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ダート戦線上半期を振り返る

  • 2018年07月17日(火) 18時00分


◆地方馬の勝利が少なく、ちょっと寂しい

 先週のジャパンダートダービーで、ダート戦線の今年上半期が一段落。ここまでを振り返ってみたい。

 まずは3歳戦線。この世代の2歳時から振り返ってみると、エーデルワイス賞こそホッカイドウ競馬所属馬が上位を独占したが、北海道2歳優駿、兵庫ジュニアグランプリ、全日本2歳優駿は、いずれも地方馬は3着が最高という成績。明けて3歳の兵庫チャンピオンシップは中央5頭が掲示板を独占。地方馬は地元兵庫と笠松のみの出走で、最先着の6着馬でも5着馬から7馬身と大きな差をつけられた。

 地方馬では全日本2歳優駿3着という成績で地方の2歳チャンピオンとなったハセノパイロが東京ダービーで復活の勝利。ジャパンダートダービーでは地方馬の最右翼として期待(それでも7番人気)されたが、まったく能力を発揮できず11着に沈んだ。

東京ダービーではハセノパイロが復活V(撮影:高橋正和)


 そのジャパンダートダービーは、ルヴァンスレーヴの強さが際立つ結果となった。全日本2歳優駿とジャパンダートダービーを制した馬は、2001年トーシンブリザード(船橋)、2007年フリオーソ(船橋)に続いて3頭目、中央馬では初めてのこととなった。またユニコーンSからジャパンダートダービーを制したのは2005年カネヒキリ、2015年ノンコノユメに続いて3頭目。それら主要タイトルを制したことからも、今後、ルヴァンスレーヴにはダートチャンピオン級の活躍の期待がかかる。

ダートチャンピオン級の活躍の期待がかかるルヴァンスレーヴ(撮影:高橋正和)


 3歳牝馬による関東オークスは、出走した中央4頭のうち2頭が1勝馬と、例年に比べてやや低調なメンバーで争われた。そんな中で勝ったのは、中央4頭ではもっとも人気がなく、単勝21.1倍、6番人気というハービンマオだった。中央勢が低調だったぶん、2着ゴールドパテック、3着クレイジーアクセル、4着ミスマンマミーアと、南関東所属馬も上位に入線した。

関東オークスは6番人気ハービンマオが優勝(撮影:高橋正和)


 関東オークスに出走しなかった地方馬では、浦和・桜花賞を中央から移籍初戦のプロミストリープが制したが、東京プリンセス賞では、そのプロミストリープに7馬身差をつけて勝ったのがグラヴィオーラ。2歳時にエーデルワイス賞を制したストロングハートはその後勝ち星がないが、エーデルワイス賞2着だったグラヴィオーラが、東京2歳優駿牝馬、そして前述の東京プリンセス賞を制して世代のトップに立った感がある。

 なおダートグレードへの出走はないものの、一方的なレースばかりでデビューからの連勝を10に伸ばしていた名古屋のサムライドライブが東海ダービーで2着に破れたのは、ちょっとした“事件”だった。

 短距離路線は、昨年のJBCスプリントを制したニシケンモノノフが、その後勝ち星がないどころか馬券にもからんでおらず、主役不在の混戦。黒船賞は兵庫のエイシンヴァラーが制した。9番人気、単勝23,430円は、1997年以降、地方で行われるダートグレードでは単勝の最高配当。短距離路線に限らず、今年ここまで地方馬のダートグレード勝利は、このエイシンヴァラーのみというのはちょっと寂しい。

黒船賞はエイシンヴァラーが優勝、単勝23,430円の大波乱(写真提供:高知県競馬組合)


 黒船賞以外、地方で行われた1400m以下のダートグレードの勝ち馬を並べてみると、グレイスフルリープ(東京スプリント)、サクセスエナジー(かきつばた記念、さきたま杯)、テーオーヘリオス(北海道スプリントC)となっている。

 主役不在という中でダートグレードで2勝を挙げた若い4歳馬サクセスエナジーの活躍が期待される状況だったが、プロキオンSでそれらを一蹴し、断然の主役候補となったのがマテラスカイだ。2着のインカンテーションに4馬身差をつけての逃げ切り。中京ダート1400m、1分20秒3というコースレコードには、まさに度肝を抜かれた。

 今年は京都で行われるJpnIのJBCスプリントがおそらく目標となるのだろうが、中央が舞台とはいえレースの性格的に地方枠も何頭分か用意されると思われ、そうなると重賞1勝のみの賞金では出走できるのかどうか。レーティング上位馬の何頭かに出走権があるのなら出走は可能だろうが。

プロキオンSをレコードV、断然の主役候補となったマテラスカイ(c)netkeiba.com


 中長距離路線は、帝王賞の直線で一騎打ちとなった、ゴールドドリーム、ケイティブレイブの5歳馬2頭が今後中心的存在になるであろうことを思わせた。ゴールドドリームは、今年はGI(以下JpnIも含む)のみを3戦して2勝2着1回。通算ではGI・4勝。一方のケイティブレイブは、今年は川崎記念とダイオライト記念を制し、通算ではGI・2勝。

帝王賞を制しGI・4勝としたゴールドドリーム(撮影:高橋正和)


 この2強は、一昨年、昨年までこの路線を牽引したホッコータルマエ、コパノリッキーのようなチャンピオン級の活躍となるかどうか。ただ、ゴールドドリームは2000mでギリギリ、ケイティブレイブは2000m以上が得意なだけに、2頭ともがフルに能力を発揮しての対決は2000mの舞台に限られるかもしれない。

 そのほか、今年のフェブラリーSでゴールドドリームを差し切って復活をアピールした6歳のノンコノユメ、帝王賞3着でまだまだ元気なところを見せた8歳のサウンドトゥルーらも、メンバーや展開次第ではさらにGIのタイトルを狙えそうだ。

 最後に牝馬路線。ここまでの牝馬ダートグレード(3歳の関東オークスを除く)の勝ち馬を並べてみると、ミッシングリンク(TCK女王盃)、アンジュデジール(エンプレス杯、マリーンC)、リエノテソーロ(スパーキングレディーC)となっている。復帰初戦となったマリーンCで2着だったクイーンマンボも含め、すべて4歳馬。

 そもそもマリーンCに出走した中央4頭がすべて4歳馬だったのをはじめ、上記4レースに出走した中央馬のべ18頭中、4歳馬が12頭と、牝馬路線は4歳馬が中心となっている。地方馬で3着以内はTCK女王盃3着のラインハートのみだった。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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