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誰にも止められないノーザンファーム(村本浩平)

  • 2018年12月11日(火) 18時00分

チームワークで勝ち取った600勝


 11月終了時点でJRAでの勝利数が600勝を突破。ジャパンカップをアーモンドアイが制した時点で年間のGI勝利数がJRA新記録となる12勝となり、9日に行われた阪神JFをダノンファンタジーが制したことで、更なる記録更新(GI13勝)を果たしたノーザンファーム。

 2011年に社台ファームがJRAの勝利数で401勝をあげた時には、凄いことになったと思ったものだが、2015年にはノーザンファームが547勝と、ついに500勝を突破。これ以上、勝利数を伸ばしていくのは難しいと思っていたところ、2016年には589勝、2017年には592勝と数字を積み上げていく。ひょっとしたら600勝越えもあり得るのか?と思っていた今年だったが、約1ヶ月を残しての記録更新は恐れ入ったとしか言い様がない。

 収得賞金も12月9日の時点で150億円を突破。前年に記録した145億6千万円をあっさりと越えてみせたが、勿論、この数字もレコードとなる。GIを含めた勝利数だけで無く、収得賞金も更に数字を増やしていきそうなだけに、最終的にどれほど数字を積み重ねていくのかにも注目したい。

 GIの勝ち鞍は牝馬三冠に加え、ジャパンCで世界にその名を轟かすレースをしたアーモンドアイが積み上げた4勝も大きかったと言える。その一方、4年連続で勝ち馬を送り出した日本ダービーなど、近年、生産馬の活躍が目立つレースでも、きっちりとGIタイトルを奪取してみせた。

 ちなみにこの10年で7勝と、生産馬の活躍が著しいGIが阪神JF。2歳女王に輝いたダノンファンタジーだが、ノーザンファーム早来の育成馬であり、管理していたのは村上厩舎となる。

 3年前から牡馬、牝馬共に4厩舎での管理が行われるようになったノーザンファーム早来であるが、この勝利によって、4つの牝馬厩舎がからは全てGI馬が誕生したことになった。しかも、今年に入ってからGI馬を送り出したのが、そのうちの3厩舎であり、アーモンドアイが岡厩舎、リスグラシュー(エリザベス女王杯)が野崎厩舎だった。
 
 4つの厩舎で牝馬の育成が行われるようになった現4歳世代だが、全ての厩舎で重賞馬が誕生。そしてついに今年、全ての厩舎からGI馬が誕生したこともまた、凄いとしか言いようがない。そこには牝馬厩舎を束ねる日下和博調教主任の手腕も大きいと言える。

 その快挙について、日下調教主任だけでなく、共に働く厩舎長にも幾度となく話を聞かせてもらったが、改めて思うのは、育成調教の内容云々ではなく、「チームワークの良さ」だと感じさせられる。各厩舎長だけでなく、牝馬厩舎の騎乗スタッフもまた、日下調教主任に絶大なる信頼を寄せており、また日下調教主任自身も、それぞれの厩舎に頻繁に足を運びながら、的確なアドバイスを送り続けている。

 以前、調教主任となったばかりの日下調教主任に、「管理する厩舎が増えて大変ですね」と話を向けたところ、「むしろ厩舎長だった頃よりも、喜びが4倍に増えたよ」と話してくれた。その言葉を聞いたときに、改めて日下調教主任はこのポジションがあっていると感じさせられた。

 ちなみに今週の朝日杯FSに出走するグランアレグリアは、ノーザンファーム空港のA2厩舎の育成馬。4つの牝馬厩舎を束ねる窪田淳調教主任と、A2厩舎を任せられる飯野義勝厩舎長もまた、深い信頼関係があり、それはローブティサージュ(阪神JF)や、ラキシス、マリアライト(いずれもエリザベス女王杯)といった活躍馬にも証明されている。

 その飯野厩舎長だけでなく、日下調教主任も取材の中で話していた言葉の中で、なるほどと思ったのが、「牝馬の活躍は牧場にとって財産となっていく」との言葉。優れた競争成績を残した牝馬は、繁殖牝馬となってその優秀な血を後世に伝えていくだけでなく、その牝系もまた、ブラックタイプとしての評価を更に高めていく。

 今やノーザンファームに脈々と伝えられる数々の名牝系は、育成スタッフだけでなく、イヤリング、繁殖といった牧場全体のスタッフで作り上げられたものでもある。その名牝系の一つである、ベガからハープスターへと繋がっていった牝系と、日下調教主任にまつわる話を、12月15日に発売される、優駿1月号の「未来に語り継ぎたい名馬」の中で執筆させていただいた。ぜひ、ご一読いただければと思う一方で、現在のノーザンファームの躍進を支えているのは、繁殖も含めた「牝馬」である、と心の片隅のどこかに置いていただきながら、今後の競馬を見ていただけると幸いである。

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