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適性の高さを示したウインブライト、渋いタイプに成長するだろう/中山記念

  • 2018年02月26日(月) 18時00分


◆もう一歩の成績でも、悲観するにはあたらない始動戦

 昨2017年の勝ち馬ネオリアリズムは、そのあと香港のクイーンエリザベスII世Cへ(1着)。2着サクラアンプルールと、4着アンビシャスはGIになった大阪杯へ(13着と、5着)。5着ヴィブロスもドバイへ遠征し、ドバイターフ(1着)。

 2010年あたりから、ドバイへ遠征する馬、香港に狙いを定める馬、大阪杯2000mに向かう馬、春の福島(新潟)に目標を絞る馬…など、多くの中距離タイプにとって1800mの中山記念は春シーズンの始動レースに置かれることが多くなってきた。

 今年92回を数える伝統の「中山記念」の評価が決して下がったわけではなく、春の大きな目標に挑戦するためには、あまり大きな負担のかからないGII中山記念1800mは、うまく勝つことができるなら名誉と古馬GII戦にふさわしい賞金を獲得できる。しかし、仮にもう一歩の成績にとどまっても、このあとに向けての絶好のステップレースにできるなら、決して悲観するにはあたらない始動戦。たしかに以前より少し異なる色彩のレースに変化しているものの、出走馬のレベルはむしろ上がっている。

 そういう各陣営の思惑を考慮しつつ、中山コースこそベストに近い馬、かつ、距離1800mこそもっとも持ち味の生きる馬を主軸に選ばなければならないレースなのだろう。この時期に多く組まれている3歳馬のステップ(トライアル)レースとは異なり、特徴や力量のかなりはっきりしているトップクラスの古馬の対戦だから、ランク付けよりは、コース適性、距離適性のほうが重要という視点に立つべきであり、もともとスペシャリスト大活躍とされてきた中山記念は、以前より一段と適性重視の1戦になったともいえる。

 1分47秒6の勝ち時計は昨17年とまったく同じだが、昨年の先導馬のペースは「37秒4-50秒3-(11秒1)-46秒2-34秒6」。今年は「36秒2-47秒7-(11秒5)-48秒4-36秒6」であり、前半1000m通過は昨年の「61秒4」に対し、今年は「59秒2」だった。ただ、ハイペースのわりに時計が速くならなかったのは理由があり、この冬は天候不順が多かったためか、Aコースの内寄りの芝の生育が遅れている。表面上の全体時計は同じでも、昨年と比べずっと厳しいレースだったかもしれない。

重賞レース回顧

中山がベスト、1800mこそ最高であることを示したウインブライト(撮影:下野雄規)


 昨年の勝ち馬ネオリアリズムの上がりは「34秒3」。今年のウインブライト(父ステイゴールド)のそれは「34秒9」であり、今年のレースの前後半バランスは離して飛ばしたマルターズアポジー(父ゴスホークケン)と、アエロリット(父クロフネ)がいたため、スローの昨年とは流れはまったく逆だが、勝ち馬のいた位置は、前半1000m通過地点で昨年は「61秒7前後」、今年は「61秒1前後」。1000m通過の先頭馬のペースは2秒以上も違っても、勝ち馬の位置にそれほど大きな差はなかった。

 昨年末までのネオリアリズムの右回り1800〜2000m成績は通算【5-1-2-3】。ウインブライトの右回り1800〜2000mはこれで【4-1-0-2】となった。父が同じサンデーサイレンス直仔というだけでなく、レース運びも同じような好位抜け出しタイプであり、現在のランキングはともかく、距離適性もコース適性も非常によく似ている。中山こそベスト、また距離1800mこそ最高であることを示したのがウインブライトだった。皐月賞2000mで8着にとどまった当時より明らかにパワーアップしている。身体がそう大きくないのは父ステイゴールド譲りであり、まだ4歳春。さらに渋いタイプに成長するだろう。

 同じ芦毛のアエロリットは、またひと回り大きくなって504キロ(プラス18キロ)。マルターズアポジーの飛ばした前出の流れを強気に追走したため、ウインブライトに捕まった直線の中ほどでは脚いろが鈍り、自分の形になったマルターズアポジーを捕まえられないのではないかと映ったが、最後に交わしたあたりがまだまだ強くなる4歳馬の強みと、GI馬の底力か。これで中山の芝は【0-3-0-0】。通算【2-1-0-0】の東京に比べるとどうも反応に時間がかかるとされるが、バテているわけでないから素晴らしい。

 このあとは、1分32秒3でNHKマイルCを快勝した東京コースのヴィクトリアマイルに直行する予定とされる。勝ち負け必至である。

 6歳マルターズアポジーは、逃げ一手なので失速することも珍しくないが、通算【8-1-4-12】。3着はあっても、めったに2着はないという不思議な成績を残し、今回の3着も自身の特徴どおりだった。このペースで飛ばして寸前まで粘り、かつ、自分の特質どおりだから見事なものである。マルターズアポジーの的中馬券の種類は限られる。1着狙いか、3着狙いしかない。

 人気上位のヴィブロス(父ディープインパクト)は、前半からハイペースの流れにリズムを作れず8着止まりだが、昨年の中山記念も同じような休み明けで1分47秒9の5着。今年は1分48秒1だが、これは馬場差もありむしろ昨年以上に走っていると考えることもできる。次走は連覇を目ざすドバイターフ(昨年は1分50秒2で1着)。快速系というタイプではないので、昨年と同様の快走がありえる。

 同じような時計という観点では、昨年1分47秒7で2着だったサクラアンプルール(父キングカメハメハ)は、ゴール寸前で鈍った印象は良くないものの、自身の走破タイム1分47秒8は、少しタフな芝コンディションを考慮すれば昨年以上だろう。凡走ではなく、この馬には息の入れにくい1800mは少し短いのかもしれない。4歳以降の4勝中3勝が2000mである。

 1番人気で5着にとどまったペルシアンナイト(父ハービンジャー)は、休み明けでもキリッと締まった馬体で決して仕上がりは悪くなかった。ここまで1600〜1800mで全4勝を記録しているが、どうも時計の裏付けがない記録からみて、実際には2000〜2400m級向きではないのだろうか。また、この日、M.デムーロ騎手は【0-0-0-6】。

 ビッグレースに強く、また、まとめ勝ちの多い騎手だが、まったくミルコとは思えない日があることも知れ渡っている。残念ながら、この日は全然の1日だった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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