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【地方競馬ネット会議室(4)】地方競馬のギモンを一挙解決! 川崎理事インタビュー・後編

  • 2018年11月14日(水) 17時59分
NAR

▲矢野アナの直談判から、地方競馬の難解な“クラス分け”の話題に


ファンにも難解なクラス分け「JRAはトーナメント方式、地方はリーグ戦方式」


川崎 そういうやり方もありそうですね。いわゆる「情報のワンストップ化」ですね。では、そこでファンの方が見たいもの、知りたいことというのは? 矢野さんはどのように受け止めておられるのですか?

矢野 それぞれの主催者が看板レースを1つやったらそれでおしまい、ではダメです。そのレースを見ていたファンの興味が次のレースにつながっていきませんからね。なのでまずは、この先これがどこにつながるのかを伝えていただきたい。

川崎 おっしゃるように情報は伝わり、流れなければ意味をなしませんものね。昨年、NARのHPを全面リニューアルしましたが、常に改善を試みていますので、ただいま頂いたご意見も次回リニューアルの際の参考にさせていただきます。

矢野 それと、一番わかりにくいことの説明、つまり地方競馬特有のクラス分けの話ですね。JRAの場合には1つ勝ったらクラスが上がって、3つ勝ったらオープンというような、非常にわかりやすいスッキリしたシステムになっています。でも、地方競馬は違う。5着までの賞金を、何年かの期間で積み重ねていって、その金額によってクラスを上下させています。しかも、その金額の幅をどうするか、いつからいつまでの金額にするか、JRAや他地区からの転入馬をどう扱うか、などなど、規程が各主催者によって微妙に違っています。

川崎 そうですね。私は人に説明するとき、こんなふうに違いを例えているんですが、JRAは勝てば上に上がっていく“トーナメント方式”の競馬。一方、地方は、通算で10勝、15勝、あるいは3連勝、4連勝しても、まだ上のクラスに行かないことがありますが、これは“リーグ戦”の競馬なんです、と。

矢野 ほほう。

川崎 プロ野球がそうですが、長い期間をかけて1位を決めるやり方がありますよね・・。

矢野 プロ野球というよりもJリーグですか? 地方競馬のA級というのがJ1で、B級がJ2。で、時々そのメンバーの入れ替えが…。オッと、それはJリーグじゃなくて、大学スポーツに例えたほうがいいかもしれません。1部から下部までのリーグ戦があって、入れ替え戦があって、さらに他地区との交流試合や全国大会がある。それが交流重賞。

川崎 まぁ、そういうふうに考えたほうが早いのかなと感じています。で、なぜそんなことをしなきゃいけないかっていうと、やっぱり馬やレースの数、それに預託料と賞典諸手当との関係ですね。それと競走回数なども関係してきます。JRAの馬は1カ月から2カ月に1回ぐらいの割合で走っています。でも、地方では場合によっては1開催の前後半で2回使うこともあります。元気で丈夫な馬であれば50戦、60戦はいくでしょうし、100戦超えも珍しくはありません。

NAR

▲川崎理事が難解になってしまうクラス分けのジレンマを吐露


矢野 そうしないと、賞金額が違うので、馬主さんにお金が回っていかない?

川崎 そういう側面もありますね。そのあたりも含めて、“リーグ戦”でなければ抜け出すことができない仕組みが作られたのだと思います。

読者アイデアに言及「もっとハンデ戦を増やしては?」


矢野 ところが、その弊害というか、いつも同じようなメンバー構成になったり、勝てない馬はなかなか勝てなかったり、という状況が面白味をなくしているという声もあります。当企画にも、「もっとハンデ戦を増やしたらどうか?」とのご意見が寄せられていますが?

川崎 馬の能力に応じて負担重量に差を付けるのがオーソドックスなハンデ戦ですよね。もちろん地方競馬にも一部のダートグレード競走ではハンデ戦を行っています。ただ、例えばBクラスの馬とCクラスの馬を同じレースで走らせる場合、クラスが混在するので、性別や年齢以外にクラス能力をベースに負担重量に差を付けますが、このように"クラスハンデ戦"としてレースを編成することも結構やっているんですよ。

矢野 今のシステムの中でハンデ戦をやろうとうすると、例えばBクラスの“リーグ戦”に出ている馬っていうのは、そんなに力量差があるわけじゃないですから、そんなに大きな重量差を付けられませんよね?

