大種牡馬ノーザンダンサーの「血は生きている」/マイルCS
やがては中距離もこなしてくれる、そういう未来に期待したい
東京1600mにコースレコードタイの1分31秒3(今春の安田記念1着)、京都1600mにはコースレコードと0秒2差の1分31秒5(今春のマイラーズC2着)がある4歳モズアスコット(父フランケル)は、ここまでキャリア12戦だけ。マイル戦も【3-1-0-0】。まだこれからさらにパワーアップするだろう。ここまでの全5勝はマイル以下だが、15年の勝ち馬モーリスや、父フランケルのように、やがて2000mもこなしてくれる可能性が高い。そういう未来に期待したい。
尻が大きく映る腰回りの強調された身体つきは、父フランケル(その父ガリレオ)も、母の父ヘネシー(その父ストームキャット)にも共通する体型だが、このモズアスコットは、父フランケルも、その母の父デインヒルも、一方で母方の父ヘネシーも、3代母の父ニジンスキーも「ノーザンダンサー直父系の種牡馬」なので、血統図にするとノーザンダンサーの「4×5×5×5」となる。
ダイヤモンドにも例えられた20世紀最大の種牡馬ノーザンダンサーの名前が4回もするのは、いかにも近年の活躍馬らしい血統背景といえる。ノーザンダンサーの血がちりばめられていれば有力馬なのか。そんなことはないが、パワー兼備のスピード能力に優れ、少々苦しくなってもそのスピードを持続させ、さらに伸びる闘志があるのがマイルのチャンピオンであり、それはノーザンダンサー(系)の最大の特質でもある。
半世紀も前の大種牡馬ノーザンダンサーの影響力はもう薄れただろう。というと、さすがにノーザンダンサーの「3×4」とかの時代ではないが、必ずしも薄れたとはいえない。今回のマイルCSの出走馬で、ノーザンダンサーのクロス(5代血統表に登場する種牡馬31頭のなかに、その名が複数回出現)がないのは、アルアインとレーヌミノルのたった2頭だけ。ほかの16頭にはすべてノーザンダンサーのクロスがある。今年も出走する2017年の勝ち馬ペルシアンナイトは、この偉大な種牡馬の「4×5×5」であり、16年のミッキーアイルは「4×5×5×5」。15年のモーリスも「4×5×5×5」だった。
ペルシアンナイトは6代血統表に拡大すると「4×5×5×6」となる。そうすると、もう3年連続して血統表にノーザンダンサーが4回以上登場する馬が勝ち続けていることになる。そういう時代に移ったのだろう。ノーザンダンサーは半世紀も前の馬になったが、遠い昔のハイペリオンや、セントサイモンと同様、時が経ち、4代前や、5代前に盛んに登場するケースが増えたことにより、いやでもクロスが生じる。そこで影響力が薄れたとはいえないのである。
今年、ノーザンダンサーが5代血統表に3回以上登場してクロスするのは、「エアスピネル、カツジ、ペルシアンナイト、ミッキーグローリー、モズアスコット」の5頭だが、4本もクロスするのはモズアスコットと、6代前まで拡大したときのペルシアンナイトの2頭だけだった。
こんなことは取るに足らない検討要素の一つだが、血統とは血のつながりのことであり、近親交配の多いサラブレッドの場合、明らかに「血は生きている」のである。