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一流騎手も参戦し、盛り上がりを見せた第45回北海道2歳優駿

  • 2018年11月07日(水) 18時00分

「めでたし、めでたし」の結果に終わる「はず」であったが…


 去る11月1日、門別競馬場にて恒例の「北海道2歳優駿」が行なわれた。この日は、胆振東部地震復興支援競走として、第8レースと9レースに「門別グランシャリオジョッキーズ」が組まれ、JRAのリーディングを独走するルメールを始め、戸崎圭太、福永祐一の3騎手が、そして大井からは“レジェンド”的場文男、金沢・吉原寛人、高知・赤岡修次、兵庫・永島太郎の4騎手も参戦し、メインレース前の早い時間帯からひじょうに盛り上がりを見せた。

 場内は久々に大混雑であった。天候も良く、この時期としてはかなり暖かな夜で、寒さもそれほど気にならない。例年、11月ともなれば気温低下と悪天候(降雪の可能性もある)に祟られる季節だが、まずはツキに恵まれたと言えるだろう。

 第8レース「門別グランシャリオジョッキーズ1」は10頭立て、1700mにて実施され、赤岡修次騎手のスマートアエロ(田中淳司厩舎)がペイシャレイズ(福永祐一)、フリーダムソート(ルメール)を抑えて優勝した。

生産地便り

門別グランシャリオジョッキーズ1を制したスマートアエロ(写真左)

 続く第9レース「門別グランシャリオジョッキーズ2」は1200m、9頭立てで行なわれ、ルメール騎乗のソイカウボーイが五十嵐冬樹・リンノゲレイロとの叩き合いをハナで制し、優勝。3着には福永祐一騎乗のキモンダッシュが入った。

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門別グランシャリオジョッキーズ2を制したソイカウボーイ

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的場文男騎手騎乗のシニスターブレイク

 この時点で、すでに「お腹いっぱい」になるくらいの内容の濃さであった。とりわけ、的場文男騎手を“生”で見られたのは大きな収穫と感じた。関東在住の方ならば、南関4場でレジェンドの騎乗ぶりを見に行けるが、北海道在住者にとっては、そう簡単なことではない。まったく衰えを感じさせない独特の騎乗スタイルといい、全身から放たれる強烈なオーラといい、まさしく競馬界のレジェンドそのものだと感じさせる存在感であった。

 第10レースを挟んで、いよいよメインの第11レース「北海道2歳優駿」に出走する各馬がパドックに姿を現した。

 このレースは、過去、地元勢が中央遠征馬と互角の勝負を演じてきており、ホッカイドウ競馬の2歳馬レベルが高いことを内外に示してきた。過去10年間の優勝馬を見ても、2008年メトロノース(中央)、2009年ビッグバン(ホッカイドウ)、2010年カネマサコンコルド(ホッカイドウ)、2011年オーブルチェフ(中央)、2012年アルムダプタ(中央)、2013年ハッピースプリント(ホッカイドウ)、2014年ディアドムス(中央)、2015年タイニーダンサー(ホッカイドウ)、2016年エピカリス(中央)、2017年ドンフォルティス(中央)と中央遠征馬に勝たれることの多い交流重賞の中では地元勢が大健闘している。

 今年は13頭が顔を揃え、中央からはトイガー(和田竜二)、テイエムアカリオー(横山典弘)、ミヤケ(ルメール)、イルジオーネ(北村宏司)の4頭が参戦してきた。残り9頭はすべてホッカイドウ競馬所属馬で、1番人気はウィンターフェル(井上俊彦)の3.1倍。続いて中央馬のミヤケ3.8倍が2番人気、以下イルジオーネ6.7倍、トイガー6.9倍とここまでが10倍を切る。

 1着賞金2500万円、距離1800m、発走時刻は午後8時ちょうど。1500人に迫る入場人員は、通常の3倍以上で、場内は熱気に包まれていた。

 定刻通りにゲートが開き、13頭が勢いよく飛び出した。先行したのは2番イグナシオドーロ(阿部龍)、マイコート(永島太郎)、リンノレジェンド(赤岡修次)と続き、1番人気ウィンターフェル(井上俊彦)は6〜7番手の位置。2番人気ミヤケはそれからさらに後方につける。

 イグナシオドーロが内埒を先頭で進み、4コーナーを回る。外からウィンターフェルがまくり気味に襲いかかり、直線ではぴったりと併せる形で2頭が馬群より抜け出した。

 そのまま重なるように並んでゴールイン。どちらが勝っているか、すぐには分からないような大接戦であった。そこから5馬身離れた3着にミヤケが入り、以下2馬身2分の1差の4着にホワイトヘッド(服部茂史)、さらに2馬身差の5着にトイガー(和田竜二)という結果となった。

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北海道2歳優駿ゴールの瞬間

 地元勢のワンツーで、改めて2歳ダート戦に関してはホッカイドウ競馬のレベルの高さを証明する形となり、ホッカイドウ競馬のファンにとっては「めでたし、めでたし」の結果に終わる「はず」であった。

 レース後、ウィンターフェルの井上俊彦騎手はやや首を傾げながら戻ってきた。またイグナシオドーロの阿部龍騎手は、馬上からずっと着順掲示板の方を凝視しながら、そのまま1着馬の枠に入り、馬装を解いた。ウィンターフェル井上俊彦騎手は2着馬の枠であった。

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阿部騎手とイグナシオドーロ引き上げの様子

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井上騎手とウィンターフェル引き上げの様子

 どちらが勝ったのか分からないまま、2頭が厩務員に引かれて歩きながら待機する形となったが、割に早くレースが確定した。1着7番、2着2番と発表され、ウィンターフェルが優勝、ということになった。

 その後は、ウイナーズサークルにて口取り撮影、井上俊彦騎手のインタビュー、関係者に表彰が行なわれ、最後は関係者による記念撮影で締めくくった。いつも通りの流れであった。

 ところが、レース確定直後に、裏ではとんでもない事態が生じていたことは各報道にある通り。何と1着馬と2着馬の着順を取り違えて発表、確定するという大失態を犯していたのである。

 次回、この問題にもう一度触れたい。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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