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世界的に牝馬が強い時代、ここもハイレベルな一戦/エリザベス女王杯

  • 2018年11月10日(土) 18時00分

身体の充実したあの馬の脱皮は十分考えられる


 近年、世界でも日本でもだいたい数年ぐらいの周期で「強力な牝馬」が脚光を浴びるパターンが生じている。世界ではエネイブル、ウィンクス…が男馬を圧倒し、日本でも6年ぶりに3冠牝馬アーモンドアイが誕生した。脚光を浴びるのはひとつの世代や1頭に限られるものではなく、GIを含み重賞4勝の4歳ディアドラは一段と強くなり、4歳アエロリットも強力に成長した。

 エリザベス女王杯にその3頭は顔を見せないが、昨年の勝ち馬モズカッチャン以下、少しもレベルが低いことはないと思える。

 ここまでGI【0-4-0-3】のリスグラシュー(父ハーツクライ)の前回府中牝馬Sは、強力なGI馬ディアドラとクビ差だけ。ゴール寸前、ディアドラに迫力負けしたのは事実だが、上がり32秒6は自己最高。ジリ脚でも、詰めが甘い春までのリスグラシューではなかった。まだ非力感が残っていた昨年のエリザベス女王杯も、インで包まれて不完全燃焼ながら、最速タイの上がり33秒7で0秒4差だった。

 昨秋(440キロ前後)より、この秋は20キロ以上たくましくなっている。中間ビシビシ追いながら、木曜計測では476キロもあった。父ハーツクライも4歳暮れの有馬記念を勝つまで、GIは【0-3-0-6】。その代表産駒で今年の新種牡馬ランキング独走のジャスタウェイ(GI3勝)も、本物になったのは4歳秋に初GI制覇となった天皇賞(秋)からのこと。身体の充実した4歳秋のリスグラシューの脱皮は十分にある。

 置かれるケースもあるが、モレイラのスタートはうまい。もし、予想以上のスローになるようなら勝負どころで自分で動いて出る騎手でもある。

 前回の紫苑Sが破格の内容だった3歳ノームコア(父ハービンジャー)は、ルメールが騎乗する。前回の再現があればこちらも勝機十分。同じハービンジャー産駒で、昨年の勝ち馬モズカッチャンの評価も下げられない。

 伏兵は、目下7戦連続して馬券圏内を続ける5歳フロンテアクイーン。ランキングが低いのはやむを得ない。GIどころか重賞【0-5-2-5】である。だが、父メイショウサムソンの4代母は天皇賞(秋)、有馬記念の女傑ガーネット。母ブルーボックスボウから数えて3代母はトウショウボーイの半姉で、4代母はソシアルバターフライ。父母両系ともに、そのベースは日本競馬の発展に多大な貢献を果たしたファミリーであり、こういう日本の生産界が育てた配合の牝馬が台頭するのは、とくに大きな理由はないが、エリザベス女王杯にふさわしい気もする。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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