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猛暑に劣らぬ賑わいをみせた八戸“熱”市場

  • 2018年07月04日(水) 18時00分


バラエティに富んだ産駒で、平均落札価格は過去最高近くに


 昨日、青森県の八戸市場が開催された。毎年漢字一文字をテーマに掲げるのが八戸市場だが、今年は「熱」で、気候もまたこの字の通りの、晴天のかなり暑い一日となった。

 今年は名簿上で39頭が上場を予定していたが、うち3頭が欠場し、全部で36頭の上場であった。地域別では地元青森県産馬が22頭(1頭欠場)、北海道から14頭(2頭欠場)という構成だ。販売申込者別では、新ひだか町のタイヘイ牧場が5頭と最多頭数である。

 今年の注目点は、まず地元青森で繋養されているウインバリアシオンの初年度産駒が6頭上場を予定していること。地元青森を中心に一定数の配合牝馬を確保できており、産駒数も1歳世代は21頭の登録がある。当然青森県内の生産馬が多く、どのような売れ行きになるのかが注目された。

 上場頭数は昨年よりも4頭減少したものの、八戸市場は朝からタクシーやレンタカーで続々と購買関係者が来場し、いつにも増して賑やかな雰囲気であった。

 頭数が少ないのでここではスケジュールもゆったりとして余裕がある。比較展示の開始は午前10時半。日高のセリならば一度に全馬出てくる頭数だが、ここでは、よりじっくりと各馬を吟味してもらうために、36頭を3回に分割して、展示を行う。

生産地便り

八戸市場展示風景

 たっぷりと時間を取り、展示が終わると展示場を大きく各馬が常歩で時計回りに歩き、最後に真ん中の走路を1頭ずつセリ会場に向かって速歩を披露するという念の入れようだ。

 たっぷりと時間を取っての比較展示が終了すると、ここでは昼食時間もしっかり確保されている。お弁当とともに地元名産のせんべい汁が出され、ローカル色豊かな昼食風景である。

 セリ開始は、おおよその目安で12時半となっているが、それもあまり厳格ではない。来場者の様子を見ながらアナウンスが流れ、セリ会場へそれぞれ購買関係者が思い思いの場所に席を取る。今年はJBBAの河野洋平会長が来場していた。

 昨年の八戸市場はずいぶん活発なセリ風景で、売却率も史上最高を記録したが、今年はどうなるかと人々が注目する中、セリが始まった。購買登録者は112名とかなり多く、場内はほぼ椅子が埋まるほどの賑わいであった。

生産地便り

八戸市場会場風景

 1番の馬が入場するなり、すぐに200万円と声がかかり、さっそくJRAが落札した。2番、3番と進むが、どんどん声がかかって行く。最初の牡馬5番ローマンクィーンの2017(父ゼンノロブロイ)が登場すると、600万円で落札された。

 前半はそれでもやや控えめな価格帯の馬が目についたが、中ほどからは徐々に競り合いが活発になり、21番ヨンハの2017(父ウインバリアシオン牡)は520万円(税抜き)で栗本博晴氏が落札。ウインバリアシオン産駒の中ではこれが最も高額となった。

 23番は、展示の時から注目を集めていたショウリダバンザイ(ロジータ記念、道営記念など10勝)の産駒で、父はパイロ。牝馬ながら激しい競り合いが展開し、630万円(税抜き)で梶本尚嗣氏が落札した。生産・販売申込者は(株)タイヘイ牧場。

生産地便り

ショウリダバンザイ産駒の23番

 後になればなるほど価格が上昇する傾向にあった今年の八戸市場。33番イースタリーブリーズの2017は、新種牡馬オーシャンブルーの牡馬で、700万円(税抜き)まで価格が上がり、これが牡馬の最高価格馬であった。青森・イズモリファームからの上場で、落札者は栗本博晴氏。

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オーシャンブルー産駒の33番

 市場を通じての最高価格馬は、36番のドルフィンルージュ29の4(父リアルインパクト)で、770万円(税抜き)。(株)諏訪牧場の生産。落札者は(有)ディアレストクラブ。リアルインパクトも今年初産駒が1歳になる新種牡馬で、八戸市場には牝馬が2頭上場されたが、いずれも落札された。

生産地便り

リアルインパクトの36番

 名簿上では、39頭に対し種牡馬が26頭と偏りのないバラエティに富んだ上場馬の構成になっていたのも大きな特色である。

 前述したウインバリアシオン産駒は、6頭中5頭が落札され、まずまずの成績であった。

 結局、最終的には36頭中、28頭が落札され、総額9234万円(税込み)の売り上げとなり、売却率は昨年よりも0.3%増の77.8%を記録した。また平均価格は昨年よりも8336円減の329万7857円であった。

 1億249万円を売り上げた昨年と比較すると、総額では1015万円の減少となったが、これは上場頭数4頭減、落札頭数3頭減によるもので、ほぼ昨年並みの数字を維持できたと言ってよかろう。

 セリの結果について青森県軽種馬農協・山内正孝組合長は「上場頭数はやや減りましたが、結果は昨年と遜色のない数字になったと思います。旺盛な購買意欲に支えられて今年は再上場の頭数も多かったですね。それだけ馬を求める人が大勢いるのだろうという気がします」と振り返り、今後に向けての課題として

「まずは頭数確保ですね。地元青森の生産者にとってこの市場が本当に必要なのかどうか、改めて問われて来ていると思います。北海道の市場に全馬出すんだという生産者ばかりになればこの市場の存在意義はなくなるわけですから」とコメントした。

生産地便り

セリのこれからについて語った山内正孝組合長

 毎年のことだが、上場頭数の確保が常に一番大きな課題となっている。2017年産の県内生産馬はおおよそ80頭いるが、期待馬であればあるほど北海道の市場を目指す傾向が依然として強く、それが結果的に八戸市場の空洞化を招いている。

 しかし、そんな中にあっても、今年もこれだけの頭数が売れ、平均価格も史上最高となった昨年に並ぶ数字を残せたのは喜ばしいことだ。

 青森の場合は、他の農業と兼業で生産を行なっている牧場も多く、概して平均年齢は高い。経費をかけて北海道の市場に出すのには負担が大きく、やはり地元の生産者にとってこの市場は不可欠なものであるだろう。それには、今後いかに上場頭数を確保して行くか。容易に答の出ない難問だが、ここをクリアして行かなければいずれ市場として成り立たなくなってしまう懸念がある。何とか県内の生産者の奮起に期待したい。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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