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【騎手のGIコース解説】朝日杯FSのコースを、ローズキングダムで制した思い出と共に小牧太騎手が解説(無料公開)

  • 2018年12月09日(日) 18時01分
GIドキュメント

▲2009年の朝日杯フューチュリティSをローズキングダムで勝利した小牧騎手


GIが行われる舞台を、実際に勝ったことのある騎手やそのコースを得意としている騎手に解説していただくこのコーナー。朝日杯FSの阪神芝1600mの解説をしていただくのは、小牧太騎手です。朝日杯FSがまだ中山芝1600mの時代ではありますが、2009年にローズキングダムで勝利。現コースの阪神芝1600mも、重賞に限ると単勝回収率が1位というコース巧者です。コースのポイントを、小牧節でお届けします!

(取材・文=不破由妃子)


直線が長いというイメージ以上に前残りが多いイメージ


──小牧騎手といえば、2009年の朝日杯フューチュリティSをローズキングダムで勝利。当時は中山芝1600mでしたが、実はコース改修以降の阪神芝1600m(外回り)でも、重賞に限ると小牧騎手が単勝回収率で1位なんです(騎乗機会15回以上の騎手が対象)。

小牧 そうなんや。それは知らんかった。

──阪神の外回りコースは能力通りに決まりやすいと言われますが、そんななかでも穴馬を好走させるための秘訣について、過去のレースをもとに伺っていきたいと思います。

小牧 わかりました。僕が一番最初に阪神1600mで勝った重賞は、レジネッタの桜花賞やね。懐かしいなぁ。

──前走のフィリーズレビューは4番人気(3着)でしたが、桜花賞では一気に12番人気まで評価を落として。

小牧 僕自身、前走が最高に乗って3着やったから、本番はちょっと厳しいかな…と思ってたんやけど。でも、当日の状態がものすごくよくてね。ちゃんと桜花賞にピークを持ってきたんやなって。さすが浅見厩舎やなと思った。

──レースは7枠15番から中団の外目を追走。直線も外目を豪快に伸びてきて、きっちり差し切りましたね。

小牧 はい。道中も直線も手応えは抜群でした。レジネッタでいえば、たしかに桜花賞では人気はなかったけど、その後オークス3着、古馬相手のクイーンSでも2着やから、もともと力があったんやね。だから桜花賞のような競馬ができたわけで。本来、力が足りない差し馬にとって、あのコースで外枠は難しいから。

──なるほど。その後、2009年に6番人気ダブルウェッジでアーリントンCを、2011年に7番人気シルポートでマイラーズCを勝ってらっしゃいます。これらの好走については、コースの観点から言及すべきポイントはありますか?

小牧 僕の印象としては、阪神の芝1600mはけっこう内枠が有利でね。たしかダブルウェッジは最内だったんちゃうかな。

──はい、1枠1番でした。

小牧 ダブルウェッジは、ちょっと難しい馬だったんですわ。行きたがるし、外に張るところがある馬でね。だからアーリントンCでは、内枠がほしいなぁと思っていたんです。その前に僕が乗ったシンザン記念(2着)の内容から、逃げ馬の後ろに入れたら好勝負できると思っていたから。実際、その通りに乗ったでしょ?

──はい。好スタートからスッと3番手に控えて、直線までまったくロスのないコース取りでした。直線も、後ろにいる馬たちの動きを確認してから追い出す余裕がありましたものね。

小牧 うん。それもこれも、スタートしてすぐにあの位置を取れたから。あのレースについては、内枠を引いたことが大きかったね。

──阪神外回りの1600mというと、バックストレッチの中間からのスタート。最初のコーナーまでけっこう距離があるので、枠順による有利不利はそれほどないのかなと思っていました。

小牧 ん〜、力のある馬ならどこでもいいんやろうけど…。そうではない馬の場合、やっぱり内枠のほうが楽やね。スタートさえ決まれば、いち早くいい位置を取れるし、そこでじっくりタメられるから。

──続いてマイラーズCを勝ったシルポート。逃げ馬には厳しいコース形態のようにも思えますが、1000m通過58秒0という淀みのないペースを作って、そのまま逃げ切りましたね。

小牧 逃げるときもあまりスローに落としたりしない僕からすると、阪神の1600mはみんな比較的ゆっくりスタートを出るから、逆にハナを取りやすい。そのあたり、最初のコーナーまである程度距離があるコースならではちゃうかな。そもそも逃げ馬はスタートを失敗したらそこで終わってしまうから、あんまり好きじゃないんやけどね(苦笑)。

──改修前の阪神1600mとは真逆の傾向ですね。

小牧 そうですね。以前の阪神はスタートしてすぐにコーナーだったから、先行争いが激しかったし、内枠はすごく怖かったですわ。そう考えると、今の阪神1600mは本当に乗りやすい。逆に紛れが少ないから、力通りの決着になりやすいんやろうけど。ただ、僕の印象では、直線が長いというイメージ以上に前残りが多いような気がする。馬場もいいし、ゴール前の坂もほとんど気にならんからね。

──人気馬に差し馬が多い場合など、そのあたりが隙になりそうですね。ダブルウェッジのアーリントンCなど、まさに人気馬たちが差し届かないなかでの好位抜け出しでしたから。

小牧 大本命に乗ることは少ないからね(苦笑)。どうすればひとつでも上の着順に持ってこられるか、コースの特徴も踏まえてやっぱり考えるから。とにかくスタートを決めて、距離損が生まれないように内でじっくり乗ること。4コーナーも外に出さずにね。そういう競馬を心掛けています。

──改修前の阪神1600mと同様、小牧騎手が勝った中山時代の朝日杯フューチュリティSとは別物というわけですね。

小牧 うん、中山のマイルも難しいからなぁ。それこそ昔の阪神と同じで、1枠で出遅れようものなら、もうそこで万事休すや。ただ、あの頃のローズキングダムに関しては、コースがどうだとか全然考えなかった。GIだというのに、信じられないくらい自信満々やったからね。

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▲「GIだというのに、信じられないくらい自信満々やった」と振り返った小牧騎手


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