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【石橋脩×藤岡佑介】第3回『堀宣行調教師からの教え 馬を観察することの大切さ』

  • 2018年07月04日(水) 18時01分
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▲石橋騎手がたくさんの影響を受けているという、堀宣行調教師とのエピソード (C)netkeiba.com


石橋脩騎手をゲストに迎えて対談。今週のテーマは「仕事との向き合い方」です。佑介騎手いわく「周りからの影響や雑音をシャットアウトして“凪”の状態を保っている」という石橋騎手。競馬に向かうまでの流れ、馬に対する考え方。石橋騎手の知られざる流儀が明かされます。そして、その石橋騎手に大きな影響を与えているのが、堀宣行調教師の存在。石橋騎手が「本当にすごい人」と話すトップトレーナーの信念とは。 (取材・構成:不破由妃子)


堀厩舎を手伝っていなければ今の自分はない


佑介 ドゥラメンテでの経験を糧に、この春のGIは落ち着いて臨めたとのことですが、脩ちゃんは基本的に気持ちの面で波がないタイプですよね。周りからの影響や雑音をシャットアウトして“凪(なぎ)”の状態を保っているというか。アプローチの仕方は違うけど、そういう気持ちの保ち方は参考になります。

石橋 トレセンでも話しかけられないようにめちゃくちゃ速く歩いてるからね(笑)。あとは、基本的に同じこと、同じ生活を繰り返す。やるべきことを必ずこなすことで、“凪”を保っているっていう感じかな。

佑介 たしか、競馬に向けてのルーティン的なものもけっこうありましたよね?

石橋 あるね。毎週木曜日に必ずトレーニングをしたり、マッサージをしたり。そういうルーティンは、少々体調が悪くても絶対に崩したくない。やることをやらないと、なんかモヤモヤが残っちゃうんだよね。

佑介 毎週同じことを繰り返すなんて、僕には絶対に無理(笑)。そこだけは真似をしたくてもできません。

石橋 藤岡はそうだろうねぇ。

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▲同じ生活を繰り返すという石橋騎手「藤岡はそうだろうねぇ」


佑介 むしろ脩ちゃんみたいな人を見ると、ルーティンの予定がある日にわざと誘って、リズムを崩したくなる(笑)。でも、小倉で久々に一緒になったときですら、僕の飯の誘いを断って、サッサと帰りましたもんね(笑)。

石橋 子供がいると日曜日も忙しいんだよ…(苦笑)。食事にしても風呂に大騒ぎ。だから、平日の調教の後は子供の世話で終わることが多いかな。

──石橋さん、イクメンなんですね! それは意外な一面です。

石橋 いや、そうじゃないんです。子育てをされている人はわかると思いますが、本当に大変だから、できることはやらないと…というだけで。まぁ、たしかに子供の成長は楽しいし、好きでやってるところもあるんですけどね。

佑介 たしかに子育ては大変ですよね。脩ちゃんがいない金曜、土曜はどうしているんですか?

石橋 嫁さんがひとりで頑張ってくれているよ。その大変さがわかるから、すごく感謝してるし、日曜の競馬の後もやれることはやるという感じかな。だから、誘われてもなかなか出かけられないんだよね(笑)。

佑介 なるほど。それを聞いたら一目散に帰るのも納得です(笑)。そんな忙しいなかでも、競馬に向けてはものすごく準備をしていますよね。いつもすごいなと思ってるんです。脩ちゃんが乗ったことがある馬に僕が乗ることになったとき、その馬について聞くと本当に細かく教えてくれますもんね。しかも、インタビューが嫌いとか言ってる人とは思えないほどの長文メールで(笑)。僕は積極的に聞きにいくほうですけど、脩ちゃんほど丁寧に教えてくれる人はいませんよ。

──人とのそういう関わり方はウェルカムなんですね。

石橋 そうですね。何より馬のおかげで仕事ができているので、たとえ自分が乗らなくても少しでも上の着順にきてほしいし、ほかの騎手に勝ってほしくないとか、そういう気持ちはないです。昔から秘密主義なところはあるけど、そこは秘密主義じゃない(笑)。

佑介 所属が違うから同じ馬に乗ることは少ないですけど、最近でもマイラーズCのベルキャニオンとか、昔で言えばジャガーメイルとか、いろいろ教えてくれましたよね。しかも、レースのVTRを見ればわかることだけではなく、どういう気持ちの馬かとか、仕草からどういうことがわかるかなど、僕が聞きたいことを教えてくれる。初めて乗る場合、そういう情報があるだけで、乗ったときからアドバンテージがありますからね。僕が大事にしたいことと近いし、基本的に脩ちゃんに教えられた情報は全部鵜呑みにしてますよ(笑)。ちなみに、乗った馬は1頭1頭、感じたことをメモに残したりしてるんですか?

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▲「僕が大事にしたいことと近いし、脩ちゃんに教えられた情報は全部鵜呑みにしてる」


石橋 いや、そういうことはしてない。馬をじっくり観察するようになったのは、堀先生の影響が大きいかな。「ちゃんと観察することが大事」っていうのは堀先生が常々言っていることで、それで僕も意識するようになって。最初は意識したところでわからなかったことも、続けていくことでなんとなくわかってきたというかね。そういうことって、意識しないと一生身に付かないことだから。

佑介 レースを組み立てるなかで、馬を主体に考えるのか、騎乗を主体に考えるのか。どちらがいいとか悪いとかではなく、そこはジョッキーによって違うじゃないですか。その点、脩ちゃんは馬が主体。そこは堀先生の影響が大きいんじゃないかと僕も思っていました。

──石橋さんは、2007年頃から堀厩舎での騎乗が増えていますが、なにかきっかけがあったのですか?

石橋 たしかローカルで乗せてもらったのをきっかけに、調教も手伝わせてもらうようになって。堀厩舎を手伝っていなければ今の自分はないと思うくらい、たくさんの影響を受けましたね。

佑介 堀先生は面白いですよね。常に新しい視点を持って取り組んでいるから。

石橋 そうだね。とにかく馬に対して、競馬に対して熱心。それに、現状に満足することなく、常に向上心を持っている。本当にすごい人だと思う。調教にはずっと乗せてもらっているけど、それだけではなく、レースでチャンスも与えてもらっている。あそこまですごい厩舎だと、本来なら僕を乗せるのが難しいような馬ばかりなんだけどね。そんななかでもちゃんと気に掛けてくださって、厳しい言葉も、多くのチャンスも何度も与えてもらってる。本当に感謝しかないですね。

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▲石橋騎手が「本当にすごい人」と話す堀宣行調教師 (C)netkeiba.com


(文中敬称略、次回へつづく)
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JRAジョッキーの藤岡佑介がホスト役となり、騎手仲間や調教師、厩舎スタッフなど、ホースマンの本音に斬り込む対談企画。関係者からの人望も厚い藤岡佑介が、毎月ゲストの素顔や新たな一面をグイグイ引き出し、“ここでしか読めない”深い競馬トークを繰り広げます。

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1986年3月17日、滋賀県生まれ。父・健一はJRAの調教師、弟・康太もJRAジョッキーという競馬一家。2004年にデビュー。同期は川田将雅、吉田隼人、津村明秀ら。同年に35勝を挙げJRA賞最多勝利新人騎手を獲得。2005年、アズマサンダースで京都牝馬Sを勝利し重賞初制覇。2013年の長期フランス遠征で、海外初勝利をマーク。2018年には、ケイアイノーテックでNHKマイルCに勝利。GI初制覇を飾った。

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