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北米フレッシュマンサイヤーチャンピオンを巡る動向

  • 2018年09月12日(水) 12時00分


◆リードするのはゴールデンセンツ

 2018年の北半球の競馬も、シーズンを締めくくるクライマックスへ向けた動きが活発化してきた。これからが、高額な賞金が懸けられたレースが目白押しの季節ゆえ、ランキングの類はここから大きく変動しておかしくないのだが、この機会に欧米のフレッシュマンサイヤーチャンピオンを巡る動向をおさらいしておきたいと思う。

 9月9日の競馬が終わった段階で、北米におけるフレッシュマンサイヤーランキングをリードしているのは、スペンドスリフト・ファームで繋養されているゴールデンセンツ(その父イントゥミスチフ)である。

 7月14日にエヴァンジェリンダウンズで行われた特別ヤングフューチュリティ(d5.5F)を制したピケット(セン2)や、8月4日にルイジアナダインズで行われた特別ルイジアナCジュヴェナイルフィリーズ(d6F)を制した後、9月4日にレミントンパークで行われた特別ラセニョリタS(d8F)で2着となったシルヴァーセンツ(牝2)らの活躍で、55万0229ドルの賞金を収得。2位以下に15万ドル以上の差をつけて首位を走っている。 

 上記2頭を含めて、ここまで送り出した2歳勝ち馬は12頭いるが、既にふた桁の勝ち馬を送り出している北米新種牡馬はゴールデンセンツ1頭のみだ。また、ここまで出走を果たした2歳馬の数が37頭というのも、新種牡馬の中では最多で、つまりは、ゴールデンセンツ産駒は全体的に仕上りの早さを発揮しているのである。

 ダグ・オニールが管理したゴールデンセンツは、2歳の9月2日にデルマーのメイドン(AW5.5F)でデビュー、このデビュー戦は、オニール師の管理馬から禁止薬物が出て資格停止中だったため、アシスタントのレアンドロ・モラ厩舎所属馬として出走している。ここを、1分02秒79という好時計をマークして、7.1/4馬身差で圧勝し、デビュー勝ちを果たしている。

 次走はいきなり東海岸のG1シャンパンS(d8F)に挑んで、この年の2歳牡馬チャンピオンとなるシャンハイボビーの2着に健闘。その後、ブリーダーズCには出走せず、デルタダウンズのG3デルタダウンズジャックポットS(d8.5F)に廻り、ここを制して重賞初制覇を果たした。

 すなわち、極端な早熟タイプであったわけではないが、2歳時から高い能力を示していたのがゴールデンセンツだったのだ。3歳4月にG1サンタアニタダービー(d9F)を制し、G1初制覇。そして、3歳時・4歳時と2年連続でG1ブリーダーズCダートマイル(d8F)を制し、2015年にスペンドスリフトで種牡馬入りしている。この年の種付け料は、2015年の新種牡馬の中では4番目の高額となる1万5000ドルに設定された。

 昨年の1歳馬市場で、ゴールデンセンツの初年度産駒63頭が、平均価格4万8109ドルで購買された。種付け料の3倍以上の価格だから、悪い数字ではない。だが、例えば同期の新種牡馬では、ウィルテイクチャージの初年度産駒が平均16万6015ドル、カイロプリンスの初年度産駒が平均13万8279ドルで購買されていたのと比較すると、やや物足りない数字であった。その影響からか、2018年は種付け料が1万2500ドルに減額されている。

 ただし、今年に入ってから開催された2歳トレーニングセールで購買された、26頭のゴールデンセンツ産駒の平均価格は10万4865ドルと、1歳セールの倍以上の価格に上昇した。つまりは、動かしてみたら、見た目以上に動く馬が多かったのであろう。そして、2歳戦におけるここまでの成績を見ると、トレーニングセールにおける評価がそのまま反映された結果が出ているようだ。

 あとは、重賞級の大物が出現するかどうか、である。早い時期に1〜2頭の重賞勝ち馬が出れば、ゴールデンセンツは一気にブレークする可能性もありそうだ。

 フレッシュマンサイヤーランキング第2位には、これもスペンドスリフトで供用されているクロストラフィック(その父アンブライドルズソング)がランクインしているが、これはかなり意表をつかれる結果だ。

 というのも、クロストラフィック自身は非常に大柄で、なおかつ骨瘤が固まるまでに時間がかかり、デビューを果たしたのは4歳の1月だったからだ。メイドン(d6.5F)、一般戦(d8F)を連勝すると、3戦目にはG3ウェストチェスターS(d8F)に挑み2着に好走。続くG1メトロポリタンH(d8F)でも2着となった後、サラトガのG1ホイットニーインビテーショナルハンデキャップ(d9F)を制しG1制覇を果たしている。

 そういう馬であったがゆえ、8月22日にジェイウォーク(牝2)がデラウェアの特別ホワイトクレイクリークS(d5.5F)を、9月2日にはデイムプラタ(セン2)がカンタベリーパークの特別ノーザンライツフューチュリティ(d6F)を、9月8日にはダンシンシューズ(牝2)がカナダのヘイスティングスで特別サディーダイヤモンドフューチュリティ(d6.5F)を制し自身2度目の特別制覇という、ここ最近の“快進撃”を目の当たりにし、いささか面食らっているというのが正直な感想だ。今後は、1歳市場でもマークの必要な若手種牡馬と言えそうである。

 ランキング第3位が、昨年の1歳市場で産駒の評判が高かったカイロプリンス(その父パイオニアオヴザナイル)だ。一方、2015年の種付け料が同期では最高額の3万ドルで、昨年の1歳市場でも初年度産駒が好感をもって迎えられたウィルテイクチャージ(その父アンブライドルズソング)は、目下のところランキング第8位と、やや出遅れている。彼自身、デビューは2歳の8月だったが、本格化したのは3歳シーズンの後半だっただけに、産駒も時間がかかるタイプが多いのかもしれない。

 来週のこのコラムで、フレッシュマンサイヤーランキング検証の欧州編をお届けしたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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