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渋馬場に泣かされた馬が多い中での完勝/エプソムC

  • 2018年06月11日(月) 18時00分


◆クラシックは不発に終わった若駒が本格化

 午前中は重苦しい曇天でも雨は我慢していたが、午後になって降り始めると芝は「良→稍重→重馬場」。たちまちのうちに悪化し、10Rから重馬場発表に変わった。残念ながら馬場がこたえた馬が多かったが、逆にこのコンディションにもかかわらず好走し大きく評価の上がった馬もいる。

 勝った4歳馬サトノアーサー(父ディープインパクト)は、首を下げる独特のフットワークでリズムをとる走法だけに、滑る渋馬場は決して有利ではない。3歳春に重馬場のきさらぎ賞2着があるとはいえ、この馬場はプラスではなかったろう。陣営は雨でのめる心配もしていた。しかし、4歳になって芯がしっかりしてきたこと。休み明けをひと叩きして気配満点だったこと。また、予想外の好スタートから好位の外につけた前半は行きたがるほどだったが、外枠が大きな味方となり馬群にはもまれなかったことが大きい。

 初重賞を制しこれで【4-3-2-2】。クラシックでは結果が出なかったが、折り合い一歩だった神戸新聞杯2400mに2分25秒1もあり、2000mを中心にこなせる距離の幅は広い。古馬になって評価の難しい馬が珍しくないディープインパクト産駒とすると、今年になって【2-0-1-0】。いま、ようやく本物になりつつあるから、このあとの大活躍は間違いないだろう。GI宝塚記念の登録馬(日本馬)はフルゲート18頭に満たない15頭にとどまった。ビッグレースの中軸になる古馬中距離タイプの層は必ずしも厚いわけではない。母も祖母もオセアニアの生産馬。とくに母キングスローズはNZ、豪、香でGレース6勝を含み23戦8勝のタフな牝馬だった。

重賞レース回顧

距離の幅を活かして待望の重賞初制覇を飾ったサトノアーサー(撮影:下野雄規)


 ゴール寸前に鈍って3着のグリュイエール(父ディープインパクト)は、6歳馬ながら屈腱炎治療の2年間の空白があるから、まだ14戦【5-1-2-6】。長期休養明けの前回を快勝し、格上がりの今回は古馬になってから初のオープン挑戦だった。坂上では楽に2着と思わせる好内容であり、良馬場なら勝ち馬とも差がなかったろう。

 母はポポカテペトル、マウントロブソンなどの半姉で、祖母ミスパスカリはクロフネの半妹。ムリはしないだろうが、夏のローカル重賞ならすぐ勝ち負けになる。

 4着サーブルオール(父ハービンジャー)も、グリュイエールと同様に今回が格上がりで初オープン。こういう馬場を苦にしなかったともいえるが、イン寄りに進路を取ってから伸びたから、負けたとはいえ立派なものである。ハービンジャーの進展は知られる。サンデー系の牝馬相手でなくとも、さらには当初に思われていたよりはるかに幅広い距離をこなす産駒を輩出し、初年度産駒が3歳に達した2015年以降の総合種牡馬ランキング「16→13→8→6位」である。別定56キロの古馬重賞初挑戦でこの結果なら、グリュイエールと同様、夏の重賞路線の主役となれるだろう。

 2着ハクサンルドルフ(父アドマイヤムーン)はいつもそこそこに突っ込んでいるので、GIII級の重賞の常連のような気がして順番が後回しになってしまったが、改めて成績を振り返ると、オープンクラスで連対したのは今回が初めてだった。今回は最後の1ハロン「12秒5」とラップが落ち込んだところで台頭したあたり、こういう馬場が味方したのはたしかだが、1800mには1分45秒3の時計がある。差し比べのレースなら良馬場でも侮れない。ただ、最近は毎回ジョッキーが替わるので、コース、距離、相手だけではなく鞍上が合うかどうかが大きなポイントになる。

 人気の4歳ダイワキャグニー(父キングカメハメハ)は、例によってコースに先出し。返し馬をみんな入念にチェックしていたが、とくに気にする素振りもなく、ハイテンションでもなかった。だが、スタートしてしばらく行くと明らかに行きっぷりが良くない。馬場を苦にしている。横山典弘騎手は外に回ろうかと一瞬考えたようにみえたが、中団の外は空いているようでいて、外に回れるスペースはなかった。雨の重馬場がこたえたうえに、現在はもう大丈夫と思えたが、中2週の日程(凡走した日本ダービーと同じ)が良くなかったのだろうか。坂上であきらめると、日本ダービーと同じ14着だった。

 大半がベテランホースばかりの中で、4歳馬はサトノアーサーとこの馬だけ。立て直してきっと巻き返してくれるはずである。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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