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ホッカイドウ競馬から遠征ナイママに期待 札幌2歳S

  • 2018年09月05日(水) 18時00分
生産地便り

注目はやはりホッカイドウ競馬から遠征してきているナイママ



遠く感じるが、近くなった札幌競馬場


 かつて北海道シリーズは函館、札幌ともに4週ずつが割り当てられ、6月中旬から始まって、おおよそ9月一杯、どうかすると10月上旬まで開催されていたりしたものだが、それが各6週に短縮されてからは、本当に「短くなった」と感じる。

 札幌の場合、開幕週は、このところ月最終週になっており、毎年、浦河では「うらかわ馬フェスタ」と重複するために出かけられずにいる。その後、半月でお盆を迎え、お盆が過ぎれば日高ではサマーセールが近づき、なかなか気分的に落ち着かない。生産者にとって一大イベントであるサマーセールが終わった後となると、もう札幌開催は残り2週である。「競馬場が遠くなったような気がする」と年配の生産者などは苦笑する。

 ただ、今春の日高自動車道厚賀インターの開通により、新冠以東の人々にとっては札幌までの所要時間が確実に短くなった。それほど急がずとも、札幌競馬場までは3時間(浦河の私宅からの話だが)かからずに辿り着ける。全行程約180キロのうちおおよそ3分の2が高速道路を走行できるようになったので、より便利にはなったのは間違いない。

 さて、札幌2歳ステークス。今年は14頭の出走となったが、個人的な注目度では、やはりホッカイドウ競馬から遠征してきているナイママであった。前走のコスモス賞では、小雨の降る稍重の札幌コースで、断然1番人気のアガラス(ルメール騎乗)に1馬身4分の1差で勝ち、予定通りここに駒を進めてきた。

 抜けた馬のいないやや混戦ムードの中、ナイママは、クラージュゲリエ(M.デムーロ)2.5倍、ウィクトーリア(田辺)2.9倍、アフランシール(岩田)6.4倍に続く4番人気(8倍)。鞍上は五十嵐冬樹騎手でホッカイドウ競馬の田部和則厩舎所属とくれば、どうしてもコスモバルクの姿と重なってくる。オーナーは言わずと知れた岡田繁幸氏。「中央重賞への挑戦」というファンの期待もあり、話題性は十分であった。

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馬場入り直前のナイママ

 今回、ナイママが引いたのは大外14番。距離はコスモス賞と同じ1800mなので、十分にこなせるはずだが、どんなレース運びになるのかが気になっていた。

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後方から追走するナイママ

 定刻通りスタート。まずラバストーン(加藤)、セントセシリア(川島)、ナンヨーイザヨイ(藤岡佑)あたりが先頭集団を形成し、最初のゴール前を駆け抜けて行く。ナイママは外側をやや後方から追走する。2コーナーから向こう正面にかけて、五十嵐騎手が少しずつナイママを前に進出させているのがビジョンで確認できる。3コーナーから4コーナーまでの間に先頭に進出すると、そのまま直線に向いてきた。

 そのすぐ外側をニシノデイジーが併走するように並ぶ。この2頭がやや抜け出したかに見えたが、ほどなく1番人気のクラージュゲリエも差を詰めてきて、両馬に迫る勢いだ。

 先に仕掛けたナイママをニシノデイジーが外から追い、並んだと思ったらゴール前ではほんの少し前に出ていた。勝ったのは6番人気のニシノデイジー、勝浦正樹騎手であった。

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勝ったのは6番人気のニシノデイジー

 ナイママは惜しくもクビ差で2着に敗れた。とはいえ、十分に見せ場は作れたレースであった。

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ニシノデイジーのパドック

 ところでこのレースを制したニシノデイジーは、母系を辿ると三代母にニシノフラワーのいる“西山ブランド”そのものの血統である。ニシノフラワーにセイウンスカイを配合して誕生したのが祖母のニシノミライ、それにアグネスタキオンが配合されて母のニシノヒナギクが生まれた。母、祖母ともに未勝利馬だが、この母系を守ってきた西山オーナーの執念がニシノデイジーの快走に繋がった、のかもしれない。

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レース後引き上げてくるニシノデイジー

 西山ブランドと言えば、ナイママの母もニシノマドカで、こちらも西山茂行オーナーの所有馬としてJRAで1勝している。ニシノデイジー、ナイママともに「渋い母系」からこうして活躍馬が出てくるのもまた競馬の魅力のひとつだ。

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ニシノデイジーの関係者記念撮影

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ニシノデイジーの口取り

 なお、ニシノデイジーは、父ハービンジャーの牡馬で、高木登厩舎。馬主は西山茂行氏。生産は浦河の(有)谷川牧場。インカンテーション、ファンディーナと、このところ注目馬を輩出している浦河の名門からまた1頭、期待馬が出てきた印象である。

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札幌競馬場スタンド風景

 この日の札幌競馬場は土曜日ながら、天候にも恵まれて、18640人もの入場人員であった。最終レース後には種牡馬入りしているロゴタイプの展示なども行なわれ、夕刻まで賑わいが続いていた。この日に札幌競馬場を訪れる度に「もう少し開催が長くても良いのになぁ」と強く思う。まだしばらくの間北海道は快適な気候が続くというのに、何だか勿体ないような気がしてならないのだ。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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