スマートフォン版へ

天災と人災に振り回されたなか、今年度のホッカイドウ競馬が終了

  • 2018年11月21日(水) 18時00分
生産地便り

門別パドックと場内風景

意味深長に聞こえる「本当に堂々と勝てた」


 11月15日(木)、今年度のホッカイドウ競馬が終了した。9月6日の胆振東部地震発生により、7日間の開催休止を余儀なくされたことから、当初は11月8日までの予定だった日程を1週間延長することになったのである。

 毎年、11月中旬は晩秋から初冬へと季節が移るちょうど境目になり、運が悪ければ、降雪や低温に見舞われてしまう。幸い、今年は例年になく初雪の便りが遅く、この日も割に穏やかな暖かい夜だったのは何よりであった。

 最終日を締めくくるのは、二つの重賞である。まず第11レースには「第6回ブロッサムカップ」(2歳牝馬オープン、別定)距離1700mが行なわれ、9頭がエントリー。1番人気はスズカユース(岩橋勇二騎手)の2.4倍。続いてイージーナウ(桑村真明騎手)の3.4倍、さらにグレイアンジェラ(阿部龍騎手)4.7倍、タイムゴールド(井上俊彦騎手)5.0倍と人気上位馬4頭は評価が割れていた。

 発走時刻は20時ちょうど。レースは先頭が何度も入れ替わる展開になったが、直線残り200mのところから抜け出したイージーナウが内側で粘るグレイアンジェラ、アブソルートクイン(服部茂史騎手)を抑え優勝した。

生産地便り

ブロッサムカップゴール前

 イージーナウは、父シニスターミニスター、母プリエミネンス(その父アフリート)という血統の2歳牝馬。角川秀樹厩舎の管理馬で、生産、馬主ともに(有)グランド牧場。

 レース後桑村真明騎手は「スタートの上手な馬で、好きな位置取りでレースのできる馬ですから、理想通りの展開になりました。コーナーも自分のペースで回れましたし、終いもしっかり反応してくれました。目いっぱいだったのですが、最後までしっかりがんばってくれたと思います。小柄な牝馬ですが、力強い走りをしてくれますし、小回りのコースでも対応してくれると思います」とコメントしていた。

生産地便り

ブロッサムカップ口取り

 母のプリエミネンスは周知の通り中央地方の両方で8重賞を制した名牝である。イージーナウはこれで通算成績が7戦3勝2着1回3着1回、獲得賞金は416万5000円となった。

 最終の第12レースは恒例の「第61回道営記念」である。距離は2000m。人気の中心は目下重賞5連勝中のスーパーステション(阿部龍騎手)で1.3倍。続く2番人気はタービランス(井上俊彦騎手)の5.7倍。さらにホッカイドウ競馬に復帰後これが3戦目となるハッピースプリント(宮崎光行騎手)の8.7倍と続く。

 レースは、前評判通りに、スーパーステションが終始楽な手ごたえのまま先行し、4コーナーでタービランスとハッピースプリントを振り切ると、後は見る見る間に差を広げ、文句なしの圧勝であった。2着は6馬身差でタービランス、3着には直線でハッピースプリントを交わしたドラゴンエアル(服部茂史騎手)であった。

生産地便り

道営記念を圧勝したスーパーステション

「ホッとしています。ゲートが開いたら馬はいつも通りに出てくれました。最初の直線、もっと絡まれるかと思いましたが、馬のリズムで運べました。馬自体にストレスはなかったと思います。自分の走りをするだけと思っていました。直線も迫ってくる馬の足音が聞こえなかったです。一戦ごとに走りが良くなっています。今日は本当に堂々と勝てたので胸を張れます」と阿部龍騎手。

生産地便り

引き上げてくる阿部龍騎手と井上俊彦騎手


生産地便り

阿部龍騎手、背後はスーパーステション

 また管理する角川秀樹調教師は「嬉しい。ホッとしてします。力をつけていますね。思ったより流れがスムーズでした。もっと絡んでくる馬がいるかと思ったのですが。テンよし、終いよしの馬ですね。(今年を振り返ってどうですか、の質問に)今シーズンは勝ち鞍こそ満足の行く数字ではなかったのですが、内容的には最高の年だったと思います。

 スーパーステションの今後については、東京大賞典か名古屋グランプリになるか、オーナーと相談しながら決めたいと思います。今の実力なら良い勝負ができるのではないかと期待しています」とコメントしていた。

生産地便り

角川調教師

 スーパーステションは父カネヒキリ、母ワイルドイマージュ(その父ワイルドラッシュ)という血統の牡4歳馬。角川秀樹厩舎の管理馬で阿部龍騎手が騎乗。生産、馬主はともに(有)グランド牧場。これで通算成績は23戦14勝、獲得賞金は4870万円となった。

生産地便り

道営記念口取り

 ホッカイドウ競馬はこれで76日間の開催を全て終了し、地震による開催休止に見舞われたものの前年を約5億円上回る合計151億4342万円を売り上げた。

 今年度は「天災」と「人災」に泣かされた年と言えるだろう。天災とは言うまでもなく胆振東部地震であり、人災とは、今月1日の「誤審事件」である。今日に至るも、主催者HPでは公式成績が訂正されることなく誤った着順のまま記載されており、地全協HPでも同様だ。ひょっとしたら、一度「確定」した結果については、たとえそれが誤りであることが判明しても訂正されずにそのまま残される、ということなのであろうか。

 正しい着順による配当金の払い戻しに関してはすでに何度かアナウンスがあるものの、この「公式記録」に関する訂正は未だ行なわれていない。

 道営記念後の阿部龍騎手の「今日は本当に堂々と勝てたので胸を張れます」というコメントが、何とも意味深長な内容に思えてくる。というのは、あの北海道2歳優駿で2着と判定されたイグナシオドーロ陣営が、スーパーステション陣営と全て「被っている」からである。

生産地便り

感きわまる阿部龍騎手

 この「前代未聞の誤審」は未だ決着していない。まだまだ誤審に関しては明らかにされていないことだらけだ。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング