スマートフォン版へ

おいしくはないが、「伝説の新馬戦」になるのは楽しみ/朝日杯FS

  • 2018年12月11日(火) 12時00分

人気に勢いがつきすぎないかちょっと心配


 今回の話は馬券術というより豆知識としてお楽しみいただきたい。

 ご存じの通り、阪神JFはダノンファンタジーの優勝に終わった。そのダノンファンタジーは新馬戦でグランアレグリアに負けており、グランアレグリアは朝日杯FSに出走する。

 「(新馬戦で)負かした馬がGIを勝ったのだから、勝った側もGIを……」と思ってしまうが、新馬戦の勝ち負けというのはどの程度意味のあるものと見積もっていいのだろうか?

 平成以降の新馬戦(折り返しがあった頃の2戦目3戦目を含まず、自身のデビュー戦のみ)で2着になった馬は芝ダートあわせて4964頭。そのうち、後に2歳重賞を勝った馬は131頭で、3歳重賞を勝った馬は132頭いる(ダノンファンタジーを含む)。

 まず2歳重賞を勝った45頭だが、当然、この馬たちを負かした新馬勝ち馬が45頭いる。この馬たちの2歳重賞成績は[9-7-3-37]で回収率は単92%・複68%。グランプリボスの京王杯2歳S7番人気1着で単回収率は伸びているが、複68%にはやや過剰人気の匂いがする。この計56走には、新馬2着から重賞を勝った馬の重賞勝ちより前のものも含まれるが、「負かした馬が重賞を勝ったより後」の比率が高まる11月が複回収率79%、12月は41%なので、グランアレグリアも人気に勢いがつきすぎないかちょっと心配だ。

 参考までに2着に負かした馬が3歳重賞に勝った新馬優勝馬の3歳重賞成績は[34-21-12-151]で回収率は単87%・複80%。この回収率は低くはない。3歳になると新馬のアトサキは忘れられているせいもあるだろう。

 結局のところここまでは「グランアレグリアも強そうだけど、もはやそれ自体がおいしくはないし、売れ過ぎる危険のほうが怖いよね」という、ごく普通の話にしかなっておらず、大変恐縮である。

 そこで最後におまけを。ダノンファンタジーはこれで重賞を2つ勝った。これでグランアレグリアが今週勝つと、同じ新馬戦の1,2着馬が中央の2歳重賞を2つずつ勝つことになる。

 そのようなことは過去にあったのか?

 平成以降については皆無である。そもそも、新馬2着から2歳重賞を複数勝った馬が89‐17年で4頭しかおらず、その馬たちを新馬初戦で負かした4頭の2歳重賞成績は[0-1-1-6]。複数勝ちどころかキョウエイコロナの小倉3歳S(当時)2着が最高だった。

 なので現時点でも珍しい記録なのだが、仮にグランアレグリアも勝って「重賞2勝+2勝」になると、これは新しい形の「伝説の新馬戦」ということになるのではないだろうか。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1970年東京生まれ。競馬評論家、ギャンブル評論家。中学生時代にミスターシービーをきっかけとして競馬に興味を持ち、1990年・大学在学中に「競馬ダントツ読本」(宝島社)でライターとしてデビュー。以来、競馬やギャンブルに関する著述を各種媒体で行うほか、テレビ・ラジオ・イベントの構成・出演も手掛ける。競馬予想に期待値という概念を持ち込み回収率こそが大切という考え方を早くより提唱したほか、ペーバーオーナーゲーム(POG)の専門書をはじめて執筆・プロデュースし、ブームの先駆けとなった。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング