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良質馬も数多く上場されたサマーセール2018終了

  • 2018年08月29日(水) 18時00分
生産地便り

サマーセール会場風景



5日間でさえ「長い」という声がある日程が今後の課題に


 8月20日のサマープレミアムより始まった今年のサマーセールは、21日から24日まで例年通り通常のセリが開催され、無事に終了した。

 購買者にとっては、いつも通りの5日間にわたるセールだが、今年は初日にプレミアムが行なわれ、翌日以降の通常のサマーセールと一線を画した扱いになったことから、前回も触れたように、5日分の上場頭数を4日間に圧縮してセリを行なうことになった。

 名簿上では例年通り1300頭を超える上場予定頭数に達していたが、終わってみれば約100頭の欠場があり、最終的には1216頭(牡640頭、牝576頭)の上場頭数であった。サマーセール単体のデータでは、前年比7頭増である。

 一方、落札頭数は850頭(牡471頭、牝379頭)、売却率は69.90%。こちらは前年比100頭減で、売却率も8.68%の落ち込みであった。

 サマーセール4日間の売り上げ総額は42億1632万円。これも前年比で12億4567万2000円の下落である。平均価格は牡582万6726円、牝388万3726円で合わせて496万376円。前年よりも78万9089円の減であった。

 こう見て行くと、サマーセール単体ではひじょうに厳しい結果が出たと言わざるを得ないが、冒頭にも記したように、購買者の多くは「サマーセール5日間」という捉え方なのではないかという気がする。初日のプレミアムと2日目から5日目までの通常のサマーセールとでは、選抜された500万円以上の上場馬によるセリと、最低価格のない一般的な1歳馬が上場されるセリという違いはあるものの、2日目以降の通常のサマーセールでも高額取引馬は少なくなかったし、中には「プレミアムに上場させた方がふさわしい」ような良質馬も数多くいた。

 そこで、プレミアム及びサマーセールの数字を合計してみると、上場頭数は合わせて1402頭、落札頭数は994頭、売却率は70.90%となる。

 売り上げは両方足して59億5015万円。昨年のサマーセール54億6199万円と比較すると、5日間の売り上げは、むしろ5億円近くの増加となる。セールの名称こそ別物だが、サマープレミアムとサマーセールは同じ日程で連続して開催されており、厳密に区分しない方が良いような気がする。

 そう考えると、売却率こそ昨年の78.58%には及ばなかったものの、落札頭数は、昨年の950頭を上回り、994頭に達した。平均価格も、プレミアムとサマーセールを合わせた数字で割り算をし直せば、598万6068円となり、昨年の574万7465円と比較してもやや伸びた計算になる。

 ただし、終わってみて改めて感じるのは、やはり21日以降の通常のサマーセールでは、連日、あまりにも上場頭数が多すぎたこと。330頭もの上場予定頭数から一部欠場があったとはいえ、それでも連日300頭超の頭数がセリに出てきた。さすがにこの頭数になると、購買者にとっても「腹いっぱい」の状態になってくる。もちろん、上場する側にとっても、終了時刻が遅くなるのに加え、数多くの上場馬を抱えるコンサイナーにとっては、毎日、馬の入れ替えを行わなければならず、大変な負担になったはずだ。

 21日のサマー初日の終了時刻は午後7時を回っていた。22日以降は、それよりも若干進行が早められ、午後6時半頃には終わっていたが、この時刻になるとすっかり外は暗くなり、落札した馬を間近で再確認するのにも難儀する時間帯であった。

 ここ数年、サラブレッド1歳市場は、旺盛な購買欲に支えられ、大きく数字を伸ばしてきた。今年の購買登録者数は昨年よりも99人増加し、1076人に達したらしい。落札者番号も1000番台が珍しくなくなった。馬を市場で買い求めようというムードが広まったのは大いに歓迎すべきことだが、その結果、想定していた以上に上場申し込みが増えてしまい、このままでは来年は、何らかの形で制限しなければならなくなるような気もしてくる。

 日程は現在、8月下旬の月から金、5日間が充てられているが、日高軽種馬農協・木村貢組合長によれば「できれば月〜木くらいにならないかという声もある」とのこと。

 しかし、もし仮に4日間でこなすとなれば、頭数を大きく絞らなければならない。一方、生産者にとっては、できればサマーセールで売ってしまいたいという強い希望がある。オータムセールの時期になると、今年生まれた当歳の離乳もしなければならず、馬房や放牧地の都合から、なるべく1歳馬は夏の間に行き先を決めておきたいのが本音だ。

 サマーセールは「定期市場」と称していた時代から、販売できる1歳馬はすべて上場できるのが基本であった。だが、ここまで頭数が増えてきて、なおかつプレミアムで1日を取られるとなれば、今年のように残り4日間で1300頭を捌かなければならない。5日間でさえ「長い」という声がある以上、日程の延長は難しく、主催する日高軽種馬農協は新たな悩みを抱えることになりそうだ。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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