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わずか600mで古馬を完封したブラストワンピース/新潟記念

  • 2018年09月03日(月) 18時00分


◆日本ダービーの歴史には背を向けられてしまったが…

 ずっとAコース使用なので、先週あたりから「外差し」が目立ち始めた芝コンディションの判断が大きなポイントだった。芝は良馬場に回復していたが、長い直線の外回りコースでは、多くの騎手がインを嫌った。

 断然の支持にこたえて勝ったブラストワンピース(父ハービンジャー)は、思われていたより息の入れにくいバランス「59秒2-58秒3=1分57秒5」で展開するのが分かっていたかのように、また、そうなると大外に回って「直線600mだけのレース」に徹するのが最良の騎乗であることを読み切っていたようなレース運びだった。休み明けながら、ほとんど隙のない状態に仕上げた陣営も素晴らしかったが、コンビの池添騎手の落ち着いた騎乗も実に大きかった。直線、ノーステッキで絶えず自分より内に位置するライバルを見る余裕があった。

直線大外に持ち出して古馬相手に完勝のブラストワンピース(撮影:下野雄規)


 得意の左回りを選んだステップが、菊花賞(右回り1周半)のために死角なしの選択になるかどうかは分からないが、使い込めない馬なのはたしかなのでこれでローテーションはOK。春は、毎日杯のあと「日本ダービーにぶっつけ」はさすがに厳しかった。直線で狭くなったのは事実だが、ダービー挑戦をともすれば軽くとらえたのかと、日本ダービーの歴史(フサイチコンコルドの驚きの例外はあるが、2歳戦ができて70年以上、経験3戦で勝った馬はゼロ)に背を向けられてしまった印象があった。

 でも、もう3歳秋、入念な調教で満足のいく状態に仕上げられることも改めて分かり、菊花賞の有力候補に成長した。祖母ツルマルグラマー(父フジキセキ)の4分の3弟アルナスライン(父アドマイヤベガ)は、2007年の菊花賞2着馬。落ち着きが増し、折り合いに不安なしのレース運びから、距離不安は少ない。馬体重が530キロ前後で落ち着いたのも、今後のビッグレースを考えると心強い。

 3歳馬の勝利は、1983年のアップセッター以来のことになるが、平均すると年に1頭も出走していない計算なので、これは35年ぶりが強調されるような快挙ではないだろう。軽いハンデになるのは分かっているから、コース適性があるならもっと出走する馬がいて不思議ない。強敵がそろうことも珍しくない函館記念を勝った3歳馬は、同じ1983年以降「4頭」もいる。

 2着メートルダール(父ゼンノロブロイ)も、流れを読んだ決め打ち成功。ちょっと余裕のある馬体に映ったが、もともとポン駆けはOK。途中でムリに動かない作戦がきれいにはまった。ロスはあっても外に出したのも正解だった。

 3着ショウナンバッハ(父ステイゴールド)も前半ほとんど最後方にいたから、あえて勝ち気にはやらない位置取りが、結果として正解。直線は馬群に突っ込み、久しぶりに本来の底力の片鱗を発揮しての快走だった。

 期待したエンジニア(父シーザスターズ)は、パドックではホライゾネット着用で落ち着いていた。直線はもっと伸びるかと思えたが、スパートしたい地点での反応が悪かった。長い直線が初めてのためもあったか。ゴール前は再び伸び脚をみせていただけにちょっと残念だが、この馬はまだ変わってくる。

 ストーンウェア(父バードストーン)は、うまく中団に位置したものの、自分より後方にいた馬が「1〜3着」だから、結果的に前半に楽ができなかったということか。元気にみえたが、蛯名騎手とともに小倉に遠征し、今回は新潟。ふつうの年なら平気でも、猛暑の今年はちょっと厳しかったかもしれない。

 2番人気のグリュイエール(父ディープインパクト)は、決してパドックの気配は悪くなかったが、休み明けで、初の新潟コースのためか、スタート直後からクビを振ってフラフラしているようでは苦しい。巻き返したい。

 セダブリランテス(父ディープブリランテ)は、ハンデ55キロの中山金杯が辛勝だったのに、8ヶ月ぶりでいきなりトップハンデの57.5キロは、ライバルに比べちょっときつい負担重量だったか。もともと快速系の切れるタイプではないから、1分57秒5(レース上がり34秒6)の勝ち時計になっては完敗もやむをえない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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