◆予想どおりの高速決着 2001年に現在のコースになって以降のレースレコードは、2012年ドナウブルーの「1分31秒5」。これはコースレコードでもある。2番目は2001年,02年のマグナーテンの2年連続を筆頭に、2003年オースミコスモ、2007年カンパニー、2016年ヤングマンパワーがそろって記録する「1分31秒8」。これが5回も横並びに記録されてきた高速レース。
今年は高速の芝コンディションなので、おそらく1分31秒台後半の高速決着になると思えたが、実際、現在の新潟コースになってからの関屋記念史上2位の勝ちタイム1分31秒6=「前半45秒7-後半45秒9」となった。
主導権を握った5歳牝馬エイシンティンクル(父ディープインパクト)は、ラップを落とさない厳しい平均ペースで、自身は「45秒7-46秒1」=1分31秒8。格上がりのオープン初戦、さらに初重賞挑戦とすると、寸前に差されて負けはしたが中身は文句なしだった。「57秒2-34秒6」の中身でもある。全兄エイシンヒカリと同様、のびのび走れるコース向きの注文はつくだろうが、淡泊ではない。今後が非常に楽しみになった。
勝ったのは3歳牝馬プリモシーン(父ディープインパクト)。関屋記念の歴史をみると、日本で最初に1600mに1分33秒台を記録したファイブワン(父ミンシオはマンノウォー系)など3歳牡馬が3頭も勝ち、3歳牝馬ではクールハート、タカラスチールが勝っているが、現在のコースになって18年、3歳馬の勝利は初めてだった。長い直線になり、総合力も必要だからだろう。そういう意味で軽量51キロとはいえ、プリモシーンの勝利は価値がある。伏兵人気だった桜花賞では詰まってまともなレースができず、またNHKマイルCもスムーズではなかったから、これが本来のこの牝馬の能力なのだろう。おそらく平坦コースも抜群に合っている。
本来の能力を発揮し、価値ある勝利となったプリモシーン(撮影:下野雄規)
2着も牝馬で、5歳牝馬ワントゥワン(父ディープインパクト)。3歳春、たしか母のワンカラットより距離も持つのではないか、と期待した気がするが、再三再四「上がり32-33秒台」で突っ込んでいるから、この馬も能力通り。2月にオープン入りを決めた雲雀S1400mでは、坂を上がってから猛然と伸びた。プリモシーンと同じようにほぼ平坦の新潟の直線は最高のコースである。京都のビッグレースで、M.デムーロとのコンビ【2-1-0-1】なら、大仕事があって不思議ない
リライアブルエース(父ディープインパクト)は素晴らしい馬体を誇り、今回のデキの良さが光ったが、中京記念のタイムをあまり短縮できずに1分32秒2(自身58秒4-上がり33秒8)。牝馬勢が高速レースでいつも以上のスピードを爆発させてしまったから(1-3着はすべてディープインパクト産駒)、鋭さ負けしてしまった。ただ、夏の牝馬と、いつもの年以上の高速馬場に負けたのだから、コースが変わって巻き返せる。
ロードクエスト(父マツリダゴッホ)は、ここ2戦、控えて一気の作戦から中位追走の自在型に変え、今回は「58秒1-34秒0」。秘める能力の目安を推し量る前後半バランスは推定「46秒6-45秒5」だった。流れに乗って、最後までしっかり伸びて自己最高の「1分32秒1」。これ以上なしの中身である。ただし、前に届かず、後方から差された。前回のようにスローで全体時計がかからないと勝つまでは苦しいということか。1400mの前走は「48秒4-33秒7」=1分22秒1 だった。
6歳ヤングマンパワー(父スニッツェル)は、今回は明らかに状態一歩。動きも全体の気配も物足りなく映った。ところが、得意のマイルで、得意のコースならこのくらい走ってしまうから基本距離とされるマイル戦は怖い。勝った2016年に0秒2見劣るだけの1分32秒0。そこで、マイルはさまざまな観点から基本の距離というのだろう。
昨年、粘って2着(57キロで1分32秒4)。この組み合わせではNO.2タイの持ち時計1分32秒0を持つウインガニオン(父ステイゴールド)に対する見解は、体調も合わせ大きく分かれた。先行一手型とあって、ここまで極端な通算成績【8-1-1-18】なので、今回も両極端の見解が生じたのは当然か。一見、ちょっと弱気なように映ったかもしれないが、レース全体があのペースになってしまうと、行っても、控えても、58キロではどうしようもない展開(状況)と思えた。勝ったのは別定51キロの3歳牝馬である。突っ込んだのも、粘ったのも負担重量54キロの牝馬だった。
素晴らしいデキを誇ったショウナンアンセム(父ジャングルポケット)は、新潟の時計勝負向きではなかったか。全体にもう少しタフなコースの方がいい。