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【初勝利一番乗り】西村淳也騎手(2)『兄の担当馬で勝つことが何よりの親孝行に』

  • 2018年04月23日(月) 12時01分
おじゃ馬します!

▲競馬学校時代の同期3名、左から服部寿希騎手、西村淳也騎手、山田敬士騎手


4月14日の福島6Rで同期の山田敬士騎手(美浦・小桧山悟厩舎)が初勝利(イペルラーニオ、栗東・矢作芳人厩舎)。もう1名の同期・服部寿希騎手(栗東・湯窪幸雄厩舎)も2着3着に食いこみ、3名の同期それぞれが奮闘中。今週は西村騎手が騎手を目指したきっかけと、同期3名の関係性に迫ります。競馬学校で苦楽を共にした仲間であり、デビューしてからはライバルとしての色合いも強まります。西村騎手が同期に対して抱いている思いとは。(取材:東奈緒美)


同期といるときは「イジられキャラ」です(笑)


 ここからは、西村騎手のパーソナルな部分に迫っていきたいと思います。まずは、騎手を目指したきっかけを教えてください。

西村 6つ上の兄がいるんですけど、その兄が突然騎手試験を受けたんです。その時点で僕は“騎手”という職業すらよくわかっていなかったんですけどね。結局、騎手試験には落ちてしまいましたが、兄はそのまま馬の専門学校に行ったんです。そういう兄の背中を見て、「馬に携わる道もあるんや」と意識し始めたのがきっかけです。だから、今の僕があるのは兄のおかげですね。

 そうだったんですね。それで乗馬を始められた?

西村 はい。小学校5年生から始めました。それまではサッカー選手になりたかったんですけどね。でも、身長も伸びなかったですし、本格的に馬に乗り始めたことで、中学のときにはサッカーを辞めて乗馬一本に絞りました。

 初めて馬に乗ったときの感想は?

西村 僕、もともと高所恐怖症なんですよ。だから、最初は視点が高くてビビりました(苦笑)。

 めっちゃ高いし、生身やし、みたいな(笑)。

西村 加えて、「めっちゃ動くし!」みたいな(笑)。常歩(なみあし)の時点でめっちゃ怖かったので、もう速歩(はやあし)とかいったら…(苦笑)。正直、怖いというイメージしかなかったです。

 なるほど。馬との出会いは恐怖心から始まったわけですね。

西村 そうですね。僕、けっこうビビりなので…。我ながら、よくここまできたなと思います(笑)。

おじゃ馬します!

▲馬との出会いは恐怖心から「けっこうビビりなので、我ながらよくここまできたなと(笑)」


 恐怖心はすぐ克服できましたか?

西村 はい。ビビっていたらケガをするし、周りにも迷惑を掛けてしまうので、今は逆にけっこうイケイケです(笑)。

 ジョッキーになりたいと話したとき、親御さんには反対されませんでしたか?

西村 僕は片親なんですが、母は「好きなことをやりなさい」という感じなので、反対はされなかったです。もちろん、心配はしているみたいですけどね。今も毎週毎週「無事にゴールできることを願っています」みたいなメッセージが送られてきます。

 やりたいことをやらせたいという気持ちとは裏腹に、やはりリスクが伴う仕事ですからね。お母さまとしては心配でしょうね。ちなみに、お兄さんはその後、どうされたんですか?

西村 兄も今年、厩務員課程に受かって、6月からJRAの競馬学校に行くんです。

 あ、そうなんですね!

西村 兄の担当馬で勝つことが何よりの親孝行になると思うので、早くトレセンにきてほしい。絶対に兄と一緒に勝ちたいです。

 そういう夢のあるお話はいいですねぇ。話は変わりますが、競馬学校時代には、模擬レースで総合優勝したほか、アイルランド大使特別賞を受賞されたんですよね。素晴らしい成績で卒業されたわけですが、技術に対する自信を持ってのデビューだったのではないですか?

おじゃ馬します!

▲競馬学校時代の模擬レース、総合優勝を果たした


西村 自信なんて全然なかったです。入学当初は同期が5人いて、最後は3人しか卒業できなかったんですけど、あくまで3人のなかで一番だったというだけで、プロのなかに入ったら、当然一番下からスタートするわけですから。だから、技術に対する自信なんて、卒業したときはもちろん、今もまだ全然ありません。

 デビューしてからの同期に対するライバル心は?

西村 ライバルとは思わないようにしていますけど…、内心はあります(苦笑)。やっぱり「お、上の着にきてるな」とか、成績が気になりますから。でも、同期をライバル視したところで、目指すべき先輩は上に山ほどいるので…。それほど意識しないようにとは思っていますけど。

 でも、初勝利までは、どうしてもメラメラしますよね(笑)。

西村 それはありました! 何しろ、ずっと同期の競馬を見ていましたから(笑)。服部がけっこう人気馬に乗っていたので「もう勝つんかなぁ」と思いつつ、同じレースに乗ったときは、「絶対に勝たせん!」と思ったりして、めっちゃ意識しましたもんね。

 ジョッキーである以上、そういう感情になるのは当然だと思います。え〜と、学年は山田騎手がふたつ上、服部騎手がひとつ上?

西村 はい。同期とはいえ、僕が一番年下です。でも、3人しかいないので自然と仲が深まるというか、同級生と変わらないくらい仲はいいですよ。同じ栗東の服部とは、しょちゅうご飯を食べに行ったりして、ずっと一緒にいますし。近々、山田ともご飯に行きたいなぁと思っていたところです。

 同期といるときはどんなキャラですか? みんなを引っ張っていくタイプ?

西村 いえ、どちらというと「イジられキャラ」です(笑)。

 そうなんですね。しっかりしているのは、やっぱり年上の山田騎手?

西村 そうですね。それは間違いなく。なにしろ栗東組のふたりは、本当にいつも「ポッカーン」としているので(笑)。もし山田がいなかったら、34期のイメージが変わっていたでしょうね(笑)。

(文中敬称略、次回へつづく)

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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