昨年より自在性を身につけていれば楽に勝ち負け/アイビスサマーダッシュ
◆先行できない馬には外枠の利はない
最近のサマーダッシュの結果をみると、改めて驚く。直線1000mのレースパターンがすっかり定着し、芝コンディションの変化が少ない最近6年の勝ちタイムはすべて「54秒1から54秒3」に集中している。平均勝ち時計は「54秒18」。
時計差の少ない1000mとはいえ、6年も連続して「0秒2の範囲内」の決着は驚きである。(ただ、コンマ2ケタ以下は切り捨てるトリックのような数字なので実際にはちょっと違うのだが…)
昨年、レジーナフォルテが3着、アクティブミノルが4着したこの重賞と、そのレースを含む過去6年の平均ラップを並べてみた。便宜上、昨年のレースラップも100分の1単位とする。上は過去6年、下は昨年、
「11秒83-10秒10-10秒52-10秒25-11秒48」=54秒18
「11秒80-10秒00-10秒40-10秒30-11秒70」=54秒20
だった。ともに直線1000mのパターン通りのラップバランスだが、小さな違いがある。
過去6年平均だと、「前半400m-中間200m-後半400m」は、
「21秒93」-「10秒52」-「21秒73」であるのに対し、
昨年は「21秒80」-「10秒40」-「22秒00」だった。
あまりに小さな(せこい)数字の差だが、昨年は「前半は少しセーブし、中間で心もち息を入れ、後半は懸命にスパート」。1000mの勝ち方のパターンから少しはみ出していたのである。
このラップバランスで、クビ差2着のフィドゥーシア(上がり32秒4)は、巧みにためてスパートを遅らせたラインミーティア(上がり31秒6)に差し切られたが、最近6年の平均パターンからすると勝ったにも等しい好内容だった。ハナに並んでいたアクティブミノルは「21秒80-32秒70」=54秒50。
ただ行っただけで緩急の差が乏しく、いかにも追って味のない内容だったが、前半2ハロンはやや行きすぎの「21秒80」で飛ばし、そのあとも「10秒4」だから、初の直線1000mとすると、少しも内容は悪くない。今年はもっと理想に近いラップを踏める可能性もあったが、1枠1番はやっぱり大きな不利か。でも人気急落なので押さえには入れたい。
残念だったのは、フィドゥーシア、アクティブミノルの例年以上に厳しい先行を、本気になって追いかけたレジーナフォルテ。3歳牝馬で直線1000mもまだ2回目だった。福島の1200mを1分08秒1(自身33秒5−34秒6)で勝ってきたばかりだから、きつかった。
最初の400mを自身21秒9で追走したところまでは良かったが、次の中間の200mは昨年「10秒4」。ひと息入れたい地点でモデルパターンを上回っている。ここで3歳レジーナフォルテは前の2頭に追いつこうと早くも必死の追撃に入っていた。
そのため粘りを欠いて「21秒9-32秒5」=54秒4の3着だが、もう少し自在性を身につければ楽に勝ち負けのレベルと思えた。今年は福島1200mを自己最高の1分07秒1(自身32秒5-34秒6)で快勝のあとである。パワーアップしている。
もう少し抑えの効くタイプに育ってほしいところだが、この枠順なら強引に先行体勢に持ち込むより、自然と好位5、6番手追走になるのではないかと期待したい。外枠有利は知れ渡っているが、みんな外に寄ってくる。先行できない馬には外枠の利はない。