川崎 確かにそうですが、BクラスでもさらにB1、B2、B3と3段階に分けたりしているので、力が接近している中でのクラスハンデは、ある意味大きな要素かも知れません。逆に、地方の交流競走ですと、例えばある地区のA級馬と他地区のA級馬とでは力の差があり過ぎて、他地区の馬主や厩舎サイドから「ハンデ戦をやってくれ」とよく言われるんです。

 しかし、一方では、「ハンデ戦はどの馬にも勝つチャンスはあるけど、逆に言えば軸が定まらないから、馬券買いを控えている」なんて声を聞いたりすると、ちょっと複雑な気持ちになります。

 ハンデを決める際、概ね上限が60kg、下限が51〜52kgという幅を決めていますが、極端なことを言えば、ダートグレード競走で成績どおりの能力をそのまま適応するとなると、JRAの馬は64〜65kgにするか、あるいは地方の馬を48〜47kgぐらいにしないと、たぶん、いい勝負にならないという状況が現実的な問題としてあります。ところがJRAの馬は64kgでも出てくれるのか? 地方は40kg台で乗れる騎手はいるのか? という話になっちゃう。

矢野 そのとおり。

川崎 そうすると、おのずとハンデ戦を組みたくても組めないというジレンマが出てくるんです。そこで、ひとひねりして、そこに獲得賞金による別定戦なり、クラス混合戦などを組みながら負担重量に差を付けて、ゴール前の勝負を見ていただけるような趣向を凝らしているんですけれども…。

NAR

▲内部でも度々話題に挙がるというハンデ戦、負担重量の観点から実施のハードルは高い


矢野 そこは、ファンのみなさんにもご理解いただきたいですね。地区によって力の差があると言えば、例えばJRAの未勝利馬や高知のこのクラスにいた馬などが、どうしてここへ移籍するとこのクラスなの? なんていうわかりにくさもあります。そういうことをわかりやすく伝えるためには、やっぱり広報のシステムとか、ホームページとか、ファンが「あぁ、そういうことなのか」ってわかるような周知のさせ方が必要になってくると思うのですが。

川崎 おっしゃるとおりですね。例えば、主催者によって1着が300万、400万の賞金と10万、20万の賞金とでは賞金体系が全く違います。低い賞金で10回勝って高額賞金の1勝馬の獲得賞金になる、なんていう違いがある状況で交流競走や移籍が行われますと、馬の能力とは別に賞金格差の話を持ち出さざるを得ないんです。つまり、各競馬場や地区の競走馬の実力や実績を加味して同じ土俵に乗せて競わせることが必要ですね。

矢野 そこをわかりやすく、というのはなかなか難しい問題ですね。

川崎 そもそも地方には、よその競馬場のレースに出るという考え方があまりなかったんです。馬券にしてもそうでした。

矢野 そこだけで売れていればよかった。

川崎 えぇ。以前は、都道府県単位で発売認可が下りて、周辺のお客様を対象に競馬を行っていましたから。今はむしろ、全国の利用者に多くを買っていただいているし、競走馬も外に出て行って良い成績を上げるといった流れが出来上がっているので、これからは更に交流を押し進めるという立場に立った新たな取組みが必要だと思いますね。

矢野 そういう下地があって、変えにくいところが多いのが地方競馬の一番のネックというか…。

「今は過渡期」常により良い形に改善を


川崎 そうですね。ただ、JRAとの交流や地方間での交流がさらに活発化していることを受けて、そのような垣根を取り外す動きも出てきています。例えば、最近になって変えられたことと言えば、減量騎手の負担重量です。JRAの藤田菜七子騎手がデビュー直後に地方に来たときに、中央の減量ルールが地方では適応されなかったんですが、それが大きな話題になりました。

 さらに、地方の中でも競馬場によってバラバラで、女性騎手であれば1kg減というルールを独自に適用する競馬場もあります。でも、それは「公平ではない」ということで、女性騎手の扱いは別にしても、少なくとも減量騎手の交流に関わる負担重量についてはJRAと同じに統一化したんです。具体的には、デビューからの勝鞍数と年数によるルールも含めてです。まだ一部の地区で部分的な調整をされていますが、ここはかなり進んだ方です。

NAR

▲藤田菜七子騎手のデビューが負担重量改善のきっかけに(撮影:高橋正和)


矢野 競馬場によって開催日数やレースの数も違うので、そこを統一するのは?

