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ヨーロッパ2歳牡馬戦線、カリークスが抜けた存在に

  • 2018年07月25日(水) 12時00分


◆父キングマンを管理したゴスデン師「同等の素質がある」

 芝平地シーズンの本格的なスタートと同時に、2歳戦もスタートするのがヨーロッパだ。

 7月末を迎えているということは、開幕から既に4か月が過ぎようとしていることを意味する。そして8月に入ると、12日にはアイルランドのカラ競馬場でG1フェニックスS(芝6F)が、19日にはフランスのドーヴィル競馬場でG1モルニー賞(芝1200m)が行われ、2歳戦線は早くもG1競走の季節を迎える。このタイミングで、今週と来週の2回に分けて、現段階でヨーロッパ2歳戦線の最前線に立ち、来季の活躍が嘱望されている期待の若駒たちを御紹介したいと思う。

 牡馬戦線のトップランナーで、来年5月4日にニューマーケットで行われるG1二千ギニー(芝8F)へ向けた前売りで、オッズ5〜6倍の抜けた1番人気に推されているのが、ジョン・ゴスデン厩舎のカリークス(牡2、父キングマン)だ。カリッド・アブドゥーラ殿下のジャドモントによる自家生産馬で、G1マルセルブーサック賞(芝1600m)2着馬ヒレボリーンの4番仔となる。母の全姉に、G1スプリントC(芝6F)勝ち馬アフリカンローズがいるファミリーの出身だ。

 そして父は、2014年にG1サセックスS(芝8F)やG1ジャックルマロワ賞(芝1600m)など4つのマイルG1を制し、カルティエ賞年度代表馬に輝いたキングマンで、カリークスはその初年度産駒の1頭となる。

 6月9日にニューマーケットのメイドン(芝6F)を5馬身差で制してデビュー勝ち。続いて出走した、ロイヤルアスコット初日(6月19日)のG2コヴェントリーS(芝6F)も1馬身差で制し、無傷の2連勝を果たした後は、休養に入っている。父も管理したゴスデン師が、「父と同等の素質がある」と言明しており、レース振りと血統背景からは、距離も8Fまではこなしそうだ。早ければ、8月19日のG1モルニー賞(芝1200m)で戦線復帰の予定となっている。

 二千ギニーの前売りでひと桁オッズはカリークスのみで、これに続くのが、各社11〜15倍のオッズを掲げているマーティン・ミード厩舎のアドヴァタイズ(牡2、父ショーケイシング)と、チャーリー・アップルビー厩舎のクオート(牡2、父ドゥバウィ)の2頭だ。

 ドンカスター1歳市場にて6万ポンド(当時のレートで約852万円)で購買されたアドヴァタイズは、マントン・エステイト・レーシングの所有馬として、5月18日にニューバリーで行われたメイドン(芝6F)でデビュー。緒戦勝ちを果たした後、フェニックス・サラブレッド社が買収し、新たな馬主の服色を背に出走したG2コヴェントリーSが、カリークスの2着。その後、7月12日にニューマーケットで行われたG2ジュライS(芝6F)に駒を進め、ここを2馬身差で制して重賞初制覇を果たしている。

 オアシスドリームの直仔である父ショーケイシングは現役時代、G2ジムクラックS(芝6F)に勝ち、G1ミドルパークS(芝6F)で3着になった馬だ。アドヴァタイズの母ファービロウ(その父ピヴォタル)も、現役時代に挙げた唯一の勝ち星は距離6Fのメイドンだったし、母の全兄レッドダイアデムもデルマーの芝5Fの特別デイジーカッターHの勝ち馬と、明らかにスピード色が強い血統背景を持った馬だ。次走は未定だが、2歳シーズンの最終目標をG1デューハーストS(芝7F)に置いているとのコメントが、陣営からは出ている。

 2番手評価のもう1頭であるクオートは、ゴドルフィンによる自家生産馬だ。6月22日にニューマーケットのノーヴィス(芝6F)でデビューし、ここを2.3/4馬身差で制して緒戦勝ち。続いて出走したのが、7月14日に同じくニューマーケットで行われたG3スーパーレイティヴS(芝7F)で、ここも3.3/4馬身差で制して無傷の重賞制覇を果たしている。

 2014年に、G1英オークス(芝12F6y)とG1愛オークス(芝12F)でいずれも3着となったヴォリューム(その父マウントネルソン)の初子で、3代母のヴィクトワールブルーはG1カドラン賞(芝4000m)勝ち馬と、血統背景は明確に距離延長を歓迎しており、2000ギニーだけでなく、ダービーも視野に入っている1頭と言えそうだ。同馬を管理するアップルビー調教師は、9月16日にカラ競馬場で行われるG1ナショナルS(芝7F)を、次の目標に挙げている。

 そして、オッズ15〜17倍で4番手評価なのが、エイダン・オブライエン厩舎のセルゲイプロコフィエフ(牡2、父スキャットダディ)である。未勝利馬オーチャードビーチ(その父タピット)の初仔で、母の半姉にG3ハリウッドジュヴェナイルCS(AW6F)勝ち馬ネセサリーエヴィルがいる以外、目立った活躍馬のいない牝系の出身ながら、キーンランド9月1歳市場にて110万ドル(当時のレートで約1億2100万円)という高値で購買されているところを見ると、当時からよほど馬が良かったものと推察される。

 4月11日にダンドークのメイドン(AW5F)でデビューし、そこは2着に敗れたものの、続くナーヴァンの条件戦(芝5F)を7.1/2馬身差で快勝して初勝利。5月20日にナースで行われたLRロチェスタウンS(芝5F)も4馬身差で制した後、駒を進めたのがロイヤルアスコットのG2コヴェントリーSだった。

 結果は、カリークスから1.1/4馬身遅れの3着だったが、後方からの競馬となり、馬群をさばくのに2度ほど進路をスイッチする場面があったことを考慮すれば、見どころのある内容だったと思う。カリークス同様にセルゲイプロコフィエフも、コヴェントリーSの後は休養に入っている。

 来週のこのコラムでは、有力2歳馬紹介の牝馬編をお届けしたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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