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サクソンウォリアーを破ったラトローブの父・キャメロットには要注目

  • 2018年07月04日(水) 12時00分


◆3歳春を迎えて俄然動きが良くなったキャメロット産駒

 6月30日にカラ競馬場で行われたG1愛ダービー(芝12F)は、ジョゼフ・オブライエンが管理し、ドナカ・オブライエンが騎乗した5番人気のラトローブ(牡3、父キャメロット)が優勝。オッズ2倍の1番人気に推された日本産馬サクソンウォリアー(牡3、父ディープインパクト)は3着に敗れた。

 そのサクソンウォリアーを含めて、2着馬から5着馬までの4頭は、エイダン・オブライエンの管理馬だったから、父親が擁した巨大軍団が、息子たち二人のタッグに敗北した結果となったわけだ。開業3年目のジョゼフ・オブライエンにとって、これがクラシック初制覇。ドナカ・オブライエンによっては、サクソンウォリアーで制した今年5月のG1二千ギニー、フォーエヴァートゥゲザーで制した今年6月のG1英オークスに続き、3度目のクラシック制覇となった。

 前走の英ダービーに続く連敗を喫したサクソンウォリアーだが、勝ち馬マサーに4.1/2馬身遅れた前走に比べれば、勝ち馬ラトローブに1/2馬身+首差に迫った今回の方が、内容的には上質なものだった。懸案の距離(12F)については、こなせなかったわけではなかったが、ギリギリもったという印象で、より高い適性はもう少し短い距離にあるように思う。

 管理するエイダン・オブライエンもレース後、今後のサクソンウォリアーが10F路線を目指すことを示唆し、具体的には8月22日にヨークで行われるG1インターナショナルS(芝10F56y)が目標になるようだ。

 さて、勝ったラトローブは、6月9日にカラで行われたメイドン(芝12F)を制し、デビュー4戦目にして初勝利を挙げたばかりの馬であった。もっとも、今年5月には未勝利の分際でカラのG3ガリニュールS(芝10F)に挑み、2着となっていたから、陣営がその素質を高く評価していたことは間違いなく、その片鱗を覗かせていたことも確かだった。

 同馬の場合は、12F戦を走るようになってパフォーマンスが上がったことは明白で、今後は秋のG1セントレジャー(芝14F115y)が大きな目標になるはずだ。実際にブックメーカー各社のセントレジャーで向けた前売りで、同馬はオッズ6〜9倍の1〜2人気に浮上している。

 ラトローブは、キャメロットの初年度産駒の1頭で、父キャメロット(その父モンジュー)にとってG1勝ち馬第1号となった。

 2012年、G1英二千ギニー、G1英ダービーを制した後、G1セントレジャーで3/4馬身差の2着の敗れ、1970年のニジンスキー以来となる3冠を逸したのがキャメロットだ。そのキャメロットの手綱をとっていたのが、当時は父の厩舎で主戦騎手を務めていたジョゼフ・オブライエンで、セントレジャーで敗れた時には、進路の取り方や追い出しのタイミングが批判の的となったのだが、そのジョゼフがキャメロット産駒のクラシック初制覇に調教師として関わるというのも、何かの因縁であろう。

 そして、今後のラトローブがセントレジャーを目指すなら、父キャメロットにとっても、調教師ジョセフ・オブライエンにとっても、5年前の屈辱を晴らしに行くことになるわけだ。

 ラトローブはそもそも、1歳秋にタタソールズ10月1歳セールに上場されたところ、ジョゼフ・オブライエンが見初めて馬主に勧め、6万5千ギニー(当時のレートで約874万円)で購買した馬だった。

 準3冠と言える実績を3歳時に残したキャメロットだが、デビューは2歳の7月と早く、しかもレパーズタウンのメイドン(芝8F)でデビュー勝ちを果すと、3か月の休養を挟んで10月にドンカスターで行われたG1レイシングポストトロフィー(芝8F)に駒を進め、ここも鮮やかに制して父モンジューに初の2歳G1のタイトルをもたらしている。

 すなわち、スタミナや底力、成長力という特性に加えて、仕上りの早さやスピードも兼ね備えていたのが、キャメロットであった。

 それだけに、いささか動きが鈍いと言われたのが、昨年デビューしたキャメロットの初年度産駒の、2歳時におけるパフォーマンスだった。

 10月に産駒のファイティングアイリッシュがG2クリテリウムドメゾンラフィット(芝1200m)を制し、重賞勝ち馬第1号となるとともに、父が短距離路線の活躍馬を出せることを示してはいたのだが、結局昨年のキャメロット産駒による重賞制覇はこの1つに留まり、フレッシュマンサイヤーランキングでも4位に甘んじることになった。

 ところが3歳春を迎えて、キャメロット産駒は俄然、動きが良くなったのだ。

 4月29日にキャパネッレで行われたG3伊二千ギニー(芝1600m)を、ウェイトフォーエヴァー(牡3、父キャメロット)が優勝。同日にロンシャンで行われたLRシュレスネ賞(芝2000m)を、ナチュラリーハイ(牡3、父キャメロット)が制覇。

 5月8日にサンクルーで行われたG2グレフュール賞(芝2100m)は、後の仏ダービー馬スタディオヴマン(牡3、父ディープインパクト)が勝ったのだが、2着にアルーナク(牡3、父キャメロット)、3着にアルハダブ(牡3、父キャメロット)が入り、キャメロット産駒が2・3着を占めている。

 5月21日にサンクルーで行われたG3クレオパトレ賞(芝2100m)で、アメイジングリップス(牝3、父キャメロット)が2着に入ると、6月3日にシャンティーで行われたG3ロワイヤモン賞(芝2400m)をポーララ(牝3、父キャメロット)が制し、キャメロット産駒3頭目の重賞勝ち馬に。ロイヤルアスコット3日目の6月21日には、G3ハンプトンコートS(芝9F212y)をハンティングホーン(牡3、父キャメロット)が制し、父にとって4頭目の勝ち馬に。

 そして6月30日にラトローブがG1愛ダービーを制し、キャメロット産駒初のクラシック制覇となったのだ。

 キャメロット産駒は、3歳春を迎えて成長する馬が多く、そして明らかに2000m以上に適性のある馬が多そうである。

 もっとも、ロイヤルアスコット最終日の6月23日、2世代目の産駒の1頭であるアーサーキット(牡2、父キャメロット)がLRチェシェイムS(芝7F)を制しているから、配合次第ではマイル以下でG1を勝つ馬も、今後は出現する可能性がありそうだ。台頭著しいキャメロットは、今後も注目すべき若手種牡馬と言えそうである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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