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この先の展望が大きく広がった2頭/毎日王冠・京都大賞典

  • 2018年10月09日(火) 18時00分

毎日王冠を勝ち、名牝への道が見えたアエロリット


 秋のビッグレースに向けて始動する注目馬の揃う毎日王冠は、今年はビッグネームが少ないといわれていたが、上位を占めたのは4着に食い込んだ7歳ステファノス(父ディープインパクト)以外、7着までが「若い3歳と4歳」だった。秋の主役級とまでは期待されていなかった伏兵まで含め、このあとがすごく楽しみになる成長株が多かった。

 勝った4歳牝馬アエロリット(父クロフネ)は、馬体重は春シーズンと大きくは変わらない508キロだが、明らかにボリュームアップ。多くの馬が充実する4歳の秋を迎え、少しもムダ肉はないのにひと回り大きく、たくましく映った。

 先行して抜け出した3歳時のNHKマイルC、さらにクイーンSは持ち味のスピード能力をけれんのない積極策で存分に生かし切ったが、今回の主導権を握っての押し切りは、バランスが鮮明に分かるように前後半の800mに分けると、「47秒3-(11秒7)-45秒5)=1分44秒5となる。

 クイーンSの1800mは前傾バランスの「46秒8-(11秒5)-47秒4」=1分45秒7であり、NHKマイルCも3コーナーから行く気になったから苦しいバランスの推定「46秒3-46秒0」=1分32秒3だった。

 ところが、今回はコースレコードと0秒3差の1分44秒5の快時計なのに、アエロリットの「行く気に任せて」グングン先行した快時計ではない。モレイラ騎手が内を確認して、相手が絡んでこないことを分かって主導権をにぎると、たちまちスムーズに折り合った。行きたがっていないから、後続に脚を使わせながら突き放したい残り600m〜400mの1ハロンは「10秒9」後半800m45秒5に前出の(11秒7)を加えると、自身の後半1000mは「57秒2」となる。

 モレイラが絶賛するように「リラックスして走っていて、プレッシャーをかけたらしっかり反応してくれた」まさにその通りの記録が残ったのである。

重賞レース回顧

モレイラが絶賛する勝利を飾ったアエロリット(撮影:下野雄規)


 2016年に勝ったルージュバック(重賞4勝)は今年2018年春から繁殖入りしたばかりだが、過去に牡馬を封じて毎日王冠を勝った牝馬シンコウラブリイ、ダイナアクトレス、シービークインなどは、繁殖に上がってもチャンピオン牝馬である。毎日王冠を勝ったことにより、名牝への展望まで広がった。

 クロフネ産駒は、軽快なスピード能力をフルに全面に出すからだろう、牝馬に活躍馬が集中することで知られる。アエロリットの場合は、3代母ステラマドリッドを筆頭に圧倒的に牝馬の活躍が連続するファミリーでもある。

 このあとはマイルCS挑戦が発表されている。もともとバランスラップを踏めるアエロリットは、前半を自制できるスピード型にまで成長したので、京都のマイルCSは合うはずである。

 猛然と2着に突っ込んだ3歳ステルヴィオ(父ロードカナロア)の中身(上がり断トツの33秒2)も、絶賛されていい。皐月賞、日本ダービーは善戦にとどまったが、これでマイル〜2000mで大きく前進すること必至となった。

 4歳キセキ(父ルーラーシップ)は、不良馬場を差し切った菊花賞の印象が強かったが、優れたスピード型を送って当然のロンドンブリッジが祖母。10キロ増の今回の体つきは、光かがやいていた。積極策で高速の1800mを乗り切った自信は大きい。58キロでもあった。これで現代の選手権距離(2000〜2400m)を不安なくこなせることを証明したことになる。

 5着は3歳ケイアイノーテック(父ディープインパクト)。最後は力尽きたが、高速馬場とはいえ、この相手に1800m1分44秒9は立派である。

 人気のサトノアーサー(父ディープインパクト)は、この父の産駒にしては珍しいクビを突き出すフットワークをみせる馬。実戦でもシュッと動けるタイプではないから、出負け気味に流れに乗れなかったのが痛い。直線もスムーズに馬群をさばけなかったが、軽快ではなくとも全体スピードで見劣ることはない。前半ゆったり展開する2000m級の方がいいのではないかと感じた。

 「京都大賞典」で、ようやくというか、やっとサトノダイヤモンドの復活が成った。激しく落ち込んでいた心身のスランプを脱したのである。今回は気力が戻っていた。また、自分からスムーズに動ける京都は思われる以上に絶妙に合うのだろう。

重賞レース回顧

スランプを脱しサトノダイヤモンドの復活が成った(c)netkeiba.com


 このあとの展望は、ここは見解が分かれるが、個人的には実績とは違って本当は2000m級がベストではないのか、という気もする。おそらくジャパンC→有馬記念の路線になるだろうし、2400m級は日本ダービー2着、有馬記念制覇の距離だから、ふつうは不安などあるわけもないが、ジャパンC直前に先入観なしにもう2回、3回とこれまでのレースを再生して考え直したい。

 人気のシュヴァルグラン(父ハーツクライ)は、3〜4歳時に比べると気性的にポン駆けが利かなくなっている。仕上がりも馬体も上々にみえても、今回は仕方がないと映った。もっとみんなが苦しくなるような厳しい流れで、底力の追い比べになる本番で見直したい。

 7歳アルバート(父アドマイヤドン)は、あの形になって3着はやっぱり距離不足だったか。上がり34秒4は、3連覇中のどのステイヤーズSよりずっと速いのだから仕方がない。不滅の4連勝がちかづいている。活力を温存したい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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