勝っていないし、言い過ぎてもいけないのでこの辺にしておきます。今の結果というのは次のステップに行くための通過点であって、本人も満足はしていないんじゃないですかね。GIというところを目指して自分なりに考えながら騎乗技術を追求している段階だと思うので、ファンの方にもそういう目で応援していただけたらなと思っています。

川田君のゲートが“カッコイイ!”


 もう一人、「お!」と思ったのが川田(将雅)君です。特に日曜日の10レース、アドマイヤロブソンのゲートの出し方はカッコ良かった! 結果的には2着に負けてしまったけれど、馬と一体になっているし、見た目がもうカッコいいんですよ。

■2月11日 松籟S(7番:アドマイヤロブソン)

 なかなかあんなにキレイに切れることはないんですけど、馬の体幹にしっかり合わせてゲートが切れている。馬が一歩出る時のタイミングに騎手が合わせて行くんですけど、フォームもキレイだったし、土台(アブミの踏み方など騎手自身の根幹)の部分もしっかりしていました。

 もともと高い技術があって、結果も出しているジョッキーですから、馬とのリズムが合いやすい体になってきたとなれば、これまで以上に結果に繋がるのではないでしょうか。

今週の注目コンビ


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▲ダート界の最注目コンビが満を持してGI獲りへ (c)netkeiba.com


 今週注目のレース&騎手は、フェブラリーSのテイエムジンソクと古川(吉洋)君です。あまりプレッシャーを掛けたくないけれど、やっぱり頑張って欲しいですね。

 先週も古川君について触れましたが、馬の邪魔をしないというのは何なのかというのがしっかりできているし、馬が走りやすいように、でも圧を掛けながら乗れているのがいいなと思います。このコンビにはずっと注目して来たし、ぜひGIを勝って欲しいので応援しています。

(文中敬称略)

1970年9月17日生まれ。1989年に騎手デビューを果たし、以降はJRA・地方問わずに活躍。2014年に引退し、競馬解説者に転身。通算勝利数は954勝、うちGI勝利は11勝(ともに地方含む)。

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