東京2400mを知り尽くす鞍上と、前走示したスタミナでダノンプレミアムと勝負/日本ダービー
◆キャリアの浅い同士の組み合わせは非常に可能性が低い
府中本町の駅を出ると、競馬場から200m以上は続くと思える専用通路(トンネル)に、若者の座り込んだ列があった。日本ダービーではこの通路に、一週間前から、20組、30組とグループが並び、その列がしだいに長く100mにも、もっと長くなるのは毎年のことだが、今年は臨時売店の女性が「どうしたのかしら、今年は…。こんなの初めて」と、驚くほどの列が通路の両側に並んでいる。
府中本町の駅にまで達し、折り返しの列が再び競馬場に向かって延びているかのようだった。盛り上がりそうである。
今年の日本ダービーの最大の特徴は、まだキャリア「3〜4戦」の注目馬が計5頭もいること。それも揃って上位人気馬である。日本ダービーは2歳戦が誕生した1946年以降に区切ると、昨年までに「71回」行われた。
戦歴4戦以下の勝ち馬は、2戦2勝のキャリアで、定説もさまざまなデータもことごとく砕いた1996年のフサイチコンコルドを筆頭に、4戦のディープインパクト、4戦のレイデオロ…など、史上5頭だけである。戦歴3戦で勝った馬は1頭もいない。(牝馬のオークスでは、66年間に「14頭」ものキャリア4戦以下の勝ち馬がいるのに……)。
日本ダービーの方が厳しいレースのためか、あるいは男馬の方がレースへの適応が遅いためか、キャリアの浅い勝ち馬の数は非常に少ない。育成、調教技術の格段の進歩により、もう「レース経験が問われる時代ではない」とはいえる。ただし、戦歴4戦以下の2頭が「1〜2着」を占めたケースはマカヒキの勝った2016年たった1回しかない。
みんな、大丈夫だろうか。ひょっとすると歴史が伝えるように、キャリアの浅い同士の組み合わせは非常に可能性が低いかもしれない。
人気のダノンプレミアムがレースレコードで完勝した朝日杯FSと同じ1番枠を引いた。苦もなく好位2〜3番手のインを確保し、事実上のレースの主導権を握る可能性が高い。ビッグレースで人気の先行型がしかるべき位置を確保してしまうと、流れが速くならないことが多い。
近年の日本ダービーで無謀にも近い先行策を取る馬の出現はめったにない。みんなこのレースを勝ちたくてホースマン人生を送っていると言っても過言ではない。前半のムリは避けたい。
東京2400mのペース配分も、スローペースの場合のスパートのタイミングもイヤというほど承知の横山典弘騎手のステイフーリッシュに期待したい。爆発するスピード能力では、ダノンプレミアムにかなわないが、スピードの持続力(スタミナ)では一枚上だろう。
前回の京都新聞杯2200mは藤岡佑介騎手のテン乗りだったが、ステイゴールド産駒とは思えない強気な先行の手に出ると、2番手抜け出しに成功して、2分11秒0。自身の前後半バランスは推定「59秒2-(12秒7)-59秒1」。中間で息を入れ、後半は早めにスパートする素晴らしい内容だった。
スピードの持続性を示すと同時に、あと1ハロン分の12秒0〜12秒5を加算すると、高速の芝でペース配分を間違えなければ、2400mを楽に「2分23秒台前半」で乗り切る能力を持っていることを示す内容だったと考えることができる。
横山典弘騎手が、どんな策を用いるかを推測するのは至難だが、人気のダノンプレミアムの前後にいて、どこかで強気なスパートをかけて出るのではないか、と、期待することにする。
突っ込んでくるはずのグレイル、ここまで惜敗を含め【0-2-2-20】の蛯名正義騎手が乗るゴーフォザサミット、通算【0-2-0-16】の福永祐一騎手のワグネリアンは、相手に入れる。