川崎 大変です!(笑)。馬券発売でJRAとの連携が進んで、新たにネットで地方の馬券を買っていただいているお客様の多くがJRAのお客様だということがわかってきました。そうすると、これまで以上にJRAのお客様から見て分かりやすさに照準を合わせていかなきゃいけない。

 ただ、レースの開催日数やレース数を一律に揃えることは大変難しいんですが、各主催者の経営判断や馬資源を念頭に置いて、調整が必要なのかなと感じております。

 片や、中央の馬主さんには地方の馬も所有してもらいたいと思うんですね。そこで、ほとんどの競馬場で勝負服のルールも変えていただきました。最近まで、地方は騎手服でした。これも今まではなかなか変えられなかったんですよ。

 中央の馬主さんが大切な愛馬を地方のレースに出したとたんに、ご自分で決めたデザインの勝負服が知らない誰かの騎手服になっちゃっている。「このやり方はどうなんだ?」っていう話をずいぶんいただいていました。馬主服の着用は特定のレース限定ながら、門別競馬場から始まって、今では一部の主催者を除いてJRAの馬主服でも出走できるようになりました。

NAR

▲馬主服を着用する的場文男騎手(撮影:高橋正和)


矢野 それはいいとして、地方の騎手服の中には、中央の馬主服をモデルにしたものがあるので、その両方が同じ枠に入ると、どっちがどっちだかわからなくなるんです(笑)。できれば帽子の色を変えるなど、わかりやすくしていただきたいですね。

川崎 アナウンサー泣かせですよね。今年は大井の的場文男騎手が地方最多勝記録を塗り替えましたが、そういうときはこの人の騎手服で勝たせてあげたいと思う気持ちが働きますよね。長年にわたって親しまれた騎手服ですから、今はそこを変えていくための過渡期ではないでしょうか。

矢野 前回の理事長インタビュー掲載の後、読者のみなさんから質問や提言をいただきました。今回はそれも踏まえてお話を伺いましたが、ほかに目を引くものはありましたか?

川崎 これね、僕もびっくりしました! 実は今朝の役員会にこれらの提案内容を紹介し、「今後、対応を詰めていきます」と報告したんですよ。正直、こんなに反響があるとは思っていなかった(笑)。私的に目を引いたのは、レース編成やジョッキーに関するアイデアですね。

矢野 「騎手の交流戦を増やしてほしい」、「ファンとの交流会を開催してほしい」などですね。

川崎 早速、騎手会長に「こんな声が出てるけど」っていうことで話をしようと思っているんです。すでに佐賀の「里帰りジョッキーズカップ」や、岩手の「ジャパンジョッキーズカップ」などがありますが、今回、北海道が震災の影響を受けていて、「騎手クラブとしても応援したい」という声も上がっていますので、その復興支援も兼ねて、ふだん乗らないホッカイドウ競馬以外の騎手に騎乗していただくとか、その反対に、門別の騎手が佐賀や高知の競馬場に乗りに行くとか、何かやるべきだと考えています。(※インタビュー後に11月1日にJRA・他地区の騎手が参加する復興支援レース「門別グランシャリオジョッキーズ」開催がホッカイドウ競馬からリリースされる)

NAR

▲「早速、騎手会長に“こんな声が出てるけど”って話をしてみようと思います」


矢野 ぜひ読者の声を実現させてください。

川崎 そうですね、はい。まだまだ課題は山ほどありますので、ファンのみなさんからのご意見を頂戴しながら、いろいろと工夫を凝らしていきたいと思います。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

矢野 こちらこそ。今回はどうもありがとうございました。

(次回の掲載は1月予定です)


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