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ダノンプレミアムは文句なしの牡馬クラシック候補NO.1/弥生賞

  • 2018年03月05日(月) 18時00分


◆しかし皐月賞は、結果が今回と同じとは限らない

 断然の1番人気に応えてダノンプレミアム(父ディープインパクト)が4戦4勝となり、皐月賞→日本ダービーと続く春の牡馬クラシックの文句なしの候補NO.1となった。

重賞レース回顧

牡馬クラシックの文句なしの候補NO.1となったダノンプレミアム(撮影:下野雄規)


 弥生賞の勝ち馬として、「無敗の4勝以上馬」となったのは、

1965年キーストン…6戦6勝
1972年ロングエース…5戦5勝
1973年ハイセイコー…7戦7勝(公営通算)
1984年シンボリルドルフ…4戦4勝
1986年ダイシンフブキ…5戦5勝
1995年フジキセキ…4戦4勝
2009年ロジユニヴァース…4戦4勝
☆2018年ダノンプレミアム…4戦4勝

 弥生賞史上(第1回は1964年)、これで8頭目となった。

 では、4戦以上不敗でクラシックに向かうことになった過去7頭の弥生賞馬の本番の成績はどうだったか。「14着、3着、1着、1着、7着、不出走、14着」。なんと通算【2-0-1-3】にとどまる。連勝をつづけることができたのはハイセイコーと、シンボリルドルフだけ。思わぬ惨敗を喫した馬までいるから、本番は甘くない。

 ただし、近年の弥生賞は皐月賞トライアルというより、もっと大きな目標の日本ダービーと結びつくことで知られる。前出7頭の日本ダービーの成績は「1着、1着、3着、1着、不出走、不出走、1着」。実に【4-0-1-0】である。

 弥生賞を完勝した直後のインタビューで、川田騎手をはじめとする陣営が「このまま無事に…」と、こだわるように繰り返したのはそれを承知だからである。もうすっかりクラシックの常連となった川田騎手が、あまり芝状態の良くない内寄りを避け、大事に中央に出し、勝利を確信したあとは軽く気合をつけるだけにとどめたのもそういう理由である。ノーステッキというよりムチを持っていたように見えなかった。

 皐月賞の案外な成績は、年によってほかにチャンピオン候補が何頭もいての結果なので、一連のステップレース好走馬との比較になるが、東京スポ杯のワグネリアンを完封したこと。GIホープフルS2着(0秒2差)のジャンダルム(父キトゥンズジョイ)、4着(0秒6差)のサンリヴァル(父ルーラーシップ)には、差は同じような「3着〜4着」でも、必死の相手に対しダノンプレミアムはほぼ馬なりだった。

 タイムフライヤー、グレイル、ジェネラーレウーノ、オウケンムーン…など、未対戦の侮りがたいライバルはいても、ダノンプレミアム有利の勢力図は強固だろう。

 少し行く気になりがちなくらいで、現時点ではとくに課題はないとされ、母の父インティカブ(その父レッドランサム)はややマイラー型に近いが、日本ではエ女王杯2連覇スノーフェアリーの父であり、母の父としてはサトノラーゼンや、凱旋門賞馬ファウンドで知られる。牝系ファミリー全体の特徴からして2400mまでならまず心配ない。

 今回、自身の2000m2分01秒0の中身は「推定62秒3-58秒7(上がり34秒1)」だった。本番の皐月賞はここ3年連続して「1分57秒8〜1分58秒2」の高速決着であり、芝の生育もう一歩の今年、少し時計がかかっても1分59秒前後か。今回の後半のラップからみて、時計を2秒前後短縮するなどたやすいと思える。

 とはいえ、同条件の弥生賞で無敗の4連勝以上を記録したエースでさえ【2-0-1-3】にとどまってきたのが皐月賞である。かつて、レベルの低い時代は「完成度の高いスピード型有利」などと多分に勘違いの形容が通用したが、皐月賞は、米3冠の頂点ケンタッキーダービーと同じ位置にあること。かつ、快時計の決着なので、ときには2400mの日本ダービーよりきびしい中身になるのがふつうである。だから、世代の最強馬は皐月賞馬であることも珍しくない。ライバルは、この点で逆転を狙いたい。

 3戦3勝だったワグネリアン(父ディープインパクト)は、完敗の2着は事実でも、位置取りとペースを考えると、同馬の2分01秒2は、推定「63秒3-57秒9(上がり33秒7)」であり、最少に見積もっても前後半の1000mの差は「5秒0」以上もあった。

 見た目と違って勝ったダノンプレミアムの前後半にも「3秒6」の差がある著しい後傾バランスだったが、とくにワグネリアンのそれは、前半は弱い未勝利戦、後半だけオープンのスプリント戦である。これが、位置取りや本番のペースの違いで、皐月賞のダノンプレミアムも、ワグネリアンも前半1000m通過「61秒0」くらい(過去3年の勝ち馬アルアイン、ディーマジェスティ、ドゥラメンテはだいたいその前後)になると仮定するなら、結果が今回と同じとは限らない。ダノンプレミアムがもっと差をつけて勝つシーンもあれば、2頭にはまったく差の生じない可能性も、逆転もありえる。

 弥生賞の勝ち馬の皐月賞成績は【11-5-9-22】にとどまる。ところが、日本ダービーでは【15-4-5-15】となる。皐月賞トライアル弥生賞の勝ち馬は、意外なほど、本番では芳しくない不思議が知られる。

 ワグネリアンのように弥生賞を負けて、本番の皐月賞を勝った馬がまったく同数の「11頭」存在するのが、本番こそがきびしいクラシックの歴史である。当然ながら11頭のうち10頭までが、弥生賞はあと一歩の「2〜3着」。残る1頭も4着だった。

 ダノンプレミアム(今回498キロ)と、ワグネリアン(今回450キロ)の父ディープインパクトは、皐月賞トライアル弥生賞の馬体重は446キロ、本番は444キロだった。ワグネリアンが小型でちょっと頼りなく映るのは父譲りなので仕方がない。レースが近づくほどに内面の気の強さを出すので、ワグネリアンはおそらく馬体重増はないと思える。なんとなく、醸し出す雰囲気や身体の印象が似ているのはワグネリアンか。

 しかし、後世に父系をつなぐ優れた種牡馬は、もちろん優秀な自身に似た産駒を多く輩出するときに成功ではあるが、たとえばディープインパクトが自分に似た産駒を山のように送っても、それがミニ・ディープばかりでは見せかけの成功にすぎない。自分を超える産駒を送ってこそ、さらにはあまり似ていない体型や距離適性をもつ産駒を活躍させたときにこそ、本当の名種牡馬となる。実際、歴史の大種牡馬はみんなそうである。

 ワグネリアンはなんとなく父に似ているところが長所か。一方、ダノンプレミアムは、目のつけどころが難しいが、あまり似ている感じがしないのが最大の長所と思える。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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